マグミットとは
マグミットとは、制酸・緩下剤として処方される医薬品です。
マグミットという名称は商品名であり、一般名は酸化マグネシウムです。さまざまな製薬メーカーより販売されています。
主な効能効果は、胃・十二指腸潰瘍、胃炎、上部消化管機能異常などの疾患に対する制酸作用及び改善、便秘症の改善、尿路蓚酸カルシウム結石の発生予防などです。処方薬であるため、購入には医師の処方箋が必要です。
歴史的には、1823年にドイツ人の医師フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトが来日した際に日本へ持ち込んだと言われています。
マグミットの使用用途
図1. マグミットの薬効
マグミットは、制酸作用による胃・十二指腸潰瘍や胃炎、上部消化管機能異常の改善、及び、緩下作用による便秘の治療、尿路結石の予防などを目的として投与される医薬品です。
緩下剤としては、腸管の動きを直接刺激するのではなく、腸管内で水分の吸収を高めることにより大腸の蠕動運動を助け、排便を促す働きをします。
マグミットの性質
図2. 酸化マグネシウムの基本情報
マグミットの薬効成分は、酸化マグネシウム (Magnesium oxide)です。CAS登録番号は1309-48-4で、酸化マグネシウム自体は分子量40.30、融点2852°C、沸点3600℃であり、常温では無色の結晶または粉末です。密度は3.65g/mLであり、水及びエタノールにほとんど溶けません。
酸化マグネシウムは、金属マグネシウムの燃焼、水酸化マグネシウムあるいは炭酸マグネシウムの加熱分解などの方法で製造されています。
マグミットの種類
マグミットは、医師の処方箋が必要な処方薬ですが、マグミット製薬、丸石製薬、シオエ製薬、日本新薬など、さまざまな製薬メーカーから製造販売されている薬剤です。なお、酸化マグネシウム製剤自体は、マグミットの他にも更に多くのメーカーから発売されており、処方箋の要らない一般薬も存在しています。
マグミットの剤形は白色の錠剤で、200mg , 250mg , 330mg , 50 mgなどの種類があります。
マグミットのその他情報
1. マグミットの薬理作用
制酸剤としては、酸化マグネシウム1 gによって、0.1mol/L塩酸約500mLの中和が可能です。胃内で制酸作用を及ぼし、二酸化炭素を発生しないため刺激が少ないとされます。水に不溶性なので、炭酸水素ナトリウムに比較すると制酸性は遅効性で作用時間も長いことが特徴です。
緩下剤としては、腸内で重炭酸塩となり腸内の浸透圧を高めて腸内腔へ水分を引き寄せます。これによって腸内容を軟化させるとともに、腸管内容物が膨張し、腸管に拡張刺激を与え、排便を促す作用があります。
2. マグミットの副作用
図3. 高マグネシウム血症の症状
マグミットの重篤な副作用には高マグネシウム血症があります。特に腎機能障害のある患者でリスクが高いため、腎機能障害のある患者には慎重投与となっています。
高マグネシウム血症の症状は、悪心・嘔吐、口渇、血圧低下、徐脈、皮膚潮紅、筋力低下、傾眠などがあり、重篤な場合には呼吸抑制、意識障害、不整脈、心停止へ至る場合がある疾患です。必要に応じて血清マグネシウム濃度の測定を行うなど十分な観察を行うことが必要とされています。異
常が認められた場合には投与を中止する必要があります。また、高齢者では特に高マグネシウム血症を起こして重篤な転帰をたどる例が報告されています。
このため、高齢者では投与量を減量するとともに定期的に血清マグネシウム濃度を測定するなどの観察を十分に行い、慎重に投与することが必要です。心機能障害のある患者では、徐脈を起こし、症状が悪化する恐れがあるとされています。
3. 他の薬剤との相互作用
マグミットは、吸着作用、制酸作用等を有しているので、他の薬剤の吸収・排泄に影響を与えることがあります。例えば、抗菌薬である、ニューキノロン系薬・テトラサイクリン系薬と併用すると抗菌効果が薄れてしまうため、服用時間を2時間以上空ける必要があります。
また、大量の牛乳やカルシウム製剤と併用すると、血中のカルシウム濃度が高まり、血液がアルカリ性に傾くことがあるので、服薬中はそれらの摂取に注意し、定期的な血液検査が必要です。