細穴放電加工機

監修:株式会社アステック

細穴放電加工機

細穴放電加工機とは、アーク放電によって生まれる電気エネルギーで金属を加工する放電加工機の一種で、小径の穴を加工するのに特化した工作機械です。

主にパイプ状の電極と呼ばれる工具を使用して、加工物との間で放電現象を発生させて加工するため、工具と加工物が非接触状態で加工を行うという特徴があります。そのため、一般的にドリルなどで穴加工をする際に懸念される、ドリル折れや曲面加工での滑りなどが発生しない点で優れています。

さらに、細穴放電加工機の最大の特徴として、バリの発生が少ないという点があり、バリを取り除く作業を省略することが可能です。

細穴放電加工機の使用用途

以下に、使用例の一部を列挙します。

  • 焼入鋼や超硬合金、タングステン、チタン、モリブデンといった難削材などの材質への加工
  • 滑りが懸念される、曲面や傾斜面に対する加工
  • バリの発生が厳禁とされる加工
  • 1500mmの加工物に対しφ1.0mmの穴を開けるなどの高いL/D (アスペクト比) の穴加工

これらの特徴を生かし、ワイヤー放電加工のスタート穴をはじめ、自動車、医療、航空機、半導体業界などの量産部品加工まで、幅広い業界に貢献しています。

細穴放電加工機の原理

自然現象である雷は、雲と地上との空間に電気を流す「放電現象」を起こします。放電加工機はそれを人工的に発生させ、その爆発的なエネルギーを利用して加工を行います。小さな雷を一秒間に数百から数千回ほど発生させ、放電した点を溶かし、溶けた部分を圧力で表面から吹き飛ばすことを繰り返しながら穴を開けていきます。そのため、どんな難削材でも電気を通す材質であれば加工が可能となります。

常に最適な状態で放電を繰り返すためには、電極と加工物との間隙を適正に維持する技術やノウハウが必要となります。

細穴放電加工機の種類

細穴放電加工機は、主に汎用機と微細機、NC機、ユニットの4つに大別されます。

1. 汎用細穴放電加工機

汎用細穴放電加工機は、基本的な機能を搭載したタイプです。一般的に、使用電極径はφ0.2~3.0mmで、簡単な手動操作で加工を行います。ワイヤー放電加工のスタート穴や自動車業界での量産部品加工など、多くの業界で使用されます。

2. 微細穴放電加工機

微細穴放電加工機は、微細な穴の加工に特化したタイプです。一般的に、φ0.2以下をターゲットとしており、繊細な加工が行えます。医療部品やノズル穴、半導体関係などのより精密な技術が必要とされる業界で活躍します。

3. NC細穴放電加工機・NC微細穴放電加工機

NC細穴放電加工機は、プログラムにより自動で加工を行うことが可能なタイプです。NC化することにより、加工物に複数穴がある場合の位置合わせや、斜め穴の角度設定などの際に起こる人為的作業ミスがなくなり、自動で長時間の加工を行うことも可能になります。さらに、自動電極交換装置や自動ガイド交換装置を利用することにより、電極が消耗した際や使用電極径を変更する際も人の手を必要とせずに交換作業が行えるため省人化、省力化に貢献します。

4. 細穴放電加工ユニット

細穴放電加工ユニットは、加工ヘッドや電源部などの単体のタイプです。ロボットなどに取付けて加工ラインに組み込むことにより、最適な自動加工システムを自在に構築可能であるほか、使用しなくなった機械に取付け再利用することにより、サステナビリティの貢献にも繋がります。その他に、専用機として量産部品加工に特化させるなど、既成サイズにとらわれず自在に機械構築が可能です。

細穴放電加工機の選び方

細穴放電加工機の選び方は、加工物や加工穴、目標のタクトタイムなどによって変化します。

例えば、大きいサイズの加工物を扱う場合は加工テーブルの広い機種を選択し、斜め穴加工を行いたい場合はインデックステーブルを搭載した機種を選択、または傾斜ヘッドを搭載した機種を選択することで、加工物を傾けることなく角度調整が可能になり高効率化が図れます。

また、高い加工精度が必要な場合には、高剛性で高耐久性のある機種を使用することで、長期的な観点から見ても安定した加工が保持されます。

本記事は細穴放電加工機を製造・販売する株式会社アステック様に監修を頂きました。

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