ホルムアミドとは
図1. ホルムアミドの基本情報
ホルムアミドとは、化学式がCH3NOで表されるアミドです。
ギ酸 (英: formic acid) から合成されるため、ギ酸アミドとも呼ばれます。メタンアミドやカルバムアルデヒドも、ホルムアミドの別名です。ホルムアミドの50%致死量 (LD50) は1kgあたり数グラムで、急性毒性は低く、変異原性も低いです。
性と生殖に関する健康 (英: reproductive health) には、有毒だと分類されています。労働安全衛生法で名称等を通知すべき有害物質に指定されている他、消防法では「第4類引火性液体」「第三石油類水溶性液体」に指定されています。
ホルムアミドの使用用途
ホルムアミドは、凍結防止剤として利用されています。実験に使われる臓器や生体組織を凍結する際には、ホルムアミドを含んだ凍結防止剤を使用可能です。例えば、マウスの精子を凍結保存する場合などが挙げられます。
ホルムアミドは、対象物を固化させて過冷却状態にする「ガラス化化合物」として働きます。ホルムアミドはシアン化水素 (HCN) の工業的製法にも利用可能です。シアン化水素は極めて毒性の高い物質で、殺虫剤や殺鼠剤として利用されています。
また、RNAを脱イオン化するため、ゲル電気泳動 (英: gel electrophoresis) のRNA安定剤としても使用されます。キャピラリー電気泳動では、変性したDNAの一本鎖の安定化に利用可能です。さらに、ビタミンの合成やサルファ薬の製造に利用される以外にも、紙や繊維の柔軟剤にも使われます。
ホルムアミドの性質
ホルムアミドは無色の液体で、常温常圧でアンモニア臭があります。融点は2〜3°C、沸点は210°Cです。アルコールやエーテルと混ざりますが、ベンゼンやクロロホルムには溶けません。
水と任意の割合で混ざり合い、水に溶けないイオン性化合物を溶解できるため、よく溶媒に利用されます。具体的には、グルコース、カゼイン、デンプン、タンニンなどの高分子化合物だけでなく、鉛、銅、鉄などの塩化物のほか、酢酸のアルカリ金属塩を溶かします。
ホルムアミドの構造
ホルムアミドはギ酸由来のアミドです。示性式はHCONH2と表されます。同じくRR’NCHOと表される化合物の1つに、N,N-ジメチルホルムアミド (英: N,N-dimethylformamide) もあり、示性式は(CH3)2NCHOです。なお、分子量は45.04g/molで、密度は1.133g/cm3です。
生化学でホルムアミドは、現在の地球上の生命を維持する能力があります。そのため、水の代替溶媒として提案されています。ホルムアミドはシアン化水素の加水分解によって生じ、双極子モーメントが大きく、溶媒和特性も水に近いです。
ホルムアミドのその他情報
1. ホルムアミドの合成法
図2. ホルムアミドの合成
ギ酸とアンモニアを反応させるとギ酸アンモニウム (英: ammonium formate) が生じ、脱水によってホルムアミドを生成可能です。工業的には、ギ酸メチル (英: methyl formate) またはギ酸エチル (英: ethyl formate) の、アンモニアによるアミノ分解 (英: aminolysis) が用いられています。
アンモニアのカルボニル化によっても、ホルムアミドを製造可能です。一酸化炭素とメタノールから生成されるギ酸メチルのアンモノリシス (英: ammonolysis) でも得られます。
2. ホルムアミドの反応
図3. ホルムアミドの反応
180°Cでホルムアミドは、一酸化炭素とアンモニアに分解します。固体酸触媒の存在下では、シアン化水素と水に分解されます。
紫外線の存在下でホルムアミドを加熱すると、微量のグアニン (英: guanine) に変換可能です。