フッ化アルミニウムとは
フッ化アルミニウム (英: Aluminium fluoride) とは、化学式AlF3で表されるイオン化合物です。
アルミニウム1原子に対し3つのフッ素原子が結合していることから、三フッ化アルミニウムの別名があります。CAS登録番号は、7784-18-1です。
フッ化アルミニウムは、労働安全衛生法で名称等を表示・通知すべき有害物質に指定されています。
フッ化アルミニウムの使用用途
フッ化アルミニウムの主な使用用途は、 非鉄金属の製錬用融剤、陶磁器の釉薬、溶接棒フラックス、アルミナインジング用、光学レンズ原料などです。
また、アルミニウムを電解製錬する際に添加剤として用いられています。具体的には、アルミナの融点を下げ、導電性を高める効果があります。
また、フッ化アルミニウムは紫外線を透過させる性質があるため、紫外線領域に対応したカメラのレンズの原料としても用いられている物質です。カメラ・光学分野では、デジタル一眼レフカメラ向け光学用フッ化物レンズ原料、シンチレータ等の光学用単結晶原料や光ファイバー母材などの用途もあります。
フッ化アルミニウムの性質
図1. フッ化アルミニウムの基本情報
フッ化アルミニウムは、式量83.98、融点1,291℃、沸点1,272℃であり、常温では無臭の白色固体です。昇華性を示します。密度は3.07g/mL、水への溶解度は0.559g/100 mL (25℃) です。酸塩基にはわずかに溶解しますが、アルコールやアセトンには溶けません。不燃性の物質です。
フッ化アルミニウムは、ナトリウム及びカリウムとの接触で激しく反応し、酸及び酸のヒュームとの接触により、毒性の高いヒュームを生じることが知られています。また、空気、湿度、及び活性水素を含む化合物とも激しく反応する物質です。加熱によってフッ化水素ガスが発生します。
フッ化アルミニウムの種類
フッ化アルミニウムは、主に研究開発用試薬製品や工業用材料として販売されています。研究開発用試薬製品では、10g、50g、500gなどの容量があり、実験室で取り扱いやすい小容量が中心です。
工業用には、光学膜材料やフッ化物レンズ製造、アルミニウム電解製錬用溶剤などの用途で主に提供されています。容量は工場などで取り扱いやすい20kgからの大型容量が中心です。
フッ化アルミニウムのその他情報
1. フッ化アルミニウムの合成
図2. フッ化アルミニウムの合成方法
フッ化アルミニウムは酸化アルミニウムとフッ化水素を混合し、約700℃に加熱することで合成が可能です。また、実験室的製法では、水酸化アルミニウムまたは金属アルミニウムをフッ化水素と反応させることでも得られます。
また、ヘキサフルオロアルミン酸アンモニウムを窒素気流中で赤熱するまで加熱すると熱分解によってフッ化アルミニウムが生成します。
2. フッ化アルミニウムの結晶構造
図3. フッ化アルミニウムの結晶構造
フッ化アルミニウムの結晶構造は、アルミニウムの周りが歪んだ八面体構造となっています。この構造は結晶構造は酸化レニウム (VI) と類似したものです。この構造のために、他のハロゲン類縁体と異なり耐火性を持ちます。
3. フッ化アルミニウムの水和物
フッ化アルミニウムの水和物はAlF3·xH2Oの構造で表され、複数種類の物質が報告されています。具体的にはx=1の一水和物、三水和物 (x=3) 、六水和物 (x=6) 、九水和物 (x=9) などです。
4. フッ化アルミニウムの安全性情報
フッ化アルミニウムは、人体への有害性が指摘されている物質です。具体的な危険性としては、下記のような症状が挙げられます。
- 経口摂取によって有毒
- 強い眼刺激
- 呼吸器への刺激のおそれ
- 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
- 長期にわたる、又は反復ばく露による骨の障害
そのため、労働安全衛生法では、「名称等を表示すべき危険有害物」「リスクアセスメントを実施すべき危険有害物」に指定されています。その他、水道法、下水道法、航空法、水質汚濁防止法などでも有害物質として指定されている物質です。法令を遵守して正しく取り扱い、正しい方法で廃棄することが必要です。
参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7784-18-1.html