酸化コバルト

酸化コバルトとは

酸化コバルトは、コバルトと酸素を結合させた化合物の総称です。

コバルトは多様な酸化数を持ち、それに応じてさまざまな化合物が存在し、それぞれ性質や用途が異なります。酸化コバルト(II)  (CoO) や酸化コバルト(II,III)  (Co3O4) などが代表例です。酸化コバルト (II) は青緑色の粉末で、磁性材料や陶器の着色料として利用され、一方、酸化コバルト (II,III) は黒色の結晶であり、リチウム電池の材料として注目されています。

酸化コバルトの使用用途

酸化コバルトは、その特性を活かして多岐にわたる用途に利用されています。ただし国内法規において、「コバルト及びその無機化合物」として、以下の法令で規制されています。そのため取り扱いには十分な注意が必要です。

労働安全衛生法

  • 名称等を表示すべき危険物および有害物
  • 名称等を通知すべき危険物および有害物 No.172
  • 特定化学物質第2類物質
  • 作業環境評価基準

化学物質排出把握管理促進法

  • 第1種指定化学物質 第1種-No.132

1. 着色剤

酸化コバルトは、古くからガラスの着色剤や顔料に利用され、とくに陶磁器の着色剤として広く知られています。酸化コバルトの種類により、鮮やかな青や紫色、ピンク色まで多様な色彩を表現します。

たとえば酸化コバルト (II) は、数世紀前には陶磁器の着色剤として利用されていました。その起源は古く12世紀のドイツにまで遡り、陶磁器の独特の深青色は一般にコバルトブルーと呼ばれています。

2. 触媒や電極材

また、反応を促進する触媒としても重要な役割を果たします。さまざまな工業プロセスにて使用され、とくに石油精製や化学製品の製造では酸化コバルトを触媒とし、効率的な反応を実現しています。

さらに、リチウム電池の正極材としても注目され、高いエネルギー密度を持つリチウムイオン電池の開発に欠かせない材料です。その他にも、ホーローの製造や、飼料の添加物としても利用されています。

酸化コバルトの性質

コバルトは酸化数によって様々な化合物を形成しますが、ここでは代表的なものについて解説します。

1. 酸化コバルト (II)

化学式は CoO 、分子量は 74.93、融点は 1,933℃、CAS登録番号は 1307-96-6 です。赤から黄緑色の結晶、または黒や灰色の粉末として存在し、セラミックス産業では青色の釉薬やエナメルに、化学産業ではコバルト (II) 塩の合成に利用します。結晶構造はペリクレース型で、格子定数は 4.2615Å です。

酸化コバルト (II) は、コバルトに水蒸気を接触させて生成し、酸化コバルト (II,III) は 950℃ に加熱すると、酸化コバルト (II) と酸素に分解されます。また、水、アンモニア水、エタノールに不溶ですが、酸には溶解し、湿った空気中では容易に酸化してCoO (OH) に変化します。

2. 酸化コバルト (III)

化学式 Co2O3、分子量は 165.86、融点は 1,900℃、CAS登録番号は 1308-04-9 で、吸湿性の黒褐色の粉末です。

硝酸コバルト (II) を次亜塩素酸ナトリウム水溶液に加えると、潮解性の黒色の固体、すなわち酸化コバルト (III) が生成されます。触媒や酸化剤に利用されますが、自然界にはほとんど存在しません。

3. 酸化コバルト (II, III)

化学式Co3O4、分子量は240.80、融点は895℃、CAS登録番号は 1308-06-1 です。形式的にCoIICoIII2O4と書かれることもあり、酸化コバルト (II) と酸化コバルト (III) の両方を含んだ混合原子価化合物です。灰黒色もしくは黒色の粉末で水に溶けず、塩酸・酸・濃アルカリに溶ける性質を有します。

酸化コバルト (II,III) は、空気中で酸化コバルト (II) を600〜700°C付近に熱すると生じますが、900°C以上にすると酸化コバルト (II) の方が安定化します。

酸化コバルトの構造

1. 酸化コバルト (II)

塩化ナトリウム型構造(岩塩型構造)で、コバルトイオン (Co2+) と酸素イオン (O2-) が交互に配列し、それぞれのイオンが6つの反対電荷のイオンに囲まれた正八面体構造を形成しています。

2. 酸化コバルト (III)

スピネル型に類似した複雑な結晶構造で、コバルトイオン (Co3+) は正八面体型に6つの酸素イオン (O2-) と配位し、酸素イオン (O2-) は4つのコバルトイオン (Co3+) と四面体型に配位しています。

3. 酸化コバルト (II,III)

スピネル型構造で、コバルト (II) イオンとコバルト (III) イオンが立方最密充填構造をとることにより安定化しています。コバルト (II) イオンは四面体間隙に、コバルト (III) イオンは八面体間隙に位置しています。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0103-0879JGHEJP.pdf
https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/dt/html/GI_10_001/GI_10_001_1308-06-1.html

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