酸化スズとは
酸化スズ (英: tin oxide) とは、スズと酸素からなる金属酸化物です。
酸化スズには、酸化数が異なる形態が存在しますが、通常は酸化スズ (IV) (化学式:SnO2) を指します。CAS登録番号は18282-10-5、白色または淡灰色の粉末で、自然界では錫石として存在します。水やアルカリに不溶で、化学的に安定した物質です。
酸化スズの使用用途
酸化スズは、その物理的、化学的性質を利用して、さまざまな産業で利用されています。
1. 電子デバイス分野
透明導電膜として広く使用されており、液晶ディスプレイやタッチパネル、太陽電池の電極材料として重要な役割を果たしています。
2. セラミックス・ガラス工業
ガラスやセラミックスの製造において不透明化剤や光沢を与えるコーティング材として使用され、高級ガラスや装飾品の製造に利用されています。
3. センサー・触媒材料
化学反応を促進する触媒として使用されます。また、一酸化炭素、水素、メタンなどのガス漏れ検知や、飲酒運転防止用アルコール検知のためのガスセンサー材料としても使用されています。
4. 化粧品・顔料
化粧品の増量剤や白色顔料、塗料の耐久性向上剤として広く利用されています。
酸化スズの性質
1. 物理的性質
モル質量150.71 g/mol、密度約6.95 g/cm³の結晶性無機化合物です。融点は1,630 ℃、昇華点は1,800~1,900 ℃で優れた高温特性を示します。ルチル型結晶構造を持ち、6配位のスズ原子と3配位の酸素原子で構成されています。また、可視光領域において高い透明性を有し、電気伝導性も示します。
2. 化学的性質
標準的な大気条件下で化学的に安定な物質で、水には不溶ですが、強酸 (塩酸や硫酸など) には可溶です。両性酸化物であり、酸とも塩基とも反応し、強酸に対してはスズ (IV) 塩を、強塩基に対してはスズ (II) 塩を形成します。また、酸素欠陥を生じることでn型半導体としての特性を示します。エネルギーギャップは約3.8 eVであり、これらの性質を利用して、半導体材料や触媒として広く使用されています。
酸化スズの種類
酸化スズには酸化スズ (Ⅳ) (SnO2) の他に酸化スズ (Ⅱ) (SnO) が存在します。酸化スズ (II) は、暗藍色または赤色の粉末で、CAS番号は、21651-19-4です。モル質量134.71 g/mol、密度約6.45 g/cm³、融点1,080 ℃で、水には不溶ですが、強酸や強塩基には溶解する両性物質です。空気中で加熱すると酸化スズ (IV) に変化し、不活性雰囲気下では不均化反応を起こして金属スズと酸化スズ (IV) になります。主に還元剤として使用され、銅赤ガラスの製造や顔料、触媒として利用されています。また、スズメッキ用補給剤としても使用されます。
酸化スズのその他情報
酸化スズの安全性
酸化スズは、一般的に低毒性とされています。急性毒性については、ラットに対するLD50は20 g/kg以上と報告されており、経口摂取による毒性が比較的低いことが示されています。皮膚刺激性や眼刺激性はほとんどなく、アレルギー反応も稀です。
酸化スズ の粉じんやヒュームを吸入すると、良性のじん肺 (スズ肺) を引き起こす可能性があります。そのため、取り扱い時には適切な換気と防護具の使用が推奨されます。特に粉末状の場合、浮遊粒子が有害濃度に達する可能性があるため、作業環境では粉じんの拡散を防ぐ措置が必要です。
長期的な酸化スズへの曝露は肺に障害を引き起こす可能性があるため、作業環境の適切な管理が重要です。国内法規上の主な適用法令として、労働安全衛生法において「名称等を表示すべき危険物および有害物」「名称等を通知すべき危険物および有害物」に指定されています。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0120-0160JGHEJP.pdf
https://www.chem-info.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/cmpInfDsp?cid=C004-747-42A
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