酸化ランタンとは
酸化ランタンとは、白色~ほとんど白色をした粉末で、化学式La2O3、分子量325.81、CAS登録番号1312-81-8の無機化合物です。
酸化ランタンの主な物理的および化学的性質は、融点/凝固点が2315℃で、沸点または初留点および沸騰範囲が4200℃です。そして、塩酸および硝酸に溶け、水にはほとんど溶けないといった性質を有しています。
また、酸化ランタンは、吸湿性があるうえ、空気中の炭酸ガスを吸収しやすいという性質もあります。酸化ランタンは、主な国内法規上の適用法令はありません。
酸化ランタンの使用用途
酸化ランタンは、光学分野で光学レンズの原料として使用されています。そのほか、PLC (光平面回路) への利用で、脚光を浴びているPLZT (ジルコン酸チタン酸鉛ランタン) の原料としても知られています。電子部品の分野では、セラミックスコンデンサーや電池材の原料としても利用可能です。
自動車排ガス触媒の担体として知られているジルコニウム (Zr) 酸化物に、担持 (たんじ:付着) させる材料としても使われています。
酸化ランタンの性質
酸化ランタンは無臭の白色固体です。化合物のpHによって、異なる結晶構造が得られます。
酸化ランタンは吸湿性があるため、大気中では時間の経過とともに水分を吸収して、水酸化ランタンに変化します。酸化ランタンにはp型の半導体特性があり、バンドギャップはおよそ5.8eVです。
平均室温抵抗率は10kΩ·cmで、温度の上昇とともに低下します。酸化ランタンはε = 27という非常に高い比誘電率を有し、希土類酸化物の中で最も低い格子エネルギーを持っています。
酸化ランタンの構造
低温でのLa2O3は、A-M2O3の六方晶構造を持っています。La3+金属原子は7つのO2−原子の配位基に囲まれていて、金属原子の周りの酸素イオンは八面体形です。八面体の1つの面上に、酸素イオンが1つあります。
それに対して、高温ではLa2O3はC-M2O3の立方晶構造に変化します。La3+イオンはO2−イオン6つに囲まれていて、六角形の形状です。
酸化ランタンのその他情報
1. 酸化ランタンの合成法
酸化ランタンは、多形に結晶化することが可能です。六角形のLa2O3を生成するためには、通常金属カルコゲナイドで作成された基板を予熱したものに、0.1MのLaCl3溶液を噴きかけます。この過程では、加水分解と脱水の2段階が発生しています。
界面活性剤のラウリル硫酸ナトリウムと2.5%のNH3を組み合わせて、六角形のLa2O3を得ることも可能です。この水溶液からわずかにLa(OH)3を沈殿させ、その後80°Cで24時間加熱して攪拌することで、La2O3が生成します。
2. 酸化ランタンの反応
LaをドープしたBi4Ti3O12 (BLT) を代表として、特定の強誘電材料を開発するために、添加剤として酸化ランタンが使われています。光学材料に使用される光学ガラスには、La2O3がしばしばドープされているため、ガラスの屈折率、力学的強度、化学的耐久性などの向上が可能です。
B2O3とLa2O3の3:1の反応をガラス複合材料に混合することで、ランタンの高い分子量によって、均一な溶融物の混合物が増えるため、融点が低くなります。溶融したガラスにLa2O3を添加すると、ガラス転移温度が658°Cから679°Cまで上昇します。La2O3の添加によって、ガラスの密度、屈折率、微小硬さなどを高くすることも可能です。
3. 酸化ランタンとともに得られた元素
長期にわたるガドリン石という鉱石の分析や分解の結果によって、いくつかの元素が発見されました。ガドリン石の分析が進むと、残留物にまずセリア、次に酸化ランタン、その次にイットリア、エルビアの順にラベルが付けられました。
これらのいくつかの新しい元素は、カール・グスタフ・モサンデル (英: Carl Gustaf Mosander) によって発見・分離されています。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0112-0638JGHEJP.pdf
https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/dt/html/GI_10_001/GI_10_001_1312-81-8.html