硫化銅

硫化銅とは

硫化銅とは、硫黄との無機化合物です。

銅や硫黄の酸化数や組成の違いによって、硫化銅(I)や硫化銅(II)などが知られています。天然で硫化銅(I)は輝銅鉱として、硫化銅(II)はラン銅鉱として産出されます。

銅が含まれているため急性毒性により、法律で「医薬用外劇物」とされ、取り扱いには注意が必要です。

硫化銅の使用用途

硫化銅は金属銅の原料として用いられています。

硫化銅(I)は触媒、蛍光塗料、硫黄や銅の製造、帯電防止繊維の製造などに用いられています。

硫化銅(II)は混合触媒、船底塗料などに使用可能です。アニリンブラックの顕色剤のような繊維の染色にも利用されます。

硫化銅の性質

硫化銅(I)は鉄灰色光沢ある結晶で、電気の良導体です。水や塩酸には溶けませんが、アンモニア水や温希硝酸には溶けます。空気中で加熱して、二酸化硫黄が発生して酸化銅(II)に変わります。

硫化銅(II)は黒色の粉末または青黒色の結晶です。硫化銅(I)より導電性が大きいです。水中ではコロイド状に分散しやすく、希無機酸にほとんど溶けません。エタノールやアルカリに不溶です。シアン化カリウム水溶液、多硫化アルカリ水溶液、熱硝酸にはよく溶けます。

硫化銅の構造

硫化銅(I)は化学式はCu2Sで、式量は159.16g/molです。硫化第一銅とも呼ばれ、硫化銅(I)にはα、βの2形があります。α形は黒色の立方晶系で、91°C以上で安定しています。密度は5.79g/cm3で、融点は1,130°Cです。β形は黒色の斜方晶系で、密度は5.6g/cm3で、融点は1,100°Cです。

硫化銅(II)は硫化第二銅とも呼ばれ、化学式はCuSと表されます。式量は95.61g/molで、密度は4.64g/cm3です。六方晶系ですが、103°Cで単斜晶系に変化します。銅原子の3分の1に硫黄原子3つが三角形に配位しており、Cu-S原子間距離は2.19Åです。残りの銅原子には硫黄原子が四面体に配位しており、Cu-S原子間距離は2.32Åです。220°Cで分解し、硫化銅(I)になります。

硫化銅の種類

Cu2SとCuS以外にも、多種多様な硫化銅が知られています。硫化銅の化学式はCuxSyです。

例えば、Cu9S8はヤロー鉱 (英: yarrowite) に、Cu39S28はスピオコープ鉱 (英: spionkopite) に、Cu8S5はゲール鉱 (英: geerite) に、Cu7S4は阿仁鉱 (英: anilite) に含まれます。Cu9S5はダイジェナイト (英: digenite) に、Cu58S32はロクスビー鉱 (英: roxbyite) に、Cu31S16はデュルレ鉱 (英: djurleite) 、CuS2はビラマニン鉱 (英: Villamaninite) に存在します。

硫化銅のその他情報

1. 硫化銅の合成法

過剰の硫黄と銅を熱すると硫化銅(I)が得られます。水素気流中で硫黄と硫化銅(II)を加熱しても、硫化銅(I)が生じます。

黄銅鉱 (CuFeS2) を焙焼しても、硫化銅(I)を生成可能です。得られた混合物からスラグを除去し、空気中の酸素によって処理すれば、金属銅が得られます。

2. 硫化銅の反応

硫化銅(I)が希硝酸に溶解すると、硫化銅(II)と硝酸銅(II)になります。熱硝酸では硝酸銅(II)とともに硫黄や酸化二窒素が生成し、濃硫酸と反応すると、硫酸銅(II)、硫化銅(II)、二酸化硫黄が得られます。

銅(II)塩水溶液に硫化水素を通すと、硫化銅(II)を合成可能です。熱硝酸に溶解すると、硝酸銅(II)、酸化二窒素、硫黄が生じます。乾燥した空気中では安定していますが、湿った空気中では酸素によって、少しずつ酸化して硫酸銅(II)が生成します。分析化学では、銅(II)イオンと硫化水素の反応によって硫化銅(II)の黒色沈殿を与えるため、銅(II)イオンを検出可能です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です