酸化窒素

酸化窒素とは

酸化窒素は、窒素の酸化物の総称です。

酸化窒素には、酸化数がI~Vのものまで種類は様々です。具体的な例として、一酸化窒素 (NO) 、二酸化窒素 (NO2) 、三酸化窒素 (NO3) 、一酸化二窒素 (N2O)、三酸化二窒素 (N2O3) 、四酸化二窒素 (N2O4) 、五酸化二窒素 (N2O5) 等が挙げられます。

酸化窒素の使用用途

酸化窒素は窒素酸化物の総称ですが、その中でも一酸化窒素 (NO) 、二酸化窒素 (NO2) 、一酸化二窒素 (N2O) が、よく使用されています。

1. 一酸化窒素

一酸化窒素は、レーヨンの漂白剤、半導体の製造原料として使用されています。また硝酸を製造する際の中間体としても使われます。

2. 二酸化窒素

二酸化窒素は、分析試料の溶解剤、分解剤や、漂白剤、触媒、有機機化合物のニトロ化剤にも用いられます。また、酸化剤として爆薬の原料やロケット燃料、重合禁止材にも使用されています。

その他の使用用途として、硝酸などの他の化合物の合成原料や中間体などが挙げられます。

3. 一酸化二窒素

一酸化二窒素は、歯科及び外科、産婦人科の麻酔に多く用いられます。半導体用材料や原子吸光分析用キャリアガスなど工業用にも使用されるほか、漏えい検知、冷媒、風船やタイヤへのガス充填にも使われます。

酸化窒素の特徴

酸化窒素は種類によって特徴が異なります。代表的な種類の特徴は、以下の通りです。

1. 一酸化窒素

室温で無色の気体で、融点は-164℃、沸点は-152℃で液体と固体は青色です。空気と接触してすぐに二酸化窒素に酸化されます。

一酸化窒素は体内でも作られ、動脈の平滑筋という筋肉へと運ばれます。一酸化窒素は平滑筋の柔軟性を高め、動脈硬化を予防します。

血管の柔軟性が保たれることによって、血管に脂肪分が付着し、血流が悪化するのを防いでいます。

2. 二酸化窒素

重金属硝酸塩を加熱すると発生する赤褐色の気体で、融点は-9.3℃、沸点は21.3℃で、液体は黄色、固体は無色です。水に溶けて腐食性のある硝酸になるので、保管や使用の際は水分の管理を厳密に行う必要があります。

アンモニアの触媒酸化で生じる一酸化窒素に、空気 (酸素) を混ぜて反応させることにより製造されます。 

3. 三酸化窒素

三酸化窒素は不安定な濃青色の気体です。酸化窒素とオゾンが反応することによって生じますが、非常に不安定です。

4. 一酸化二窒素

亜酸化窒素とも呼ばれる無色気体で、融点は-91℃、沸点は-89℃です。不燃性の安定した気体です。特徴として麻酔作用、鎮痛作用があり、吸入すると顔面の筋肉が痙攣してしまい笑っているようにみえるところから、笑気ガスと呼ばれています。

約250℃に保持した反応槽に原料の80%硝酸アンモニウム水溶液を、一定流量で滴下しながら分解させる方法や、アンモニアを触媒により直接酸化する方法で工業的に製造されています。

5. 三酸化二窒素

室温で褐色の気体で、融点は-102℃、沸点は3.5℃、液体と固体の色は青色です。水に溶解すると亜硝酸になり、さらに硝酸と一酸化窒素と水に分解します。

6. 四酸化二窒素

融点は-9.3℃、沸点は21.2℃の淡黄色の気体です。二酸化窒素を冷却することで四酸化二窒素の固体が得られます。

7. 五酸化二窒素

無色の潮解性のある固体で、融点は30℃、47℃で分解して二酸化窒素と酸素になりますが、0℃以下で暗所保管すると安定です。水とは激しく反応して硝酸になります。

酸化窒素のその他情報

酸化窒素の環境や生体への影響

酸化窒素の中でも、一酸化窒素、二酸化窒素は、光化学スモッグや酸性雨の原因となるなど大気汚染の観点から、排出する量を抑えていく動きとなっています。酸化窒素の発生源としては、工場、火力発電所、自動車、家庭などです。

石油、石炭、化学原料に含まれる窒素が酸素と結びつき発生する場合と、大気中の窒素が高温にさらされることで酸素と反応して発生する場合があります。一酸化窒素は徐々に空気中の酸素により二酸化窒素に酸化されるため、発生直後は一酸化窒素であっても、環境大気中においてはほとんどが二酸化窒素になっていると考えられています。

酸化窒素は高濃度になると、咳や痰が出たり、呼吸器疾患を生じるリスクが高まります。また、酸化窒素は大気中の水分と反応して硝酸になり、これが雨や雪などに混ざることで酸性雨になります。

さらに、酸化窒素は紫外線を受けて光化学反応を起こして光化学オキシダント (Ox) を生じます。この光化学オキシダントの大気中の濃度が濃くなると、光化学スモッグと呼ばれる、白くモヤがかかったような状態になります。光化学オキシダントは目の痛み、頭痛、吐き気を引き起こす恐れがあります。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0655.html

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