塩化チタンとは
塩化チタン (英: Titanium chloride) とは、組成の違いにより三種類の化合物が知られるチタンの塩化物です。
酸化数IIの塩化チタン (II) は、化学式TiCl2で表され、分子量は118.77、CAS登録番号は10049-06-6の暗赤褐色の粉末です。水で容易に分解し、空気中で加熱すると発火します。
酸化数IIIの塩化チタン (III) は、化学式TiCl3で表され、分子量は154.23、CAS登録番号は7705-07-9の潮解性のある紫色の結晶です。塩化チタンでは最も一般的なもので、ポリオレフィン製造で重要な触媒にもなります。
酸化数IVの塩化チタン (IV) は、化学式TiCl4で表され、分子量は189.71、CAS登録番号は7550-45-0の無色から淡黄色の液体です。空気中の水分と反応して白煙を生じます。
塩化チタンの性質
塩化チタン (II) の融点は1,035℃、沸点は1,500℃、密度は3.13g/cm3です。強力な還元剤で、酸素との親和性が高く、水と不可逆的に反応してH2を生成します。反応性が高すぎるため、あまり研究されていません。
塩化チタン (III) の融点は440℃ (分解)、密度は2.64g/cm3です。各チタン原子は1つのd電子を持ち、その誘導体を常磁性にするので、磁場に引き付けられる性質を持ちます。
塩化チタン (IV) の融点は-24℃、沸点は136℃、密度は1.73g/cm3です。トルエンやクロロカーボンに溶解します。常温で液体であるレアメタルのハロゲン化物の1つです。この特性は、TiCl4の分子が弱く自己会合するという事実を反映しています。
塩化チタンの使用用途
塩化チタン (II) は、アルデヒドまたはケトンに亜鉛の存在下で反応させると、ピナコールカップリングが起こり、メソ体の1,2-ジオールが選択的に得られるという、有機合成におけるの炭素-炭素結合生成の手法として使用されています。
塩化チタン (III) は、ルイス酸として、オレフィンの重合に用いる触媒であるチーグラー・ナッタ触媒の原料として利用されています。
塩化チタン (IV) は、顔料や化粧品の原料として利用される酸化チタン (IV) の主原料として利用可能です。また、有機化学ではルイス酸として、塩化チタン (III) と同様にオレフィンの重合に用いる触媒であるチーグラー・ナッタ触媒の原料として利用されています。空気中の水分と反応することで、白煙を生じるという特性があるため、曲技飛行でのスモークや特撮で煙の演出に使用されることもあります。
塩化チタンのその他情報
1. 塩化チタンの製造法
塩化チタン (II) は、TiCl4を水素と混合した状態で、低無電極放電で還元することで得られます。
塩化チタン (III) は、過剰の存在下、TiCl4を650℃まで高温に加熱し、還元することによって得ることができます。塩化チタン (IV) は、チタン鉄鉱もしくはルチル鉱石をコークスと塩素の存在下で、900℃に加熱して得られた粗塩化チタン (IV) を、さらに蒸留精製して得られます。
2. 法規情報
塩化チタン (II) は、主要な法規制の中で消防法において「第2類:可燃性固体, 金属粉末, 危険等級II, 第一種可燃性固体」に該当します。
塩化チタン (III) は、毒物及び劇物取締法において「劇物」、労働安全衛生法では「特定化学物質第3類物質」「名称等を表示・通知すべき危険物及び有害物」に指定されています。
塩化チタン (IV) は、毒物及び劇物取締法、消防法、化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) など、主要な法規制のいずれにも該当していません。
3. 取り扱い及び保管上の注意
取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。
- 容器を密栓し、乾燥した冷暗所に保管する。
- 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
- 水や湿気と接すると反応するため、湿気を避ける。
- 塩化チタン (II) は自然発火性があるため、取り扱いには十分注意する。
- 使用時は保護手袋、保護眼鏡、保護衣、保護面を着用する。
- 取扱い後はよく手を洗浄する。
- 皮膚に付着した場合は、速やかに水で洗い流す。
- 眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗う。
参考文献
https://www.sigmaaldrich.com/JP/ja/sds/aldrich/451738
https://cica-web.kanto.co.jp/CicaWeb/msds/J_40172.pdf
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0120-1259JGHEJP.pdf