マロンジアルデヒド

マロンジアルデヒドとは

マロンジアルデヒドの基本情報

図1. マロンジアルデヒドの基本情報

マロンジアルデヒド (英: malondialdehyde) とは、化学式がC3H4O2で表されるジアルデヒドです。

MDAと略される場合もあります。マロンジアルデヒドは反応性の高い化合物です。そのため通常、純粋な形で観察されません。

マロンジアルデヒドは1,1,3,3-テトラメトキシプロパン (英: 1,1,3,3-Tetramethoxypropane) の加水分解によって得られ、市販されています。

マロンジアルデヒドの使用用途

マロンジアルデヒドは脂質過酸化分解生成物の一つです。人の体内で生成している脂質過酸化物を測定する際に、医療検査用のマーカーとして利用可能です。

マロンジアルデヒドは生体内で自然に発生するため、酸化ストレスの指標になっています。酸化ストレスによって、膜の流動性や透過性を変化させ、精子の機能的能力を損ないます。したがって、マロンジアルデヒドの量を測定して、精子の膜損傷を評価可能です。

マロンジアルデヒドの性質

マロンジアルデヒドの融点は72°Cで、沸点は108°Cです。

2-チオバルビツール酸反応性物質 (英: 2-thiobarbituric acid reactive substances) のような特殊な領域に吸収波長を持つ酸は、マロンジアルデヒドと反応するとMDA-TBA2付加体を形成可能です。MDA-TBA2付加体は532nmの波長付近に強い吸収を持ち、分光学的にマロンジアルデヒドを検出可能です。

研究によると、円錐角膜や水疱性角膜症などの患者の角膜では、マロンジアルデヒドの量が上昇しています。変形性関節症の患者でも、関節の組織切片でマロンジアルデヒドが確認されています。

マロンジアルデヒドの構造

マロンジアルデヒドの構造

図2. マロンジアルデヒドの構造

マロンジアルデヒドは、メタン分子の2つの水素原子がアルデヒド基に置き換わった有機化合物です。示性式はCH2(CHO)2で表され、分子量は72.06g/molで、密度は0.991g/mLです。

マロンジアルデヒドはCH2(CHO)2とHOCH=CH-CHOのように異性化し、主にエノール体として存在しています。エノール体との異性化を繰り返すと、アルデヒド体もシス型とトランス型が入れ替わります。溶媒の性質によっても存在比は変化し、有機溶剤中ではシス型が優位に存在し、水溶液中ではトランス型が優位です。

マロンジアルデヒドのその他情報

1. マロンジアルデヒドの生合成

多価不飽和脂肪酸はフリーラジカルによって酸化されます。例えばヒドロキシラジカルと反応して、脂質ペルオキシラジカルを生成可能です。生成した脂質ペルオキシラジカルは、別の多価不飽和脂肪酸と反応して、脂質ヒドロペルオキシドと脂質ペルオキシラジカルに変化します。脂質ペルオキシラジカルは分子内2重結合に反応して、環状エンドペルオキシドを形成可能です。この物質がさらに分解されると、マロンジアルデヒドが生成されます。

マロンジアルデヒドはヒマワリ油やパーム油など、加熱した食用油にも含まれています。

2. マロンジアルデヒドの反応

マロンジアルデヒドの反応

図3. マロンジアルデヒドの反応

マロンジアルデヒドは脂質過酸化物の分解によって生成します。酸化ストレスや鉄依存性細胞死  (英: ferroptosis) などの分野で、細胞や組織中の脂質過酸化の指標として測定可能です。

マロンジアルデヒドは反応性アルデヒド (英: reactive aldehyde) とも呼ばれ、チオール基やアミノ基と反応して、DNAの損傷やタンパク質の変性を引き起こします。そのため糖尿病やがんを代表とする疾患研究でも測定対象です。マロンジアルデヒドの量によって、2-チオバルビツール酸反応性物質はMDA-TBA2付加体を形成するため、蛍光度や吸光度を測定して、細胞内や組織中のマロンジアルデヒドを検出可能です。

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