水酸化バリウム

水酸化バリウムとは

水酸化バリウムとは、バリウムの水酸化物で、塩基性の無機化合物です。

乾燥体には92~95%の一水和物が存在し、水溶液では無色の結晶である8水和物が生成されます。水溶液は強アルカリ性で、バリタ水 (英: baryta water) と呼ばれます。

大気中で水酸化バリウムは、二酸化炭素と反応することで、炭酸バリウムを生成可能です。水酸化バリウムの一水和物が市販されています。一般的な水溶性バリウム化合物と同じく毒性が強いため、劇物に指定されています。

水酸化バリウムの使用用途

水酸化バリウムは、ガラスの製造や油の精製、水の軟化、製糖、各種バリウム化合物の製造、有機合成など、幅広い用途で用いられています。また、グリース塩化ビニルの安定剤として利用されるバリウム石鹸の製造において、油脂の鹸化にも使用可能です。

水酸化バリウムは、中和滴定のアルカリ標準液や二酸化炭素の定量など、分析試薬・実験試薬としても利用されています。水酸化バリウムは他にも、触媒や潤滑油添加剤の製造、顔料の原料、硫酸の中和除去剤、めっき用試薬、ケイ酸塩の融解などにも使用されています。

水酸化バリウムの性質

水酸化バリウムは、潮解性を有する白色の結晶です。水やメタノールに溶けやすいです。水酸化バリウムの融点は408℃、8水和物の融点は78℃、780℃で分解します。

水酸化バリウムは、水酸化物イオンとバリウムイオンから構成されるイオン結晶です。外観は粒状または粉末状で、分子量は171.34、化学式はBa(OH)2です。

無水物の結晶構造は単斜晶系で、8水和物は正方晶系を取っています。無水物の密度は4.495g/cm3、一水和物の密度は4.495g/cm3、8水和物の密度は3.74g/cm3です。

水酸化バリウムのその他情報

1. 水酸化バリウムの合成法

水酸化バリウムは、酸化バリウムと水の反応により生成されます。再結晶によって8水和物が得られ、空気中で加熱すると一水和物になります。

減圧下で100℃まで熱すると、無水物を得ることも可能です。ただし、酸化バリウムの水和反応は、生石灰 (酸化カルシウム) の消和よりも激しいため危険を伴います。

また、硝酸バリウム水酸化ナトリウムの反応によっても、水酸化バリウムの8水和物が得られます。

2. 水酸化バリウムを用いた滴定

指示薬の構造

図1. 指示薬の構造

分析化学で水酸化バリウムは、弱酸や有機酸の滴定に利用されています。透明な水酸化バリウムの水溶液は、炭酸塩を含んでいないことを示します。水に炭酸バリウムが不溶なためであり、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどが持っていない特徴です。

この性質を利用すると、アルカリ性で変色する指示薬として、フェノールフタレイン (英: phenolphthalein) やチモールフタレイン (英: thymolphthalein) を用いた場合に、弱塩基の炭酸イオンが存在しても、終点誤差が出ずに滴定できます。

3. 水酸化バリウムを用いた分解反応

水酸化バリウムによる加水分解

図2. 水酸化バリウムによる加水分解

有機合成では強塩基として水酸化バリウムを、エステルやニトリルの加水分解に利用可能です。また、こぼした酸性の物質を中和して、危険性を減らすために水酸化バリウムは使用されています。

さらに、ウンデカンカルボン酸ジメチルエステル (英: undecanoic acid dimethyl ester) のエステル結合の片方だけを、加水分解する反応にも用いることが可能です。

4. 水酸化バリウムを用いた合成反応

水酸化バリウムを用いた合成反応

図3. 水酸化バリウムを用いた合成反応

シクロペンタノン (英: cyclopentanone) 、ジアセトンアルコール (英: diacetone alcohol) 、D-グロン酸-γ-ラクトン (D(-)-gulonic acid γ-lactone) などの合成にも、水酸化バリウムは使用されます。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/17194-00-2.html

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