塩化スルフリル

塩化スルフリルとは

塩化スルフリル (英: Sulfuryl chloride) とは、常温常圧で辛みのある悪臭を有する無色の液体です。

化学式はSO2Cl2、分子量は134.97、CAS番号は7791-25-5の無機化合物です。硫黄原子を中心に2つの酸素原子と2つの塩素原子が結合した四面体構造を持ちます。

1838年にフランスの化学者アンリ・ヴィクトル・ルニョーによって初めて調製されました。

塩化スルフリルの使用用途

塩化スルフリルは、放置するだけで塩素を発生させることができ、液体として保存することができるという特徴があるため、塩素の発生源として主に利用されています。カルボニルやスルホキシドなどの活性な置換基に隣接するC-HをC-Clへ変換する試薬として使用される他、アルカン、アルケン、アルキン、芳香族化合物、エーテル (テトラヒドロフランなど) およびエポキシドを塩素化します。 

また、ベンジル位の炭化水素基を塩素化する際にも用いられます。例えば、トルエン (C6H5-CH3) に塩化スルフリルを加えることによって、炭化水素基の末端が塩素化され、塩化ベンジル (C6H5-CH2Cl) を得ることが可能です。ヒドロペルオキシドを同時に用いることにより、収率を上げることができます。

塩化スルフリルは、チオールまたはジスルフィドを対応する塩化スルフェニルに変換したり、アルコールを塩化アルキルに変換できます。

塩化スルフリルの性質

塩化スルフリルの融点は-54℃、沸点は69℃、密度は1.67g/cm3で、沸点より約30°C高い100°C以上に加熱すると分解します。

空気中で二酸化硫黄塩素へと分解されるため、古いサンプルは塩素の持つ色である黄緑色を帯びるようになります。

塩化スルフリルのその他情報

1. 塩化スルフリルの製法

活性炭などの触媒存在下で、二酸化硫黄と塩素を混合することによって得ることが可能です。化学式は以下です。

   SO2 + Cl2 → SO2Cl2

生成物は蒸留によって精製でき、古くには、塩化チオニルを酸化することよって塩化スルフリルを合成していました。  

   SOCl2 + HgO → ClSSCl + HgCl2 + SO2Cl2
   2SOCl2 + MnO2 → SO2 + MnCl2 + SO2Cl2

2. 塩化スルフリルの反応

塩化スルフリルは水と反応し、塩化水素ガスと硫酸を放出します 。

   SO2Cl2 + 2H2O → 2HCl + H2SO4

塩化スルフリルは、過酸化物や光などによって開始されるアルカンの塩素化反応の塩素源として使用することができます。

   CH4 + SO2Cl2 → CH3Cl + SO2 + HCl

3. 法規情報

労働安全衛生法や化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)、毒物及び劇物取締法、消防法などいずれの主要な法令においても指定がありません。ただし、危険物船舶運送及び貯蔵規則においては「毒物類・毒物」、航空法では「輸送禁止」の物質に該当し、毒性を持ち催涙作用があるため、取り扱いには注意が必要です。

4. 取扱いおよび保管上の注意

取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 保管容器は不活性ガスを封入し、冷蔵庫 (2~10℃) で保管する。
  • 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
  • 加水分解によって発生する塩化水素により、容器の内圧が高くなることがあるので、開栓する時は保護具を着用する。
  • 使用時は保護手袋、保護眼鏡、保護衣、保護面を着用する。
  • 激しく反応するため、アルカリ性物質、アルコール類および水との接触を避ける。
  • 取扱い後はよく手を洗浄する。
  • 吸入した場合、空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させる。
  • 皮膚に付着した場合は、すぐに多量の水と石鹸で洗い流す。
  • 眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗い、直ちに医師の手当てを受ける。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0119-0481JGHEJP.pdf

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