硫化ナトリウム

硫化ナトリウムとは

硫化ナトリウムとは、化学式がNa2Sで表される無機化合物です。

別名、硫化ソーダとも呼ばれます。式量は78.04g/molです。通常は、九水和物 (Na2S・9H2O) として存在します。硫化ナトリウムなどの硫化物塩の硫化物イオンを含む水溶液は、2つの水素イオンを捕獲し、加水分解によって強アルカリ性を示します。

廃液中の硫化ナトリウムが酸や酸性塩と反応すると、硫化水素が生じるため、取り扱いには注意が必要です。労働安全衛生法では、57条の名称等を通知すべき有害物とされています。

硫化ナトリウムの使用用途

硫化ナトリウムは、医薬品、食品添加物、工業用、試薬など、幅広く利用されています。

工業用途の具体例として、ビスコース人絹、皮革の脱毛、スフの脱硫用、硫化染色助剤、PPS樹脂原料、有機硫化物の製造原料、の浮遊選鉱剤、排水中の重金属の除去などが挙げられます。また、ガラスやパルプの製造にも利用可能です。さらに、乾燥剤や浴用剤のような、身近な製品にも使用されています。

医薬品用途では、主にフェナセチンなどの解熱剤の製造に用いられます。

硫化ナトリウムの性質

硫化ナトリウムには潮解性があり、水によく溶解します。無水物を水に溶かすと発熱します。アルコールに溶けますが、エーテルには溶けません。

硫化ナトリウムの無水物の融点は950°Cです。九水和物は50°Cで融解し、強熱すると分解します。五水和物の融点は100°Cです。

共役酸は水硫化ナトリウム (SH) で、 水溶液の大部分が硫化水素ナトリウムとして存在しています。酸との反応では硫化水素を、燃焼では二酸化硫黄を発生させます。

硫化ナトリウムの構造

硫化ナトリウムの無水物は、立方晶系の逆蛍石型構造を取っています。格子定数は a = 652.6 pmで、密度が1.86g/cm3です。CaF2骨格のFの位置をNa+が占有し、より大きいS2-が Ca2+の位置を占有しています。

九水和物は無色の正方晶系柱状晶であり、式量は240.18g/molで、密度は1.43g/cm3です。五水和物の密度は1.58g/cm3です。

硫化ナトリウムのその他情報

1. 硫化ナトリウムの合成法

水酸化ナトリウムを硫化水素ナトリウムに加えて冷所に放置すると、硫化ナトリウムの九水和物が得られます。水酸化ナトリウム水溶液に硫化水素を飽和させると、硫化水素ナトリウムを生成可能です。

硫化ナトリウムの九水和物を水素気流中で加熱すると、無水物に変わります。計算量の硫黄とナトリウムが直接反応しても無水物を合成可能です。

工業的に硫化ナトリウムは、空気を無水硫酸ナトリウムで遮断し、およそ1,000°Cの反射炉でコークスによって還元すると製造できます。

2. 硫化ナトリウムの反応

硫化ナトリウムは空気中の炭酸ガスや酸素と反応し、チオ硫酸ナトリウム亜硫酸ナトリウム炭酸ナトリウムに変質します。その際、微量の硫化水素を発生させるため、腐卵臭がします。過酸化水素で酸化すると、硫酸ナトリウムを生成可能です。

硫化ナトリウムのアルキル化によって、チオエーテルが得られます。チオール-エン反応 (英: Thiol-ene Reaction) によって、硫化ナトリウムとアルケンが反応して、チオエーテルを合成可能です。ザンドマイヤー反応 (英: Sandmeyer reaction) では、求核剤として使用できます。ニトロ基を選択的にアミンに還元でき、1,3-ジニトロベンゼン誘導体から 3-ニトロアニリンを合成可能です。

硫化ナトリウムの水溶液は硫黄を溶かし、黄色のポリ硫化ナトリウムが生じます。

3. 四硫化ナトリウムの特徴

四硫化ナトリウムの化学式はNa2S4です。黄色の等軸晶系で、融点は275°Cです。水やエタノールによく溶け、水溶液が空気に触れると硫黄が遊離します。皮膚を腐食し、有害です。

四硫化ナトリウムは、分析試薬、脱硫剤、写真用試薬などに使用されます。ほかにも、有機ニトロ化合物の還元剤、パルプの蒸解剤、皮なめし用の脱毛剤、硫化染料の製造、半導体の製造、ナトリウム-硫黄電池の電解質、汚染重金属の硫化剤に利用可能です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1000.html

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