フッ化アンモニウム

フッ化アンモニウムとは

フッ化アンモニウム (英: Ammonium Fluoride) とは、白色結晶性粉末のイオン化合物です。

化学式はFH4Nで表され、分子量は37.04です。CAS番号は、12125-01-8で登録されています。

フッ化アンモニウムの使用用途

1. エッチング剤

フッ化アンモニウムはガラスを溶かすため、古くからガラスのエッチング加工に利用されてきました。ガラス用のエッチング剤としての需要は限定的でしたが、フッ化アンモニウムはシリコン系素材も溶かすため、半導体材料のエッチング加工にも使用されます。

2. 洗剤

フッ化アンモニウムがシリコン樹脂を溶かす性質は、洗剤にも応用されています。水垢であるシリカスケールの洗浄は、通常困難とされていますが、フッ化アンモニウムにより除去可能です。

そのため、シリカスケール洗浄に対応した一部の洗剤には、人体への影響を考慮して微量のフッ化アンモニウムが配合されています。

3. その他

醸造行程に用いる器具の消毒や醸造に用いる木材の防腐剤、金属の表面処理剤、織物の印刷や染色、防虫剤、化学分析用試薬としても使用されます。

フッ化アンモニウムの性質

融点は238°Cで、潮解性を持つ固体です。刺激臭を持つ化合物で、水に極めて溶けやすく、エタノールやアセトンにはあまり溶けません。ガラスを侵食し、アルミニウムを腐食します。

酸性・アルカリ性の程度を表すpHは6.0〜7.5 (100g/L、25℃) で酸性を示します。

フッ化アンモニウムのその他情報

1. フッ化アンモニウムの製造法

実験室で大量に合成する場合は、1モルのアンモニア水と1モルの二フッ化アンモニウムを混合することで、容易に生成可能です。

工業的には、氷冷した40%フッ化水素酸にアンモニアガスを通して析出させることで合成できます。また、塩化アンモニウムフッ化ナトリウムを加熱、もしくは硫酸アンモニウムとフッ化カルシウムを加熱し、昇華させてフッ化アンモニウムを単離する方法があります。

2. 法規情報

フッ化アンモニウムは、以下の国内法令に該当します。

  • 毒物及び劇物取締法: 劇物 包装等級3
  • 労働安全衛生法: 名称等を表示すべき危険物及び有害物 (法57条、施行令第18条) 、名称等を通知すべき危険物及び有害物 (法第57条の2、施行令第18条の2別表第9) No. 487
  • 危険物船舶運送及び貯蔵規則: 毒物類・毒物 (危規則第3条危険物告示別表第1)
  • 航空法: 毒物類・毒物 (施行規則第194条危険物告示別表第1)
  • 化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) : 第1種指定化学物質 (法第2条第2項、施行令第1条別表第1)
  • 改正化学物質排出管理促進法: 第1種指定化学物質 (法第2条第2項、施行令第1条別表第1)
  • 水質汚濁防止法: 有害物質 (法第2条、施行令第2条、排水基準を定める省令第1条)
  • 大気汚染防止法: 有害大気汚染物質
  • 土壌汚染対策法: 特定有害物質

3. 取り扱い及び保管上の注意

取り扱う場合の対策
強酸化剤との接触は避けてください。個人用保護具を着用し、局所排気装置内で使用してください。

火災の場合
フッ化アンモニウムは、不燃性の固体ですが、熱分解により刺激性のある有毒なガスや蒸気を放出することがあります。水噴霧や炭酸ガス、粉末消火剤、泡消火剤、乾燥砂などを使用して消火します。棒状放水は行わないでください。

吸入した場合
万が一吸引してしまった場合は、外など新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休ませます。咳や咽頭痛を感じる時は、医師に連絡してください。

皮膚に付着した場合
使用時は、必ず白衣や作業着などの保護衣や保護手袋を着用し、皮膚に付着しないようにしてください。万が一皮膚に付着した場合は、水と石鹸でしっかり洗います。

衣類に付着した場合は、汚染された衣類をすべて脱ぎます。発赤などが続く時は、医師に連絡してください。

眼に入った場合
眼に対する重篤な損傷性や強い眼刺激性があります。必ず保護メガネまたはゴーグルを着用して使用してください。

眼に入った場合は、水でしっかり洗浄します。コンタクトレンズを着用している場合は外します。眼の発赤、痛みを引き起こすおそれがあります。直ちに、医師の診断を受けてください。

保管する場合
ガラスを侵食する作用があるため、ポリプロピレンまたはポリエチレン製容器に入れて密閉します。換気が良好な冷所で、直射日光を避け、施錠して保管してください。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/12125-01-8.html
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0101-0309JGHEJP.pdf
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Ammonium-fluoride

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です