一酸化窒素

一酸化窒素とは

一酸化窒素とは、窒素原子と酸素原子からなる無機化合物です。

酸化窒素とも呼ばれ、常温常圧で無色無臭の気体です。などの金属と希硝酸を反応させることにより、一酸化窒素が発生します。また、二酸化窒素と二酸化硫黄の置換反応でも得ることが可能です。

一酸化窒素は水に溶けないため、実験室では水上置換法によって収集します。なお、労働安全衛生法で「名称等を表示・通知すべき有害物質」「リスクアセスメントを実施すべき危険有害物」に指定されています。

一酸化窒素の使用用途

一酸化窒素は、生体内で作られ続けています。生体内で生成した一酸化窒素は、動脈の内壁と外壁の間に位置する筋肉の「平滑筋」へ運ばれて、平滑筋の柔軟性を高め、動脈硬化を予防します。血管の柔軟性が保たれることで、血管に脂肪分が付着し、血流の悪化を防げます。

体内で作られる一酸化窒素の量は、加齢とともに減少します。適度な運動やアルギニンの摂取により、一酸化窒素の生成量を増やすことも可能です。

その一方で、一酸化窒素を使用して、ポリマーの表面のラジカルを検出できます。具体的には、X線光電子分光によって、一酸化窒素がラジカルを消去する際に生じる窒素を検出します。

一酸化窒素の性質

一酸化窒素の化学式は、NOと表されます。融点は−163.6°Cで、沸点は−151.7°Cです。酸素に触れるとすぐ酸化して、二酸化窒素 (NO2) に変わります。

水中で酸素と反応し、亜硝酸 (HNO2) を生成します。一酸化窒素とハロゲンの反応によって、ハロゲン化ニトロシル (英: nitrosyl halide) を得ることが可能です。例えば、塩素と反応すると、塩化ニトロシル (英: nitrosyl chloride) を生成します。一酸化窒素と二酸化窒素が結合すると、濃い青色の三酸化二窒素を生じます。

また、一酸化窒素は窒素の酸化物で、窒素の酸化数は+2です。窒素原子が不対電子を持っています。式量は30.0061g/molであり、窒素原子と酸素原子の距離は115pmです。

一酸化窒素のその他情報

1. オストワルト法による一酸化窒素の合成

白金触媒を用いて、900℃程度にアンモニアを熱すると、一酸化窒素が生成します。オストワルト法 (英: Ostwald process) と呼ばれ、一酸化窒素の一般的な生産方法です。

現在は白金にロジウムを10%程度加えた金網状の触媒が使用されます。温度が800°C、接触時間が0.001秒の条件で、白金-ロジウム触媒によって一酸化窒素が生成し、収率は95〜98%です。

2. 一酸化窒素による環境への影響

一酸化窒素は、大気汚染で問題になっている窒素酸化物 (NOx) の1つです。窒素酸化物は大気中の水蒸気と反応して硝酸になるため、酸性雨の原因になります。大気汚染防止法で窒素酸化物は、火力発電所、自動車、航空機、船舶などの排出源に対し、排出規制が実施されています。

高温で窒素と酸素から一酸化窒素が生じるため、自然界では雷や山火事が原因で一酸化窒素が生成しますが、人為的理由も多いです。具体的には、石油ストーブ、ガスコンロ、暖炉などで、排出規制対象にはなっていません。

大気に放出された一酸化窒素は二酸化窒素に酸化されますが、二酸化窒素は紫外線によって一酸化窒素と原子状酸素になります。原子状酸素はオゾンのような酸化物質を生成し、酸化物質の存在下では一酸化窒素の酸化が加速します。すなわち、連鎖的に反応が進行して、光化学オキシダントを生成するため、これが光化学スモッグを引き起こす原因です。

3. 一酸化窒素を有する金属錯体

一酸化窒素は遷移金属と反応すると、金属ニトロシル (英: metal nitrosyl) と呼ばれる錯体が得られます。一般的にはM-NOと結合し、疑ハロゲン化物 (英: pseudohalide) 配位子として機能します。M-NOを持つ錯体のM-N-Oの結合角は、120°〜140°です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0655.html

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