酸化コバルト

酸化コバルトとは

酸化コバルトとは、別名が四酸化三コバルトで、灰黒色もしくは黒色の粉末の無機化合物です。

化学式はCo3O4、分子量は240.80、CAS登録番号は1308-06-1、融点/凝固点は895℃で、水に溶けず塩酸・酸・濃アルカリに溶ける性質を有しています。

国内法規上で酸化コバルトは、安衛法では「名称等を表示すべき危険物および有害物」「名称等を通知すべき危険物および有害物No. 172」「特定化学物質第2類物質」「作業環境評価基準」に指定された物質です。PRTR法で「第1種指定化学物質 第1種-No. 132」、大気汚染防止法でも「有害大気汚染物質」という指定がされています。

酸化コバルトの使用用途

酸化コバルトは、酸化剤や触媒として主に使用されています。具体的な使用例は、コバルト塩類の原料としての使用です。また、陶磁器に使用する呉須 (ごす:絵付け顔料) として知られ、ガラスの着色剤、顔料としても使われています。

酸化コバルトは、リチウム電池の正極材の原料としても知られています。そのほか、ホーロー用の素材や飼料の添加物としても使用可能です。

酸化コバルトの性質

酸化コバルトには、コバルトの酸化数の違いによって、3種類の化合物が存在します。酸化コバルト (II) 、酸化コバルト (III) 、酸化コバルト (II,III) です。

例えば酸化コバルト (II,III) は黒色の固体で、コバルト (II) とコバルト (III) の両方を含んだ混合原子価化合物です。形式的に酸化コバルト (II,III) は、CoIICoIII2O4と書けます。

1. 酸化コバルト (II)

酸化コバルト (II) の化学式はCoOで、分子量は74.93、融点は1,933°Cです。赤色から黄緑の結晶、または黒色から灰色の粉末です。酸化コバルト(II)はセラミックス産業においては青色の釉薬やエナメルに、化学産業においてはコバルト (II) 塩の合成に使用されています。酸化コバルト(II)の結晶はペリクレース構造で、格子定数は4.2615Åです。

酸化コバルト (II) は、赤熱した単体のコバルトに、水蒸気を接触させると生成します。また酸化コバルト (II,III) を950℃に熱することで、酸化コバルト (II) と酸素に分解しても得られます。

酸化コバルト (II) は水、アンモニア水、エタノールには不溶ですが、酸には可溶です。湿った空気中で容易に酸化され、CoO (OH) になります。

2. 酸化コバルト (III)

酸化コバルト (III) の化学式はCo2O3で、分子量は165.86、融点は1,900°Cです。吸湿性がある黒褐色の粉末で、三酸化二コバルトとも呼ばれています。

硝酸コバルト (II) を次亜塩素酸ナトリウム水溶液に加えると、潮解性の黒色固体として酸化コバルト (III)が 生成します。酸化コバルト(III)は触媒や酸化剤として使用されており、ほとんど天然には存在していません。

酸化コバルトの構造

酸化コバルト (II,III) は、四酸化三コバルトとも呼ばれ、スピネル型構造を取っています。具体的には、酸化物イオンの立方最密充填単位格子の四面体間隙にCo2+イオン、八面体間隙にCo3+イオンが配置しています。

酸化コバルトのその他情報

1. 酸化コバルト (II,III) の合成法

酸化コバルト (II,III) は、空気中で酸化コバルト (II) を600〜700°C付近に熱すると生じます。ただし900°C以上にすると、酸化コバルト (II) の方が安定化します。

2. 酸化コバルト (II) の使用用途

数世紀前から酸化コバルト (II) は、陶磁器の着色剤に使われてきました。古くは12世紀のドイツでも使われていました。酸化コバルト (II) を添加した陶磁器は、コバルトブルーと呼ばれており、深青色に着色されます。

磁器の着色剤以外にも、磁性材料の原料や二次電池材料、各種酸化反応の触媒などに使用されています。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0103-0879JGHEJP.pdf
https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/dt/html/GI_10_001/GI_10_001_1308-06-1.html

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