ジイソプロピルエチルアミン

ジイソプロピルエチルアミンとは

ジイソプロピルエチルアミンの構造

図1. ジイソプロピルエチルアミンの構造

ジイソプロピルエチルアミン (英: N,N-diisopropylethylamine) とは、窒素原子上に2つのイソプロピル基と1つのエチル基を有する有機化合物です。

ジイソプロピルエチルアミンは、イソプロピル基の効果によって立体的にかさ高い構造であるため、求核性の低いアミンとして医薬品の製造や有機合成研究に使用されています。ジイソプロピルエチルアミンの主な製造方法として、ジイソプロピルアミンをジエチル硫酸やヨウ化エチルでエチル化する方法が有名です。

ジイソプロピルエチルアミンは消防法において「危険物第4類第一石油類」、労働安全衛生法において「危険物・引火性の物」に指定されています。

ジイソプロピルエチルアミンの使用用途

ジイソプロピルエチルアミンとトリエチルアミンの構造比較

図2. ジイソプロピルエチルアミンとトリエチルアミンの構造比較

ジイソプロピルエチルアミンは、主に有機合成用試薬として化成品や医薬品合成に使われています。トリエチルアミンによく似た分子構造を持ち、かさ高いイソプロピル基を2つ持つ求核性が低い塩基です。

ジイソプロピルエチルアミン自身がN‐アルキル化を受けにくいため、アルキル化反応などにも使用されており、特にペプチドをはじめとする生理活性物質の合成に汎用的に用いられています。具体的には、環状ペプチドの固相法を用いた合成に利用されるオキシム樹脂の製造や、ペプチドのカップリング試薬として知られる1-ヒドロキシベンゾトリアゾール (HOBt) 、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール (HOAt) のベンゾトリアゾール誘導体の製造などです。

また、実験室レベルでの有機合成研究においても、ジイソプロピルエチルアミンは、かさ高い塩基の1つとして有機反応によく使用される一般的な試薬です。

ジイソプロピルエチルアミンの性質

ジイソプロピルエチルアミンは、エタノールやアセトンに良く溶ける一方で、水には溶けにくいという性質を持っています。また、引火性がある危険物です。引火を防ぐため、高温の熱源や火花など着火源をジイソプロピルエチルアミンには近付けないようにしてください。

その他、皮膚や眼への付着による損傷、経口摂取による急性毒性などにも注意が必要です。ジイソプロピルエチルアミンを取り扱う際には、保護手袋・保護衣・保護眼鏡など、皮膚と眼を守る保護具の着用が推奨されています。

催涙性のあるアミン臭も有するため、よく換気された実験環境で取り扱うことが大切です。なお、保管する際は、光によって分解される可能性のある化合物であるため、容器を遮光し、換気の良い冷暗所が適しています。

化学式 C8H19N
日本語名 ジイソプロピルエチルアミン
英語名 N,N-diisopropylethylamine
CAS番号 7087-68-5
分子量 129.24g/mol
融点 −50℃
沸点 127℃

ジイソプロピルエチルアミンのその他情報

1. ジイソプロピルエチルアミンの別名

ジイソプロピルエチルアミンの正式名称は、N,N-ジイソプロピルエチルアミンです。ジイソプロピルエチルアミンの略称はDIPEAで、有機合成の論文などで一般名として使用されています。

また、ジイソプロピルエチルアミンの別名は、N-エチルジイソプロピルアミンやヒューニッヒ塩基 (英: Hunig’s Base) です。ヒューニッヒ塩基というのはドイツの化学であるジークフリート・ヘルムート・ヒューニッヒに由来する名称で、こちらも有機合成の分野で一般的に広く使用されています。

安全データシートや日本国内の大手試薬メーカーのウェブサイトでは、主に正式名称である「N,N-ジイソプロピルエチルアミン」が使用されています。

2. 廃棄処分方法

ジイソプロピルエチルアミンは、水生生物への毒性を有します。そのため、ジイソプロピルエチルアミンを廃棄処分する場合は、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して適切に処分してください。

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