酸化ビスマス

酸化ビスマスとは

酸化ビスマス (英: Bismuth oxide) とは、うすい黄色もしくは黄褐色をした粉末の無機化合物です。

ビスマスと酸素から構成され、化学式はBi2O3、分子量は465.96、CAS登録番号は1304-76-3です。別名には、酸化ビスマス (III) があります。

酸化ビスマスの構造

1. 酸化ビスマスの結晶多形

酸化ビスマスには、5つの結晶学的多形があります。室温相で単斜晶構造のα-Bi2O3、高温相で正方晶のβ-Bi2O3、体心立方晶のγ-Bi2O3、立方晶のδ-Bi2O3とε-Bi2O3です。酸化ビスマスがとる構造は、類縁の酸化ヒ素 (As2O3) や酸化アンチモン (Sb2O3) がとる構造とは大きく異なります。

2. α、β相

α-Bi2O3は、酸素原子の層とその間にビスマス原子の層があるという複雑な構造をしています。ビスマス原子はそれぞれ歪んだ6配位と5配位で記述できる、2つの異なる環境にあります。β-Bi2O3は、蛍石(英: Fluorite) に近い構造をとっています。

3. γ、δ、ε相

γ-Bi2O3はBi12SiO20 (英: Bismuth silicon oxide) に類似した構造を持ち、ビスマス原子の一部がケイ素原子の占める位置を占め、Bi12Bi0.8O19.2と書くことができます。δ-Bi2O3は単位格子内の8つの酸素サイトのうち、2つが空になった欠陥蛍石型結晶構造を持っています。ε-Bi2O3はα相とβ相に近い構造を持ちますが、完全に整列したイオン性絶縁体です。

酸化ビスマスの性質

酸化ビスマスは、融点/凝固点が820℃で、沸点が1,890℃です。希塩酸および希硝酸に溶けやすく、水にはほとんど溶けません。α-Bi2O3は、室温でp型の電子伝導性を示し、酸素分圧により550~650℃の間でn型の電子伝導性に変化することが知られています。

酸化ビスマスの使用用途

1. 合成原料

酸化ビスマスは、触媒やビスマス塩類 (次硝酸ビスマスや次没食子酸ビスマス等) の原料、あるいはゴムの配合剤として使われています。釉薬 (ゆうやく) や顔料の原料としても利用されています。

2. 電子部品

酸化ビスマスは、サーミスタバリスタ・コンデンサーといった電子部品をはじめ永久磁石、電子材料の原料として利用されています。規制が厳しくなってきている鉛の代替品として、利用範囲を一層広げています。

3. 歯科治療材料

酸化ビスマスは、レントゲンの際に、歯科材料を周囲の歯より不透明にするためにしばしば用いられます。主に、ケイ酸二カルシウムとケイ酸三カルシウムの粉末の混合物とともに、水硬性ケイ酸セメントに10~20質量%添加されます。この材料は、歯根端切除術や吸収穿孔の修復などの歯科治療に使用されています。

酸化ビスマスのその他情報

1. 酸化ビスマスの製法

酸化ビスマスは、商業的にはビスマスを熱硝酸に溶解することで得られる、次硝酸ビスマスから作られます。水酸化ナトリウムを過剰に添加した後の混合物を加熱することで、濃い黄色の粉末として酸化ビスマスが沈殿します。次炭酸ビスマスを約400℃で加熱したり、水酸化ビスマスを燃焼させることによっても得ることができます。

2. 酸化ビスマスの反応

酸化ビスマスは、鉱酸と反応して対応するビスマス塩を生成します。水に溶解した二酸化炭素とは容易に反応して、次炭酸ビスマスを生成します。無水酢酸およびオレイン酸との反応では、ビスマストリオレートが得られます。

3. 法規情報

酸化ビスマスは、消防法はじめ毒物および劇物取締法、労働安全衛生法、PRTR法といった主な国内法規での指定の適用はされていません。

4. 取扱いおよび保管上の注意

取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 容器を密栓し、冷暗所に保管する。
  • 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
  • 粉塵が飛散しないように注意する。
  • 使用時は保護手袋、保護眼鏡を着用する。
  • 取扱い後はよく手を洗浄する。
  • 皮膚に付着した場合は、石鹸と水で洗い流す。
  • 眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗う。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1304-76-3.html

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