テルル

テルルとは

テルルとは、第16族元素の1つで、原子番号が52の元素です。

非金属元素であり、元素記号はTeと表されます。原子量は127.60です。105~132の質量数の同位体が知られています。その中で8種類が安定で、それ以外は放射性同位体です。

人体に有毒で「テルル及びその化合物」は、PRTR法・第二種指定化学物質で、作業環境クラス2です。

テルルの使用用途

金属テルルは、加工性や耐硫酸性の向上のために、耐酸性合金や鋼の合金添加剤に用いられます。テルル化合物は、特殊な着色剤 (ガラスや陶磁器の着色) 、酸化剤、熱電素子に使用可能です。

特に、電子冷凍装置の熱電対として多く使用されます。また、乾式コピー用感光ドラムに高純度の金属間化合物 (Se-Te) が使用されており、回収・再使用率も高いです。

さらに、金属テルルを鉄鋼に0.01~1.0%添加すると、快削性、強靭性、耐蝕性が改善されます。そのため、快削鋼 (切削性に優れた鋼) は、自動車部品や精密機械部品などに使用されています。

テルルの性質

にんにく臭がするテルル化合物が多いですが、テルル単体は無臭です。金属テルルの融点は449.51°C、沸点は988°Cであり、比重は6.232です。

化学的性質は、硫黄やセレンに似ています。空気中で青緑炎を上げて燃えて、二酸化テルル (TeO2) が生じます。酸化力が強い酸に溶解し、ハロゲンと激しく反応してハロゲン化物を生成可能です。

テルルは弱酸性酸化物であり、酸化数は6、5、4、2、-2を取ります。

テルルの構造

金属テルルは銀白色の結晶で、六方晶構造を取っています。電子配置は、[Kr] 4d10 5s2 5p4です。天然には、元素鉱物としてテルル単体やテルル金銀鉱物のほか、テルル銅鉱物やテルル鉛鉱物として、数多く存在します。

テルルのその他情報

1. テルルの産出

テルルの環境中の存在量は少ないです。ただし、単体の自然テルルとして、極まれに産出します。一般的にはテルル化物として硫化鉱中に少量混在し、金や銀のテルル化物としてわずかに存在します。

テルルの埋蔵量が多い国は、上位からアメリカ合衆国、ペルー、カナダの順です。年間生産量が多い国は、上位からカナダ、ベルギー、アメリカ合衆国、ペルー、日本であり、上位5ヶ国だけで生産量の82.3%に達します。

日本国内では、静岡県の河津鉱山や北海道の手稲鉱山で、マックアルパイン石や手稲石からテルル鉱物が得られます。工業的には、や鉛の電解精錬工場からのアノード泥が主原料です。ソーダ灰などと熱処理して可溶性のテルル酸塩とした後、中和して亜テルル酸 (TeO2・nH2O) として分離します。

2. テルルの同位体

テルルの同位体は、30種類知られています。天然に存在する128Teや130Teは放射性同位体であり、二重ベータ崩壊を起こします。128Teの半減期は2.2×1024年であり、知られている放射性同位体の中で最も長いです。

テルルはアルファ崩壊が起こる元素の中で、最も軽いです。110Teの0.003%がアルファ崩壊し、106Snに変わり、それ以外は電子捕獲によって110Sbになります。質量数が109以下のテルルの同位体も、アルファ崩壊を起こします。

安定同位体の130Teの中性子捕獲によって、人工放射性核種の131Teを生成可能です。131Iを人工的に得るときに使用されています。

3. テルルの毒性

テルル単体やテルル化合物には、毒性があります。テルルは化合物を作って環境中に露出し、体内にも入りやすいです。体内でテルルは代謝され、生じたジメチルテルリド (英: dimethyltelluride) はニンニクに似た悪臭を持っています。

テルル化合物によって、鉱山労働者などに症状が多く報告されています。その場合には、暴露から遠ざけると改善可能です。具体的には、食欲不振、口渇、頭痛、悪心、傾眠、発汗停止、呼吸困難などの症状が報告されています。それ以外にも、体に青黒い斑点が現れ、発疹を生じるほか、口に金属味を感じます。

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