チオアセトアミド

チオアセトアミドとは

チオアセトアミド (英: Thioacetamide) とは、分子式C2H5NSで表される、チオアミドの一種の有機化合物です。

別名には、「アセトチオアミド」「エタンチオアミド」「アセトイミドチオ酸」などがあります。CAS登録番号は、62-55-5です。チオアセトアミド水溶液と多くの金属カチオンはそれぞれ対応する硫化物を作り、古典的定性分析で使われます。人体に対して有害な物質です。

チオアセトアミドの使用用途

チオアセトアミドの主な用途は、染料、医薬品および医薬品中間体、合成中間体、写真・印刷薬品です。例えば、カドミウムイオンの溶液にチオアセトアミド水溶液を加えた後に加温することで、硫化カドミウムが得られます。この硫化カドミウムは、黄色顔料であるカドミウムイエローの主成分です。

このほか、チオアセトアミドは、古典的定性分析における硫化水素の供給源であり、金属硫化物の沈殿試薬 (均質沈殿法) 、金属イオンの系統分析の分属試薬に使用されています。

チオアセトアミドの性質

チオアセトアミドの基本情報

図1. チオアセトアミドの基本情報

チオアセトアミドは、分子量75.16、融点113〜116℃であり、常温においては無色から黄色の結晶もしくは結晶性粉末です。メルカプタン様臭気を呈します。水及びエタノールに溶けやすく、アセトンに溶けにくい物質です。水への溶解度は16.3g/100ml水です。

分子のC2NH2Sの部分は平面構造であり、C-SとC-N間の距離は1.713 と 1.324 Åです。これは両方が多重結合、すなわちπ共役系であることを示しています。

チオアセトアミドの種類

チオアセトアミドは、通常研究開発用試薬製品として一般に販売されている物質です。容量の種類には、25g、100g、500gなどがあり、常温で取り扱われる場合も、冷蔵で取り扱われる場合もある試薬製品です。

有機合成原料などの他、疾患モデル動物作製用の試薬としても用いられることがあり、炎症・免疫疾患モデル作製に有用です。人体に有害な物質であるため、正しく取り扱うことが必要です。また、試薬製品は研究開発用途以外での使用を行うことはできません。

チオアセトアミドのその他情報

1. チオアセトアミドの合成

チオアセトアミドの合成

図2. チオアセトアミドの合成

チオアセトアミドは、アセトアミドと五硫化二リンの合成により得られます。

2. チオアセトアミドの化学反応

チオアセトアミドと金属イオンの反応

図3. チオアセトアミドと金属イオンの反応

光によって変質する可能性があり、燃焼すると分解して、有毒な蒸気 (窒素酸化物NOx、硫黄酸化物SOxなど) を生じます。チオアセトアミド水溶液と多くの金属カチオンはそれぞれ対応する硫化物を作ることから、チオアセトアミドは定性分析においてしばしば用いられる物質です。

具体的には、ニッケル、鉛、カドミウム、水銀や、ヒ素、アンチモン、ビスマス、銀、銅 (I) などの反応で硫化物が沈殿します。また、水溶液にして基質と反応させた後、加水分解により硫化物を生じることから、有機、無機合成において使用されています。

3.  チオアセトアミドの有害性

チオアセトアミドについて、指摘されている有害性は下記の通りです。

  • 飲み込むと有害
  • 遺伝性疾患の可能性
  • 発がんの可能性
  • 肝臓の障害のおそれ
  • 長期にわたる又は反復ばく露による肝臓の障害

取り扱いの際は適切な保護具を身に着け、粉じん、蒸気、スプレーを吸入しないように気をつけることが必要です。皮膚や眼も接触しないようにします。作業場は局所排気装置を備えていることが望ましいです。

4. チオアセトアミドの保管情報

チオアセトアミドは、法規制を受ける化学物質ではありません。ただし、前述の通り人体に対する有害性が報告されているため、適切な管理が必要です。

常温で保管されることもありますが、容器は遮光し、冷蔵庫 (2~10°C) に密閉して保管するのがより安全です。また、強酸化剤とは反応するため、混触を避ける必要があります。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/cas-62-55-5.html

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