シクロペンタノン

シクロペンタノンとは

シクロペンタノンとは、化学式(CH2)4COで表される5員環構造を有する環状ケトンの1つです。

分子量は84.12 g/mol、密度は0.95 g/cm3、融点は-58.2 ℃、沸点は130.6 ℃、CAS番号は120-92-3です。

シクロペンタノンの使用用途

シクロペンタノンの使用用途として、医薬品、殺虫剤、ゴム薬品などの合成中間体が挙げられます。ウェーハ製造などの電子材料分野においては、洗浄剤や溶剤としても有用です。

1. 植物由来物質の原料

シクロペンタノン骨格は、ジャスミンから単離された植物ホルモン様物質であるジャスモン酸に含まれているように、さまざまな植物由来物質の構造中に含まれています。

ジャスモンは、植物ホルモン様の物質であり、果実の熟化促進や老化の促進、休眠状態の打破などを誘導します。また、傷害などのストレスに応じて合成されることから、エチレン、アブシジン酸、サリチル酸などの物質と同じように環境ストレスへの耐性誘導ホルモンとして知られています。

ジャスモン酸は植物体内のどこでも合成されますが、その個体から遠く離れた場所にも輸送されることが可能です。一個体内で輸送される場合には、アルキル末端がヒドロキシ化されてツベロン酸になり、さらに末端ヒドロキシ基にβ-グルコースが結合し配糖体となることで親水性が増加し、植物体内の別の部位へ移動できるようになります。

一方植物個体間での移動は昆虫による摂食傷害を受けた際などに起こり、メチル化されるなどの変換を受けることにで揮発性を増加させ、飛散しやすくすることでシグナルを伝達します。このようなホルモンなど、植物にとって不可欠な物質を合成する際にシクロペンタノンは非常に重要な原料です。

2. 香料の原料

上記で述べたジャスモン酸の類縁体であるジヒドロジャスモン酸メチルや2-ブチルシクロペンタノン、2-ヘキシリデンシクロペンタノン、(Z)-3-(2-オキソプロピル)-2-(ペンタ-2-エン-1-イル)シクロペンタノンおよびMagnolioneなどは、各種香料の原料としても重要であり、合成上の前駆体となります。

3. 金属の洗浄剤

シクロペンタノンは金属材料に付着する各種の油、ワックスの洗浄、さらには電子材料分野でのフラックス洗浄剤としても用いられます。あらゆる金属加工油の脱脂洗浄力、各種フラックス、各種ワックスの溶解力、洗浄力が優れていることです。

また、比較的に沸点が低く乾燥性や回収性が優れていたり、蒸留再生をすることで品質が安定し、リサイクル使用が可能であったり、生分解性が良好で毒性が低かったりすることも理由の1つです。

シクロペンタノンの性質

外観は無色の液体であり、揮発性ではっか類似臭を有しています。シクロペンタノンの製造方法としては、シクロペンタノールを含む触媒下で脱水素化する方法やアジピン酸に水酸化バリウムを加えて加熱することでケトン化を起こす方法などが知られています。

水とはわずかに混ざり合い、エーテルやアルコール、酢酸エチル、ベンゼンなどの溶媒には任意の割合で混ざり合うことが可能です。同じ炭素数をもつ鎖状のケトンである3-ペンタノン (ジエチルケトン) と比較すると、自然発火点が高いことや (ジエチルケトンは常温で自然発火してしまう) 価格が低いことなどから溶媒として用いられる機会は多いです。ただし、通常の有機溶媒の方が使い勝手が良いため、あまり溶媒としては使用されません。

シクロペンタノンのその他情報

シクロペンタノンの危険性

シクロペンタノンは、GHS分類において引火性液体、急性毒性、眼刺激性に分類されています。そのため、保管する際には火気に触れる恐れのない場所で常温保存し、取り扱う際には保護メガネ、白衣、ゴム手袋を必ず着用する必要があります。

シクロペンタノンの法規制は、労働安全衛生法において危険物・引火性の物、また消防法において第4類第二石油類に指定されています。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0103-0971JGHEJP.pdf

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