硝酸銅

硝酸銅とは

硝酸銅とは、の硝酸塩です。

通常硝酸銅は、硝酸銅(II)のことを指します。無水物は青色の結晶で、水和物も青色です。学校などで水和物は、ダニエル電池 (英: Daniell cell) の演示実験に使用されます。

火災等の場合には一酸化炭素などが発生する可能性があり、毒性が強いため注意が必要です。毒劇法では劇物で、銅およびその化合物は安衛法で危険物および有害物に指定され、銅水溶性塩はPRTR法で第1種指定化学物質になっています。 

硝酸銅の使用用途

硝酸銅の用途は、銅めっきの原料、酸化剤、触媒を代表として多岐にわたります。花火の製造、医薬品や殺虫剤の原料、織物染色や印刷インクの媒染剤、銅イオンの供給源として分析用試薬にも硝酸銅が使われます。

農業関係では、土壌中の銅の欠乏防止を防ぐために利用可能です。殺菌剤・殺虫剤、除草剤、肥料や微量栄養素などにも使用されます。無水物の硝酸銅は吸湿性が高く、水分を吸収して青色の水和物になるため、水分の検出や脱水剤に利用できます。

硝酸銅溶液は鉄を腐食させるため、黒のアンティーク仕上げや亜鉛の茶色着色などに使用可能です。さらに、助燃効果を利用して、ロケット燃料の触媒として用いられます。また、自動車用のシーラントやコーキングでは、有機ケイ素化合物のニトロ化剤として硝酸銅溶液が使われています。

硝酸銅の性質

硝酸銅の無水物は揮発性の固体であり、真空中で210°Cで昇華します。水和物には化学式がCu(NO3)2・3H2Oの三水和物とCu(NO3)2・6H2Oの六水和物などがあります。三水和物の融点は114.5°Cです。硝酸銅の水和物は潮解性があり、水やエタノールによく溶けます。

水溶液で硝酸銅の水和物は、アクア錯体である[Cu(H2O)6]2+として存在します。ただし銅(II)のd9電子配置のために非常に不安定です。

硝酸銅の構造

硝酸銅は化学式でCu(NO3)2と表される無機化合物です。硝酸銅の無水物には、αとβの2つの多形が知られています。いずれも銅中心が酸素原子4つに囲まれた平面四角形構造を取っており、凝縮するとポリマーになります。α形には[4+1]配位の銅環境が1つしかありません。β形には2つの異なる銅中心があり、[4+1]配位と正方形の平面です。ニトロメタン溶媒中では、約200pmの4つの短いCu-O結合と240pmの1つの長い結合による[4+1]配位になっています。

三水和物のCu(NO3)2・3H2Oと六水和物のCu(NO3)2・6H2Oは、Cu-O距離がすべて等しいです。強い水素結合によって、Cu-O結合の弾性が制限されているためです。

Cu(NO3)2(H2O)2.5は銅中心が硝酸イオンと水に囲まれた正八面体構造を取っています。およそ170°Cで、酸化銅(II)、酸素、二酸化窒素に分解します。

硝酸銅のその他情報

1. 天然の硝酸銅

硝酸銅として鉱物には含まれていません。リカシ石 (英: Likasite) にCu3(NO3)(OH)5・2H2Oが、ブットゲンバッハ石 (英: Buttgenbachite) にCu19(NO3)2(OH)32Cl4・2H2Oが含まれています。

天然の塩基性硝酸銅には、希少鉱物のゲルハルト石 (英: Gerhardtite) やロウア石 (英: Rouaite) があり、どちらも Cu2(NO3)(OH)3の多形体です。

2. 硝酸銅の合成法

金属の銅を四酸化二窒素で処理すると、硝酸銅の無水物になります。硝酸銅の無水物の加水分解によって、硝酸銅の水和物が得られます。金属銅に希硝酸や硝酸銀水溶液を加えても、硝酸銅の水和物を生成可能です。

3. 硝酸銅の反応

硝酸銅の加熱で生じた気体を水に通すと硝酸が得られます。この反応はオストワルト法 (英: Ostwald process) の最終段階に似ています。

参考文献
https://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB02130417.htm
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340CO0000000002

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です