酸化タンタル

酸化タンタルとは

酸化タンタルとは、白色~ほとんど白色の粉末または塊の無機化合物です。

酸化タンタルの主な組成・成分情報および物理的・化学的性質は、化学式がTa2O5、分子量が441.89、CAS登録番号が1314-61-0、分解温度が1,470℃です。また、水にほとんど溶けないという性質を有しています。

酸化タンタルの国内法規上の主な適用としては、安衛法で「名称等を表示すべき危険物および有害物」「名称等を通知すべき危険物および有害物」、同法施行令第18条の2別表第9でNo. 338の指定がされているのみです。

酸化タンタルの使用用途

酸化タンタルは、可視光域での高屈折率やIAD (イオンアシスト蒸着) における膜質安定性が、他の高屈折率材料と比べ優れていることから、光学レンズの原料として重用されています。また、酸化タンタルは、パソコンのディスプレイや自動車のフロントガラスなどに使われている反射防止膜や干渉フィルターの原料です。

さらに、酸化タンタルは、高誘電率で知られるタンタルの化合物として、電解コンデンサの誘電体をはじめ「電子セラミックス」という日本が世界に誇る分野で広く使用されています。

酸化タンタルの性質

酸化タンタルは、高い屈折率で低い吸収の不活性物質です。あらゆる溶媒に不溶ですが、強塩基やフッ化水素酸の腐食を受けます。

すなわち酸化タンタルは、HClやHBrとはそれほど反応しません。ただし、フッ化水素酸に溶解して、フッ化水素カリウムとHFとは反応します。

酸化タンタルの構造

酸化タンタルは、酸化タンタル (V) や五酸化タンタルとも呼ばれています。バルク材料は無秩序で、アモルファスや多結晶です。

単結晶の成長は困難なので、酸化タンタルの結晶構造において、提供されている構造情報は少なく、X線結晶学の粉末回折などに限られています。なお、β-Ta2O5の密度は8.18g/cm3、α-Ta2O5の密度は8.37g/cm3です。

酸化タンタルのその他情報

1. 酸化タンタルの発生

タンタルは、火成岩ペグマタイトで生成する鉱物のコルンブ石やタンタル石として生じます。これらの石が混ざったものは、コルタンと呼ばれています。タンタル石はスウェーデンやフィンランドで発見されました。

マイクロ石には約70%、パイロクロアには10%のタンタルが含まれています。自然界の純粋な酸化タンタルは、鉱物タンタイトとして有名ですが、非常に希少です。

2. 酸化タンタルの精製

酸化タンタルは以下の手順で、精製されています。

浸出段階
タンタルの鉱石には、大量のニオブが含まれていることも多く、それ自体も有価金属です。そのため抽出されて、両方の金属が販売されています。

全体の過程は、湿式製錬の一つです。浸出の段階から始まり、鉱石がフッ化水素酸と硫酸で処理されます。へプタフルオロタンタル酸塩などの、水溶性のフッ化水素が生成され、岩石の各種非金属不純物から金属を分離可能です。

抽出段階
タンタルやニオブのフッ化水素は、メチルイソブチルケトンシクロヘキサンなどの有機溶媒を用いた液液抽出によって、水溶液から取り除かれます。この段階では水相にフッ化物として残っている、鉄やマンガンといった金属不純物を、容易に取り除くことが可能です。

そして、pH調整によって、タンタルとニオブを分離できます。高いレベルの酸性度では、ニオブが有機相で溶解したままなので、酸性度が低い水に抽出することで、タンタルを選択的に取り除けます。

焼成段階
純粋なフッ化水素タンタル溶液を、アンモニア水で中和することで、水和タンタル酸化物が生成できます。水和タンタル酸化物は、酸化タンタルに焼成されます。

3. 酸化タンタルの合成法

酸化タンタルは、頻繁に電子工学で用いられており、多くの場合には薄膜の形で使用されています。これらの用途では、揮発性のハロゲン化物とアルコキシドの加水分解を含む、有機金属気相成長法 (MOCVD) またはその関連技術によって合成可能です。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0120-0934JGHEJP.pdf
https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/dt/html/GI_10_001/GI_10_001_1314-61-0.html

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