乳酸ナトリウム

乳酸ナトリウムとは

乳酸ナトリウムとは、乳酸のナトリウム塩です。

分子式で表すと、CH3CH (OH) COONaです。無臭またはわずかに特有の臭いを有します。乳酸ナトリウムは、皮膚上に存在する天然保湿因子の1成分であり、肌に対して保湿作用を有します。

また、酸性またはアルカリ性のpH値を調整するpH緩衝作用も有します。化粧品の配合成分、食品添加物、医薬品などの用途で広く使用される物質です。乳酸ナトリウムは、例えばコーンスターチや砂糖大根などを原料として発酵させて得られた乳酸を中和して製造されます。

乳酸ナトリウムの使用用途

乳酸ナトリウムは、化粧品、食品、および医薬品などの各分野でさまざまな用途で利用されます。

1. 化粧品

化粧品用途では、保湿性およびpH緩衝性の高さを利用して、化粧水などのスキンケア化粧品、ボディローションなどのボディケア用品で使用されます。乳酸ナトリウムは、保湿性以外に穏やかな角質剥離効果も有するため、皮膚の最表面にある角質層のターンオーバーを促進できます。

なお、ターンオーバーとは、古い角質層が剥がれ落ちて新しい角質層に置き換わる肌の新陳代謝です。

2. 食品

食品用途では、食品添加物として用いられ、例えば酸味をコントロールする酸味料、食品のpHをコントロールするpH調整剤、調味料、防腐剤などの用途で使用されています。

3. 医療用医薬品

医療用医薬品用途では、非経口製剤、局所製剤、または輸液などに使用されています。

乳酸ナトリウムの性質

乳酸ナトリウムは、-COOHと-OHの両方を有するため、有機酸および水酸基の両方の性質を有します。乳酸は有機酸であるため酸性物質ですが、ナトリウムで中和された乳酸ナトリウムはほぼ中性を呈します。

したがって、強酸性でもなく強アルカリ性でもなく、pHの点では人体に対して安全性が高い物質です。

乳酸ナトリウムの構造

乳酸ナトリウムは、有機酸の1種である乳酸がナトリウム塩となったイオン性化合物です。ナトリウム塩になる前の乳酸は、有機酸のうちカルボン酸の1種であり、カルボキシ基 (-COOH) およびヒドロキシ基 (-OH) を含みます。

すなわち、乳酸ナトリウムは、-COOHと-OHの両方を有するカルボン酸のナトリウム塩です。カルボキシ基 (-COOH) およびヒドロキシ基 (-OH) の両方を分子中に有する有機酸は、ヒドロキシ酸 (またはヒドロキシカルボン酸) とも称されます。

なお、-COOHおよび-OHは合成反応によって互いに結合できます。具体的には、カルボキシ基 (-COOH) およびヒドロキシ基 (-OH) がエステル結合してつながったポリマーとして、ポリエステルと称されるプラスチックが有名です。乳酸は分子中に-COOHと-OHの両方を有するため、乳酸同士をエステル結合させることによりポリマーに変えることが可能です。

乳酸をエステル結合によってつなげたポリマーは、ポリ乳酸といわれ、生分解性プラスチックとして注目されています。

乳酸ナトリウムのその他情報

乳酸ナトリウムを含むpH緩衝液

食品や化粧品などでは、製造工程中や使用中にpH変動を抑える必要があります。品質管理の点でも、pHを常にほぼ一定に保つ必要があります。一般的に、pH緩衝作用を有するpH緩衝液を作るためには、弱酸と弱酸のナトリウム塩を混合します。

弱酸の例としては、乳酸の他に例えば酢酸、リン酸、クエン酸などが挙げられます。pH緩衝液の具体例は以下の通りです。

  • 乳酸緩衝液 (乳酸 + 乳酸ナトリウム)
  • 酢酸緩衝液 (酢酸 + 酢酸ナトリウム)
  • リン酸緩衝液 (リン酸 + リン酸ナトリウム)
  • クエン酸緩衝液 (クエン酸 + クエン酸ナトリウム)

乳酸ナトリウムは、乳酸と混合されることでpH緩衝液となります。例えば食品製造工程中に他の添加剤によってpHが変動する状況になっても、乳酸ナトリウムを含むpH緩衝液が存在すればpHの急激な変動を抑制可能です。

乳酸ナトリウムを含むpH緩衝液は、マイルドな酸味であるため食品の味への影響も小さいといわれています。

参考文献
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00055482

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