エルカ酸アミド

エルカ酸アミドとは

エルカ酸アミドとは、エルカ酸をアミド化した物質です。

エルカ酸は、ナタネ油やカラシの種から摂れる油などに含まれる一価不飽和脂肪酸です。炭素数が22で二重結合1つを持つ脂肪酸の総称であるドコセン酸に分類されます。エルカ酸アミドはプラスチックなどのフィルムに対して用いる潤滑剤として用いられています。

樹脂に直接添加することで、摩擦を逓減するなどの効果を付与することが可能です。ホホバオイルに含まれる他、化粧品や油絵具に含まれています。なお、GHS分類基準には該当しません。また、消防法、毒物及び劇物取締法においても非該当で、非危険物の比較的安全な物質です。

エルカ酸アミドの使用用途

エルカ酸アミドはファインケミカルとも呼ばれ、特殊用途において多品種・少量生産される付加価値の高い化学製品です。各種プラスチックおよび樹脂に粘着防止剤、平滑剤、潤滑剤、帯電防止剤など、様々な用途で利用されています。

主に食品の包装などに用いられているプラスチックフィルムに添加されたエルカ酸アミドは、フィルムの表面へと移動し、フィルム同士の摩擦やフィルムが内容物に固着することを防ぐ効果があります。

エルカ酸アミドと同じく、プラスチックフィルムに潤滑剤として添加される物質にオレイン酸アミドがあります。エルカ酸アミドはオレイン酸アミドに比べて耐熱性が高く、添加後表面へ移動するのに時間がかかることが特徴です。

エルカ酸アミドの性質

エルカ酸アミドは、分子量337.58、CAS番号112-84-5で表わされる白色の結晶〜粉末です。物理的性質は融点79-81°C、沸点358°C 、比重0.908、屈折率1.5614 で、可燃性有機物質および製剤に概ね該当します。水には不溶で、一般的な環境においては安定な物質です。

微細に分散し、舞い上がった場合、粉じん爆発を起こす可能性があります。混触危険物質は強酸化剤です。

エルカ酸アミドのその他情報

1. 取扱い方法

作業は換気のよい場所で行い、可能な限り密閉化した設備もしくは局所排気装置を設置します。また、取り扱い場所の近くには、手洗い、洗眼・全身シャワーの設置が必要です。

作業者は、防塵マスク、もしくは簡易防塵マスク、保護手袋、保護眼鏡 (状況に応じて保護面) 、保護衣 (状況に応じて保護長靴) を着用します。作業時は、粉塵が飛散しないように注意し、取り扱い時は飲食および喫煙を避け、作業後は手、顔などをよく洗います。

2. 応急措置

吸入した場合は、直ちに吸入後は新鮮な空気を吸い、皮膚に付着した場合は、すべての汚染された衣類を直ちに脱ぎ、皮膚を流水またはシャワーで数分間洗い流します。

眼に入った場合は、多量の水ですすぎ、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外し、洗浄を続けます。飲み込んだ場合は水を飲ませ (多くても2杯) 、気分が悪いなどの症状が続く場合は、医師の診察、治療が必要です。その際、SDSなどの取り扱い説明書を持参すると治療が円滑に進みます。

3. 火災時の措置

消化時は、水、泡、二酸化炭素、粉末消火剤を使用します。エルカ酸アミドは、使用できない消火剤は無いため、火災規模、周辺環境に合わせて適切な消火剤を使用します。

火災時は分解生成物として、可燃性の炭素酸化物、窒素酸化物などの有害な燃焼ガスや蒸気を発生させる恐れがあることから、消防士は自給式呼吸器の着用が必要です。

4. 保管

密閉し、乾燥した状態で−20℃の環境で保管します。強酸化剤などの混触危険物質から離れた場所で保管を行います。廃棄時、内容物及び容器は、関連法規及び各自治体の条例等の規制に従い、産業廃棄物として適切に処理が必要です。

処理施設がないなどの理由で廃棄できない場合は、許可を受けた産業廃棄物処理業者に委託します。焼却処理する場合には、可燃性溶剤に溶解または混合した後、アフターバーナー及びスクラバーを備えた焼却炉で焼却します。

参考文献
https://www.sigmaaldrich.com/JP/ja/sds/sial/90082

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