酸化タングステン

酸化タングステンとは

酸化タングステンとは、タングステンと酸素から構成される無機化合物です。

タングステンの酸化数によって、さまざまな化合物が存在します。酸化タングステンの中で最も一般的なものの一つは、酸化タングステン(VI)です。それ以外にも、酸化タングステン(IV)や酸化タングステン(III)などが知られています。消防法をはじめとした国内法規上の適用は指定されていません。

酸化タングステンの使用用途

酸化タングステンは、工業的には触媒 (可視光応答型の光触媒など) や金属タングステンの原料、セラミックス・ガラスはじめ焼結金属の添加剤、二次電池用の添加剤、電子材料として使われています。また、炭素や水素、窒素のような元素の分析添加剤としても使用可能です。

さらに、シンチレータ (放射線にあたると蛍光を発する物資の総称) として、レントゲン検査や非破壊検査にも活用されています。

酸化タングステンの性質

酸化タングステン (VI) の融点は1,473℃、沸点はおよそ1,750℃です。水に微溶で、アルカリやアンモニア水には溶解し、タングステン酸塩が生成します。酸化タングステン(VI)はタングステンの最終酸化物であり、空気中や水溶液中で安定です。ただし、還元剤によって、あらゆる低酸化物が生じます。

常温の空気中では安定です。1,500~1,600℃で分解し、酸化されて酸化タングステン(VI)に変わります。水素気流中で灼熱すると、還元されて金属タングステンになります。酸化タングステン (IV) は大きな電気伝導性を有し、酸や水酸化カリウム水溶液に可溶ですが、水には不溶です。

酸化タングステンの構造

酸化タングステン (VI) は、三酸化タングステンとも呼ばれます。化学式はWO3で、モル質量は231.84g/molであり、密度が7.16g/cm3の黄色の粉末です。酸化タングステン(VI)の結晶構造は、温度によって変化します。-50〜17℃は三斜晶系、17〜330℃は単斜晶系、330〜740℃は斜方晶系、740℃以上は正方晶系です。

酸化タングステン (IV) は二酸化タングステンとも呼ばれ、化学式はWO2で、モル質量は215.84g/molです。青銅色の固体であり、結晶は単斜晶系を取っています。248pmの短いW-W結合を有する八面体配位のWO6を中心に、歪んだルチル型の構造を形成し、それぞれのW中心がd2の電子配置を取っています。

酸化タングステン (III) の化学式はW2O3で、モル質量は415.68g/molです。

酸化タングステンのその他情報

1. 酸化タングステンの合成法

酸化タングステン (VI) は、金属タングステン、他のタングステン酸化物、タングステン硫化物などを、空気中や酸素中で加熱すると生成します。また、CaWO4や灰重石を塩酸と反応させるとタングステン酸が生じ、高温の水と反応して酸化タングステン (VI) に分解されます。さらに、パラタングステン酸アンモニウムを酸化条件で焼成しても、酸化タングステン (VI) を合成可能です。

酸化タングステン (VI) を加熱すると、酸化タングステン (IV) を得ることが可能です。具体的には、40時間900°Cでタングステン粉末によって、酸化タングステン (VI) を還元します。反応の中間体として混合原子価状態のW18O49を経由して、部分的に還元されながら反応が進みます。

2. 酸化タングステンのその他化合物

酸化タングステンにはWO3、WO2、W2O3以外にも、これまでにW4O3、W3O、WO、W2O5、W3O8、W4O8、W5O9、W5O14などが報告されました。

タングステンの酸化物の色は、酸化数が増えると、灰、茶、紫、青、黄と変わります。例えば、青紫色のW2O5は、タングステンブルーの主成分と言われています。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0120-0346JGHEJP.pdf
https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/dt/html/GI_10_001/GI_10_001_1314-35-8.html

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