二酸化窒素

二酸化窒素とは

二酸化窒素とは、窒素の酸化物で刺激臭のある気体です。

物質が高温で燃えるときに発生する一酸化窒素 (NO) が、大気中で酸化すると、二酸化窒素は生成されます。二酸化窒素の発生源は、工業用および家庭用ボイラーや自動車エンジンなどの燃焼過程で排出される一酸化窒素です。

特に、高圧で燃料を燃焼させる自動車エンジンが原因で、なかでもディーゼルエンジンは高濃度の排出源です。また、呼吸器など人の健康にも影響があり、二酸化窒素は代表的な大気汚染物質として知られています。

二酸化窒素の使用用途

二酸化窒素の使用用途として、分析化学の試料溶解剤や分解剤が挙げられます。また、硝酸等の窒素化合物の原料および合成中間体や、漂白剤、触媒、有機化合物のニトロ化剤にも用いられます。さらに、酸化剤としての爆薬の原料や重合禁止剤にも使用可能です。

発煙硝酸などのロケット燃料の酸化剤としても、二酸化窒素は利用されます。実際に、ロケットのタイタン、ジェミニ計画の打ち上げ、スペースシャトルのサイドスラスター、惑星に送った無人宇宙探査機などで使用されました。

二酸化窒素の性質

二酸化窒素は、21.2°C以上では赤褐色の気体です。21.2°C以下では、黄色の液体になります。−11.2°C以下になると、無色の四酸化二窒素 (N2O4) に変化します。四酸化二窒素は、二酸化窒素の二量体です。

二酸化窒素の持つ赤褐色は、400〜500nmの青色光を吸収するためです。400nmよりも短波長の光によって光分解を起こし、原子状酸素であるOとNOが形成されます。とくに大気中では、O原子がO2へ付加してオゾンが生じます。二酸化窒素は不対電子を1個有し、常磁性です。

二酸化窒素の構造

二酸化窒素の化学式は、NO2で表されます。C2v対称性を有する曲がった分子です。窒素原子と酸素原子の結合長は119.7pmであり、1と2の間の結合次数とも一致しています。二酸化窒素の結合角と結合長は、対応するカチオン (NO2+) とアニオン (NO2) の中間の値を取っています。

二酸化窒素のその他情報

1. 二酸化窒素の合成法

工業的に二酸化窒素は、アンモニアの触媒酸化で生じる一酸化窒素に、空気 (酸素) を混ぜて反応させることにより製造されます。銀や銅を濃硝酸と反応させても、二酸化窒素を生成可能です。

ただし、二酸化窒素は、さまざまな物質の燃焼や製造の過程で、意図せず副生成物として発生しています。例えば、燃焼により生じた一酸化窒素は、大気中で光反応を起こし酸化されて、二酸化窒素が生成します。

生物活動が原因で自然発生する場合もあり、地球規模では生物活動が発生源の大部分です。都市では移動発生源や固定発生源を含めて、二酸化窒素が高密度で生じており、大気汚染の要因の1つになっています。

2. 二酸化窒素の反応

二酸化窒素と四酸化二窒素は、平衡状態です。ルシャトリエの原理より平衡は、高温ほど二酸化窒素側へ移動します。液体窒素を用いて急速に冷やした場合には、二酸化窒素が固体として生成しますが、固体中には四酸化二窒素が存在しています。

また、水との反応で硝酸や亜硝酸が生じ、この反応が酸性雨の原因です。さらに、二酸化窒素と二酸化硫黄が反応すると、一酸化窒素と三酸化硫黄が得られます。

3. 二酸化窒素による環境汚染

二酸化窒素は、大気汚染防止法で特定物質に指定されています。1970年代頃までは、自動車保有台数の増加に伴って、二酸化窒素による汚染が進んでいました。その後、排出ガス規制の効果もあり、年平均値は長期的に横ばいの状況が続いています。幹線道路の沿線を中心に、環境基準が達成できていない状況です。

ヒトに対して、主に呼吸器系統の健康影響が報告されています。1日の二酸化窒素の平均値が、0.04〜0.06ppmの範囲内かそれ以下であるべきと、環境基準は定められています。

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