酸化ジルコニウム

酸化ジルコニウムとは

酸化ジルコニウムとは、白色で無臭の無機化合物です。

国内法令上で酸化ジルコニウムは、安衛法で「名称等を表示すべき危険物および有害物」「名称等を通知すべき危険物および有害物」という指定がありますが、消防法などほかの主だった国内法規で指定はされていません。

酸化ジルコニウムの使用用途

酸化ジルコニウムの性質を生かした使用用途は、以下の通りです。

  • 融点が非常に高い・耐熱性が高い・化学的な侵食に強い
    切削工具や研磨工具、耐火物などの原料
  • 高硬度・耐久性が高い
    歯科用材料、セラミックス包丁、宝飾品 (模造ダイヤモンド)
  • 酸素イオンの良伝導体
    固体電解質型の燃料電池

酸化ジルコニウムはダイアモンドと呼ばれるほど高硬度で、その硬さは一般的なセラミックスの10倍程度と非常に高いです。その他、酸化ジルコニウムは圧電素子セラミックコンデンサといった電子部品の材料や光学ガラスの添加剤、触媒や化粧品などの医薬部外品の添加物に使用される場合もあります。

酸化ジルコニウムの特徴

酸化ジルコニウムは、原子番号40のジルコニウムの酸化物でセラミックスに分類されます。化学式はZrO2、分子量は123.22、主な物理的および化学的性質は、融点が2715℃、沸点が4300℃、密度が5.68g/cm3、屈折率が2.13です。

酸化ジルコニウムは、低熱伝導率、耐熱性、耐食性、高強度等、多くの機能を有しています。その一方、酸化ジルコニウムは、温度変化によって結晶構造が変化し体積変化も伴うため、劣化しやすいです。

室温では最も安定な単斜晶の結晶構造を形成していますが、温度を上げていくと正方晶、立方晶へと順次変化していきます。この結晶構造変化による体積変化を抑えるために、酸化イットリウム (Y2O3) 、酸化カルシウム (CaO) 、酸化セリウム (CeO2) 、酸化マグネシウム (MgO) などの酸化物が安定化剤として用いられます。

酸化物を酸化ジルコニウムに添加し反応させ、結晶構造中に固溶させることで、立方晶の室温での安定的な存在が可能です。なお、室温で立方晶が安定となった酸化ジルコニウムを混合する安定化剤の添加量によって、安定化ジルコニア、もしくは部分安定化ジルコニアと呼びます。安定化剤の影響で酸素空孔が形成されるため、酸素イオンの良導体となります。

酸化ジルコニウムのその他情報

1. 酸化ジルコニウムの製造方法

酸化ジルコニウムの製造方法は、主に湿式精製法と乾式精製法の2種類があります。どちらもジルコン、ハデライトなどのジルコニウム鉱石が原料です。湿式精製法での最初の工程は、選別した鉱石を苛性ソーダで溶融した後、塩酸で分解、濃縮する工程です。

さらに、水洗、濾過などの工程を経て、得られた水酸化ジルコニウムを焼成、粉砕することで酸化ジルコニウム粉末を製造します。一方の乾式精製法では、鉱石を粉砕して不純物を除去した後、選鉱を繰り返し行うことで、純粋な酸化ジルコニウムを製造します。

2. ジルコニウムとの違い

ジルコニウムは金属で原子同士が金属結合で結び付けられているのに対して、酸化ジルコニウムはセラミックスで金属結合より強固な共有結合で原子同士が結び付けられています。結合様式の違いにより、ジルコニウムと比較して以下のような優れる特性を持ちます。

腐食しにくい
ジルコニウムは環境中の酸素や硫黄などの腐食性の元素と結合しやすく、比較的容易に腐食してしまいますが、酸化ジルコニウムはほとんど腐食することがありません。

高硬度で耐熱性に優れている
酸化ジルコニウムは金属結合よりも強い共有結合で形成されているので、非常に硬く丈夫で変形しづらく、また融点も1,855℃と高温であることからも耐熱性にも優れています。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0126-0048JGHEJP.pdf
https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/dt/html/GI_10_001/GI_10_001_1314-23-4.html

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