水酸化アルミニウムとは
水酸化アルミニウムとは、アルミニウムの水酸化物です。
水酸化アルミニウムは、ギブス石 (英: gibbsite) やダイアスボア (英: diaspore) 等として、天然に産出します。化学的にはアルミン酸ナトリウム水溶液と二酸化炭素との反応や、アルミニウム塩水溶液のアンモニアまたは水酸化アルカリによる中和によっても生成されます。
水酸化アルミニウムは、両性水酸化物です。強酸・水酸化アルカリ溶液に可溶ですが、放置すると徐々に溶けにくくなる傾向があります。また、水酸化アルミニウムを300℃で加熱すると脱水し、最終的にはα-アルミナが生成されます。
水酸化アルミニウムの使用用途
水酸化アルミニウムは、アルミナを製造する際の原料として使用される他、硫酸アルミニウムや合成ゼオライト等の化学薬品の原料、窯業材料などとしても利用されています。また、媒染剤、制酸剤、繊維の防水などといった用途でも、水酸化アルミニウムを使用可能です。
水酸化アルミニウムは、耐火性や白色度などを高めるために、ゴムやプラスチックの填料、紙用充填剤などにも用いることが可能です。さらに、収れん剤等の医薬品やガスや液体の精製、クロマトグラフィーの吸着剤、乳化剤、イオン交換体、ろ過材、セラミックガラス、難燃剤などにも、水酸化アルミニウムが使用されています。
医療分野において水酸化アルミニウムは、リン酸アルミニウム (AlPO4) とともにワクチンのアジュバント (英: Adjuvant) としてよく用いられます。
水酸化アルミニウムの性質
水酸化アルミニウムは、密度が2.42 g/cm3、融点が300°Cの白色の無定形粉末です。水酸化アルミニウムは、水酸化物イオンとアルミニウムイオンから構成されています。組成式はAl(OH)3、式量は78.00g/molです。
メチルアミンには溶けますが、水にはほとんど不溶で、アセトンやエタノールにも溶けません。また、水酸化アルミニウムは、水と長時間接することでゲル化します。
水酸化アルミニウムを熱すると酸化アルミニウムになり、水が発生します。そのため、水酸化アルミニウムを添加した紙は、炎を出さないので燃えません。防火性が高い壁紙のような建築材料として、水酸化アルミニウムの不燃紙が使用可能です。
水酸化アルミニウムのその他情報
1. 水酸化アルミニウムの溶解性
水酸化アルミニウム自体の溶解度積は非常に小さく、Ksp = 5×10-33です。ただし、水酸化アルミニウムの水溶液から新しく生じたゲル状沈殿は、酸や塩基の水溶液に容易に溶けます。塩基性溶液中では水酸化物イオンによる配位結合が形成され、[Al(OH)4]−という構造のテトラヒドロキシドアルミン酸イオンを生成するからです。
このときの溶解度積はKsp = 4×10-13です。それに対して酸性溶液中では水酸化物イオン (OH−) の濃度が極めて小さいため、平衡が溶解方向へ移動しています。
ただし、沈殿後に時間が経過したものや結晶性の水酸化アルミニウムは、塩基水溶液に溶解しにくいです。
2. 水酸化アルミニウムの応用
水酸化アルミニウムには、α型のバイヤーライト (英: bayerite) とγ型のギブサイト (英: gibbsite) が存在します。25℃、105Paでは、熱力学的にギブサイトの方がバイヤーライトよりも安定です。
熱水溶液中では水酸化アルミニウムが水1分子を脱水して、AlO(OH) を生成します。AlO(OH)はボーキサイトの主要な成分であり、ベーム石 (英: Boehmite) やダイアスポア (英: diaspore) が存在します。
Al(OH)3 とAlO(OH) はいずれも加熱によって、水を容易に失うため、酸化アルミニウム (Al2O3) を得ることも可能です。
参考文献
https://www.chemicoco.env.go.jp/detail.php?=&chem_id=3349