酸化セリウム

酸化セリウムとは

酸化セリウム (英: Cerium oxide) とは、白色もしくはうすい黄色の粉末の無機化合物です。

セリウムと酸素から構成され、化学式はCeO2、分子量は172.11、CAS登録番号は1306-38-3です。希土類酸化物の一つで、セリアとも呼ばれます。融点/凝固点が2,600℃、沸点または初留点および沸騰範囲が3,285℃で、密度/相対密度が7.132です。溶解度については、塩酸硝酸には溶けにくく、水にはほとんど溶けません。

酸化セリウムの構造

酸化セリウムは、蛍石 (英: Fluorite) と同じ構造で8配位のCe4+、4配位のO2-を持ち、空間群はFm3m (#225) です。

酸素分圧や機械的負荷によって格子欠陥を生じますが、特に酸素欠陥とセリウムイオンに局在化した電子による、ポーラロン生成が注目されます。酸素欠陥数の増加に伴いイオン伝導性が増加し、酸化物イオンの拡散速度が上昇するという性質があるので、酸化セリウムは固体酸化物形燃料電池 (SOFC) の固体電極として期待されています。

酸化セリウムの使用用途

1. 研磨剤

酸化セリウムは、ガラスや光学レンズ、ブラウン管の研磨剤の原料として使用されています。酸化セリウムを使った研磨剤は、単に表面を削るだけでなく、ガラスの主要構成元素である二酸化ケイ素と化学反応をおこし、より一層表面を滑らかにする特徴を有しています。従来は酸化鉄やジルコニアなどの酸化物が用いられてきましたが、次々と酸化セリウムに置き換えられました。

2. 紫外線散乱剤

酸化セリウムは、紫外線散乱剤としてガラス紫外線防止用やブラウン管着色防止用のほか、紫外線カット用化粧品の添加剤にも応用されています。酸化チタンや酸化亜鉛の代替として注目されています。

3. 触媒

酸化セリウムは、可逆的に組成を変化させることができる性質があるので、酸化反応の触媒として用いられます。また、ホワイトガソリンランタンの発光部には、酸化セリウムをドープした酸化トリウムが用いられ、酸化セリウム触媒の燃料ガスの空気酸化によって発熱しています。自動車の排気ガスを分解する三元触媒のセンサーにも用いられており、空燃比を調節し、NOxや一酸化炭素を減らすのに役立っています。

4. 光学材料

酸化セリウムは、可視光から赤外領域に透過波長域を持つ高屈折率材料としても利用されます。結晶質の膜を形成し、化学的安定性、熱安定性に優れ、シリコンとの格子整合性があるとされています。 可視光を透過波長域に持つ高屈折率材料の中では、比較的低温で蒸発することも特徴です。

5. その他

酸化セリウムは、電池負極材の原料、ファインセラミックスの材料にも利用されています。ガラスの脱色剤としても使われ、緑がかった2価の鉄の不純物をほぼ無色の3価の酸化鉄に変えることができます。優れたイオン性と導電性を持つ性質から、イオン・電子混合伝導体としての活用も期待されています。

酸化セリウムのその他情報

1. 酸化セリウムの製法

酸化セリウムは、バストネサイトやモナズ石からその他の希土類元素との混合物として産出した天然のセリウムから得ることができます。塩基性水溶液中に抽出してから、酸化剤を加え、pHを調節してセリウムを分離します。酸化セリウムの低い溶解度と、その他の希土類元素が酸化されないことを利用した手法です。

2. 法規情報

酸化セリウムは、消防法はじめ毒物および劇物取締法、労働安全衛生法、PRTR法といった、おもな国内法規上での規制適用は行われていません。

3. 取扱いおよび保管上の注意

取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 容器を密栓し、乾燥した冷暗所に保管する。
  • 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
  • 粉塵が飛散しないように注意する。
  • 使用時は保護手袋、保護眼鏡を着用する。
  • 取扱い後はよく手を洗浄する。
  • 皮膚に付着した場合は、石鹸と水で洗い流す。
  • 眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗う。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1306-38-3.html

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