酸化スズとは
酸化スズとは、黒灰色もしくは黒色の結晶性粉末あるいは粉末の無機化合物です。
酸化スズの化学式はSnO、分子量は134.71、CAS登録番号は21651-19-4、融点/凝固点は1,080℃です。国内法規上の主な適用法令としては、労働安全衛生法に「名称等を表示すべき危険物および有害物」「名称等を通知すべき危険物および有害物」の指定があるのみで、そのほか消防法といった主だった法令での指定はされていません。
酸化スズの使用用途
酸化スズは、還元剤をはじめ、触媒や有機合成の原料として使われています。顔料や第一スズ塩類の原料、スズメッキ用補給剤としても使用可能です。
さらに、酸化スズは、PVC (英: Polyvinyl Chloride (ポリ塩化ビニル) ) の長期間使用による劣化を防止する安定剤としても使われています。PVCは、生活に幅広く関わっているフィルム・シートや上下水道・電話・電気といったインフラにも深く関わるパイプ・電線のような製品の原料となっている重要な物質です。
酸化スズの性質
酸化スズには、酸化スズ (II) 、酸化スズ (IV) 、酸化スズ (VI) が存在します。例えば、酸化スズ (II) には、安定な暗藍色型や準安定状態の赤色型の状態があり、このときのスズの酸化状態は+2です。
酸化スズの構造
黒色のα-SnOは、配位四角錐型のスズ原子を含む、正四面体型のPbO層構造を取っています。希少鉱物であるロマーク石として、自然で見られる構造と同じです。
非対称性については、立体的に活性な孤立電子対によって、単純に説明できます。しかし、電子密度計算において非対称性は、スズ原子の5s軌道と酸素原子の2p軌道との、反結合性相互作用に起因していることが明らかになっています。また、SnOには不定比性が見られ、 電子バンドは2.5eVから3eVの間です。
酸化スズのその他情報
1. 酸化スズ (II) の反応性
酸化スズ (II) は、空気中で暗緑色の炎を出して燃焼し、酸化スズ (IV)になります。酸化スズ (II) を不活性雰囲気下で加熱した場合には、まず不均 化が起こって金属SnとSn3O4が生成して、Sn3O4はさらに反応するため、最終的にSnO2と金属スズになります。
酸化スズ (II) は両性物質です。強酸に溶解するとスズ (II) 塩となり、強塩基中ではSn(OH)3–を含む亜スズ酸塩が生成します。酸化スズ (II) は強酸溶液にも溶解するため、イオン性錯体であるSn(OH2)32+やSn(OH)(OH2)2+を与え、弱酸性溶液中ではるSn3(OH)42+となります。K2Sn2O3やK2SnO2などの無水亜スズ酸塩としても知られている物質です。
また、SnOは還元剤なので、銅赤ガラスの製造に使用されています。
2. 酸化スズ(II)の合成方法
暗藍色の酸化スズ(II)は、NaOHのようなアルカリ性水酸化物と、二価のスズの塩を反応させた際に沈殿する酸化スズ(II)水和物を加熱すると調製できます。
準安定状態の赤色の酸化スズ (II) は、アンモニア水を二価のスズの塩に作用させることで生成した沈殿を、おだやかに加熱して調製できます。
さらに実験室でも酸化スズ (II) は、空気のない条件下で、温度制御しながらシュウ酸スズ (II) を加熱することで、純物質として調製可能です。
3. 酸化スズ (IV) について
酸化スズ (IV) は酸化第二すずや二酸化すずとも呼ばれ、化学式はSnO2で、反磁性です。酸化スズ (IV) は両性酸化物であり、水に溶けず、酸やアルカリにも溶解しません。
酸化スズ (IV) の外観は、無色の粉末です。6配位のスズ原子と3配位の酸素原子から構成される、ルチル型の結晶構造を取っており、酸化スズ (IV) は酸素の欠乏したn型半導体とされています。
酸化スズ (IV) の水和物はスズ酸とも呼ばれていましたが、粒径によって異なる水分量を有する酸化スズ (IV) の微粒子であることが明らかになっています。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0120-0986JGHEJP.pdf
https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/dt/html/GI_10_001/GI_10_001_21651-19-4.html