酸化ランタン

酸化ランタンとは

酸化ランタン (英: lanthanum oxide) は、希土類元素のランタンと酸素からなる金属酸化物です。

化学式は La2O3 、CAS番号は1312-81-8で、吸湿性の高い白色の粉末です。比較的柔らかい物質で、非常に吸湿性が高い性質を持ち、幅広い分野で使用されています。

酸化ランタンの使用用途

酸化ランタンは、その物理的、化学的性質を利用して、さまざまな産業で利用されています。

1. 光学ガラス改質剤

カメラレンズや望遠鏡のレンズなど、高屈折率ガラスの製造に使用され、ガラスの密度、屈折率、硬度を向上させる効果を持ちます。放射線遮蔽ガラスの製造用ドーパントとしても利用されています。

2. 圧電材料・熱電材料

センサーやアクチュエーターに用いられる圧電材料、熱電変換材料の原料として用いられます。セラミックスコンデンサーや電池材料の製造にも利用されています。

3. X線機器・蛍光体

X線イメージング用の増感スクリーンや蛍光体の材料として使用されます。適切な付活剤と組み合わせることで、高効率の発光材料となる特性を持つ物質です。また、TIG溶接用電極の性能向上にも利用されています。

4. セラミックス

導電性セラミックスや遮熱コーティングの製造に使用されます。高い熱膨張率と低い熱伝導率を活かし、遮熱材料として優れた特性を示す物質です。また、イオン伝導性を持つセラミックスは固体電解質としても利用されます。

5. 自動車排ガス浄化触媒改質剤

有機反応の触媒としても使用されます。また、自動車の排気ガス浄化触媒の性能を改善する添加剤としても利用されています。

酸化ランタンの性質

1. 物理的性質

モル質量は325.809 g/mol、密度は 6.51 g/cm³ 、融点は 2,315 ℃、沸点は 4,200 ℃です。比較的柔らかい物質であり、モース硬度は 2.5 です。平均室温での抵抗率は10 kΩ·cmで、温度上昇とともに低下します。p型半導体特性を示し、バンドギャップは約5.8 eVです。また、希土類酸化物の中で最も低い格子エネルギーを持ち、高い比誘電率 (ε = 27) を示します。

2. 化学的性質

水にはほとんど溶解しませんが、塩酸や硝酸などの希酸には容易に溶解します。非常に吸湿性が高く、空気中の水分や二酸化炭素を迅速に吸収して水酸化ランタンや炭酸ランタンに変化します。

酸化ランタンの構造

酸化ランタンの結晶構造は温度によって変化します。低温では六方晶系 (A-M2O3型) を形成し、La3+ イオンが八面体状に配置された7つの O2- イオンに囲まれた構造、高温では六方晶系 (C-M2O3型) に変化し、La3+ イオンが六角形状に配置された6つの O2- イオンに囲まれた構造をとります。

酸化ランタンのその他情報

1. 酸化ランタンの安全性

酸化ランタンは取り扱いに注意が必要な化合物です。酸化ランタンはGHSにおいて以下に分類されています。

  • 眼に対する重篤な損傷性/刺激性: 区分2B(眼刺激)

この分類に基づき、以下の注意喚起語と危険有害性情報が示されています。

  • 注意喚起語: 警告
  • 危険有害性情報: 眼刺激を引き起こす恐れ

取り扱い時には適切な保護具を着用し、換気を確保する必要があります。万が一の事故に備え、適切な応急処置の手順を理解しておくことも重要です。また、高い吸湿性を持つため、保存時には密閉容器を使用することが推奨されています。

2. 酸化ランタンの原料と市場

酸化ランタンは、主にモナズ石鉱 (モナザイト) から生産されます。主な産地は米国と中国で、これらの地域の生産量は全体の希土類生産の50%以上を占めています。モナズ石鉱以外にも、他の希土類鉱石や廃棄物からのリサイクルも重要な供給源です。

市場では、特にハイテク産業における需要の増加に伴い、成長を続けています。電気自動車や再生可能エネルギー技術の発展に伴い、今後更なる需要の拡大が見込まれています。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0112-0638JGHEJP.pdf
https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/dt/html/GI_10_001/GI_10_001_1312-81-8.html

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