ジアセトンアルコールとは
ジアセトンアルコール (英: Diacetone alcohol) とは、化学式C6H12O2であらわされる有機化合物です。
一分子中にケトンとアルコールの両方の官能基を有し、アセトンが縮合した分子構造に相当します。別名には、DAAの略称や4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどの名称があります。CAS登録番号は123-42-2です。
ジアセトンアルコールの使用用途
ジアセトンアルコールの主な使用用途は、 油脂、樹脂、ニトロセルロース等の溶媒、及び、印刷インキ、コーティング加工用樹脂、金属加工液、潤滑剤、洗浄剤などです。ジアセトンアルコールは、低蒸気圧の高沸点溶剤であるという特徴を持ち、有機重質液体の粘度低下および粘度に対する温度の影響を少なくするのに優れた効果があります。
具体的には特に、セルロースエステルラッカー、印刷インキ、アルキドおよびビニル系樹脂塗料、脂肪、エポキシ樹脂などの溶剤、水硬剤、写真用フィルム、氷結防止剤、人工シルク、レザーなどの製造に用いられています。また、ジアセトンアルコールは、各有機化合物の原料としても用いられる物質です。
特に重要な生成化合物として、溶媒、塗料の原料として用いられるメチルイソブチルケトン、電子材料用途などに用いられるメチルイソブチルカルビノール、浸透剤や洗剤の原料として用いられるへキシレングリコールなど、が挙げられます。
ジアセトンアルコールの性質
図1. ジアセトンアルコールの基本情報
ジアセトンアルコールは、分子量116.16、融点-44℃、沸点167.9℃であり、常温での外観は無色の液体です。臭いはほぼ無く、一般的な取り扱いにおいては安定な化合物です。
水への溶解度は、1.00×106mg/Lであり、アルコール、エーテルに混和します。密度は 0.93g/mL、引火点は66℃、自然発火温度は603℃です。
ジアセトンアルコールの種類
ジアセトンアルコールは、一般的に研究開発用試薬製品や、工業用薬品などとして販売されている物質です。
1. 研究開発用試薬製品
研究開発用試薬製品としては、500mL、15kgなどの容量の種類があります。実験室で取り扱いやすい容量で取り扱われることが多いですが、比較的大きな容量での提供もあり、安価な試薬製品です。通常は、室温で保管可能な試薬製品としての提供となります。
2. 工業用薬品
工業用薬品としては、主に溶剤 (特に塗料の溶剤、グラビアインクの溶剤、接着剤の溶剤、殺虫剤の溶剤、 写真フィルムの原料など) の用途を想定して販売されている物質です。荷姿としては16kg石油缶、196kgドラム、1,000Lコンテナなどがあります。
ジアセトンアルコールのその他情報
1. ジアセトンアルコールの合成
図2. ジアセトンアルコールの合成
ジアセトンアルコールは、アセトン2分子が縮合した構造を有しており、工業的にもアセトンをに二量化する方法で合成されます。具体的には、水酸化バリウムなどの塩基を触媒としてアセトンにアルドール縮合を行わせる方法が一般的です。
2. ジアセトンアルコールの化学反応
図3. ジアセトンアルコールの脱水反応
ジアセトンアルコールは、加熱、燃焼や、酸、塩基、アミンとの接触により、分解してアセトンとメシチルアルコールを生じます。また、酸化剤と激しく反応し、引火性/爆発性の気体 (水素) を生成する性質があります。混触危険物質は 酸、塩基、アミン、酸化剤であり、危険有害な分解生成物はアセトン、メシチルアルコール、水素です。
また、ジアセトンアルコールに触媒量のヨウ素を加えることによって脱水反応が起こり、メシチルオキシドが生成します。
3. ジアセトンアルコールの危険性と法規制情報
ジアセトンアルコールは、GHS分類において引火性液体、皮膚腐食性/刺激性、眼刺激性、生殖毒性、特定標的臓器・全身毒性に分類されています。
これらの危険性により、ジアセトンアルコールは法令によって規制を受ける物質です。労働安全衛生法において危険物・引火性の物、また名称等を表示・通知すべき危険有害物に指定されており、リスクアセスメントを実施すべき危険有害物、および消防法において、第4類第二石油類に指定されています。法令を遵守して正しく取り扱うことが重要です。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0108-0985JGHEJP.pdf