ウリジン

ウリジンとは

ウリジンの基本情報

図1. ウリジンの基本情報

ウリジンとは、ウラシル (英: uracil) がリボース (英: ribose) 環に結合した構造を持つ物質です。

ヌクレオチド (英: nucleotide) の一種であり、リボ核酸 (RNA) の構成成分の一つです。ヌクレオチドの形で、生物界に広く存在しています。ウリジンはオロト酸尿症患者へ薬として投与されている他、ウリジン誘導体はうま味調味料の原料となっています。労働安全衛生法などの国内法規に指定されていません。

ウリジンの使用用途

シュードウリジンの基本情報

図2. シュードウリジンの基本情報

ウリジンは新型コロナウイルスのRNAワクチンの開発で利用されました。RNAワクチンは体内に入ると、細胞内でRNAとして働き、獲得免疫を刺激します。

RNAワクチンを構成するRNAは、人の体内に自然に存在するRNAのウリジンの部分を、シュードウリジン (英: pseudouridine) によって置換したものです。シュードウリジンはウリジンの異性体です。

RNAワクチンとして使用を許可されているものには、モデルナ社の製品やバイオンテック社とファイザー社の共同開発による製品などがあります。

ウリジンの性質

ウリジンは無色の長針状晶で、融点は165℃です。水、ピリジン、DMSOなどによく溶けます。

吸収極大波長は、pH2で262nmです。希酸で加水分解されにくく、濃酸によってウラシルとフルフラール (英: furfural) に加水分解されます。

ウリジンの構造

ウリジンはDNAを構成する塩基の一つであるウラシルが、リボースにβ-N1-グリコシド結合 (英: glycosidic bond) した構造を有する物質です。化学式はC9H12N2O6、モル質量は244.203です。

ウリジンはピリミジン (英: pyrimidine) の骨格を持っています。そのため、ピリミジンを基に合成できます。例えば、2,6-ジエトキシピリミジン (英: 2,6-diethoxypyridine) とアセトブロモリボフラノース (英: acetobromoribofuranose) から合成可能です。それ以外にも、リボ核酸の加水分解やウリジル酸 (英: uridylic acid) の酵素処理などによっても得られます。

ウリジンのその他情報

1. ウリジンの生理作用

ω3脂肪酸をウリジンと同時投与した際に、ラットにおける抗うつ作用が見られると報告例があります。また、アレチネズミに対して、ウリジン、ω3脂肪酸、コリンの同時投与で、シナプスが活性化され、タンパク質やリン脂質が増えると報告されています。さらに、ウリジンとω3脂肪酸によって、アレチネズミの脳機能の改善が報告されました。

2. ウリジンの骨格

D-リボースの化学構造

図3. D-リボースの化学構造

ウリジンは、リボースとウラシルから構成されています。リボースとは、単糖の一種です。炭素鎖の長さが5のアルドース (英: aldose) であり、対応するケトース (英: ketose) はリブロース (英: ribulose) です。D-リボースは、5員環のフラノース型、6員環のピラノース型、鎖状構造を取っています。

3. ウリジンを含む化合物

ウリジンの骨格を持っている化合物として、ウリジン二リン酸ガラクトース (英: diphosphate galactose) やウリジン5′-二リン酸グルコース (英: uridine 5′-diphosphoglucose) などが知られています。これらは多糖類やグリコシドの生合成で、補酵素の機能を有する化合物です。

4. ウリジンの関連化合物

デオキシウリジン (英: deoxyuridine) とは、デオキシリボース (英: deoxyribose) 環にウラシルが接合している化合物のことです。ウリジンの化学構造によく似ていますが、デオキシウリジンは2’-ヒドロキシ基を持っていません。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0121-0077JGHEJP.pdf

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