グリシドール

グリシドールとは

グリシドール (C3H6O2) とは、分子内にエポキシドと水酸基の両方を含む有機化合物です。

グリシドールは慣用名ですが、一般的に用いられており、別名としてオキシラニルメタノール、2,3-エポキシ-1-プロパノールなどがあります。

グリシドールの使用用途

グリシドールはエポキシ樹脂、アルキド樹脂の反応性希釈剤などに用いられます。また、分子内に2つ以上のカルボン酸をもつ化合物とグリシドールの水酸基を反応させエステル化することで、簡単に多官能のエポキシ基をもつ化合物の合成ができるため、多品種のエポキシ樹脂前駆体を作る原料としても使用可能です。

そのほか、グリシドールは塩素系有機化合物の安定剤、合成樹脂の反応性希釈剤及び改質剤、染料の染色性改良剤等としても使用されています。

グリシドールの性質

無色から淡黄色の透明の液体で、わずかに粘性があります。-54℃に融点を持ち、沸騰の前に162℃で熱分解し始めます。引火点は72℃で消防法の危険物第4塁第3石油類水溶性に該当します。

脂肪族炭化水素には溶けませんが、水、エタノール、エーテル、ベンゼンなどほとんどの溶媒に溶けます。密度は1.112g/mlです。

グリシドールのその他情報

1. グリシドールの製造方法

グリシドールは、アリルアルコール (CH2=CHCH2OH) を過酢酸または過酸化水素と反応させることで合成することができます。過酢酸 (CH3COOOH) との反応では、グリシドールと酢酸が生成し、過酸化水素 (H2O2) との反応では、グリシドールと水が生成します。

原料となるアリルアルコールはプロピレンから合成されますが、この経路の方法はさまざまです。元々このプロピレン→アリルアルコール→グリシドールの合成経路には、さらにその先にグリセリンという最終目的物がありました。

しかし、グリセリンは天然油脂の加水分解生成物でもあり、近年はバイオディーゼル燃料の需要が増え、バイオディーゼル燃料を製造する際の副生物としてグリセリンが大量に生成され供給過剰になっている状況です。そのため、現在はグリシドールが目的生成物になっています。

2. グリシドールの危険有害性

グリシドールが暴露する経路は、蒸気が口から侵入したり皮膚から吸収される経路があります。この物質に暴露した場合は、眼や上部呼吸器、皮膚、粘膜に対して刺激を感じ、中枢神経系への影響もあります。

許容濃度を超えて暴露した場合は、意識が低下することもあります。また、蒸気を吸入することによって肺水腫や肺炎、長期暴露の場合、皮膚が感作される危険性も高いです。

沸点が高いため、蒸気の暴露や吸入の可能性は低いですが、取扱う際は目や皮膚に付着しないように、保護マスク、保護メガネ、保護手袋、長袖作業衣といった保護具の着用が必要です。

3. グリシドールの安定性及び反応性

化学的危険性としては、強酸、強塩基、塩 (塩化アルミニウム、塩化第二鉄) 、あるいは金属 (亜鉛) と接触すると分解し、火災や爆発を起こすことがあります。また、プラスチックやゴムを腐食することがあります。

4. グリシドールの発がん性

グリシドールは、発がん性物質グループ2A (おそらく発がん性がある) に分類されています。以前、グリシドール脂肪酸エステルを主成分とする食用油が、脂肪がつきにくい食用油として特定保健用食品で販売されていました。

しかし、グリシドール脂肪酸エステルが体内で分解されると、発がん性物質とされるグリシドールを許容できないレベルの摂取と同義になりかねないことから、メーカーの自主回収、販売自粛に至ったことがありました。

参考文献
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/11/dl/s1115-11k1.pdf
https://www.kao.com/jp/nutrition/about-dag/ge/ge02/

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