チオグリコール酸

チオグリコール酸とは

チオグリコール酸 (Thioglycolic acid、TGA) とは、有機硫黄化合物であり、分子式C2H4O2Sを持つ物質です。

この無色の液体は強い刺激臭を持ち、水や極性有機溶媒に溶解しやすい性質があります。チオグリコール酸は「メルカプト酢酸」「2-メルカプト酢酸」あるいは「チオバン酸」とも呼ばれている、チオール基とカルボン酸基を含む化合物であり、多くの化学反応や工業的応用に利用されています。

融点-16.5℃、沸点96℃で、常温において強い臭気と刺激臭のある淡黄色から無色の液体です。加熱により有毒なSOxガスを発生します。また、腐食性が強いことから冷暗所にて密栓して保管します。

チオグリコール酸の製造は、主にモノクロル酢酸、あるいはその塩と硫化水素カリウム、または硫化水素塩との反応により行われています。

チオグリコール酸の使用用途

チオグリコール酸は、ポリマー改質、ゴム薬品 (安定剤) 、写真薬品、医薬中間体、農薬中間体など幅広く利用されています。主な使用用途としては、次のようなものがあります。

1. パーマ液や脱毛剤

チオグリコール酸は、毛髪のケラチンタンパク質のジスルフィド結合を切断しする作用を有しています。これにより、髪の形状を変えることができるため、パーマ液として広く用いられています。 

また、同様の還元作用によって、、皮革製品の脱毛、あるいは脱毛剤の原料にも用いられています。

2. 合成樹脂の製造

エステル化や重合反応を通じて、合成樹脂の製造に利用されます。チオグリコール酸を利用した合成樹脂は、自動車、航空、電子機器、繊維、建築材料など、幅広い分野で応用されています。

3. 錯体化剤や還元剤

チオグリコール酸は、金属イオンと安定な錯体を形成する特性を有しており、分析化学 (キレート滴定や鉄の比色分析など) や金属の精錬・回収に使用されます。また、還元剤としても利用されることがあります。

チオグリコール酸の性質

チオグリコール酸は、水や極性有機溶媒 (アセトン、エタノール、ジメチルフォルアミドなど) に溶解しやすい性質があります。この高い溶解性は、カルボン酸基が水素結合を形成することによるものです。

チオグリコール酸のチオール基は、酸化還元反応に対して高い反応性を示します。チオール基は、還元剤との反応のジスルフィド結合を切断し、酸化剤との反応でジスルフィド結合を形成します。これにより、チオール基を再生することも可能です。

この酸化還元反応性は、チオグリコール酸が化学反応や工業的応用で活用される一因です。チオグリコール酸は、金属イオンと錯体を形成する能力があります。分子中のチオール基が金属イオンが結合し、安定な錯体を生成するため、金属の精錬や回収、分析化学などの分野で利用されています。

チオグリコール酸の構造

チオグリコール酸の化学構造は、チオール基とカルボン酸基という2つの官能基を持つことが特徴です。この構造により、チオグリコール酸は多くの化学反応に関与することが可能です。

チオグリコール酸のチオール基は金属イオンと結合し、錯体を形成する能力があります。これらの特性により、チオグリコール酸は錯体化剤や還元剤として使用されることがあります。

カルボン酸基は水素結合を形成することができるため、チオグリコール酸の溶解性に影響を与えています。

チオグリコール酸のその他情報

チオグリコール酸の製造方法

チオグリコール酸の製造方法には、いくつかの代表的な方法があります。以下に、主な製造方法を詳しく説明します。

1. クロロ酢酸と硫化水素の反応
クロロ酢酸と硫化水素を反応させることで、チオグリコール酸を合成できます。この反応は、クロロ酢酸のクロロ基が硫化水素の硫黄原子と置換される過程で進行します。反応条件は、加熱下、水溶液中で行われることが一般的です。 

2. グリコール酸と硫黄の反応
グリコール酸と硫黄の反応によってチオグリコール酸を合成する方法もあります。一般的に加熱下、酸性条件で用いられ、グリコール酸の水酸基が硫黄原子によって置換される過程でチオグリコール酸が生成します。

3. グリコール酸エステルと硫化水素の反応
この方法では、グリコール酸エステルと硫化水素を反応させます。グリコール酸エステルの水酸基基が硫化水素の硫黄原子によって置換されことで、チオグリコール酸エステルが得生成し、これを加水分解することでチオグリコール酸が得られます。

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