塩化マンガン

塩化マンガンとは

塩化マンガンとは、マンガン塩素の化合物です。

塩化マンガンには酸化数が+2と+3の化合物があり、塩化マンガン(II)と塩化マンガン(III)です。一般的に塩化マンガンは、塩化マンガン(II)のことを指し、二塩化マンガンとも呼ばれます。

長期的に塩化マンガンの粉末や蒸気に触れると、マンガン中毒を起こす可能性もあります。そのため施錠して保管し、廃棄時には内容物や容器を専門の廃棄物処理業者への委託処理が必要です。

塩化マンガンの使用用途

塩化マンガン(II)は幅広く使用されています。主な用途は、染色工業、窯業用顔料、医薬品製造、塩化物合成の触媒です。また、塗料乾燥剤 (褐色ピグメント) や塗料乾燥剤のホウ酸マンガンの製造にも使用可能です。

化学肥料の合成促進剤、印刷インキの乾燥剤、乾電池の原料、軽合金用フラックス、ガラスゼオライトにも用いられています。医療でも、核磁気共鳴画像法 (MRI) 用造影剤や無機質性剤として使用されています。

塩化マンガンの性質

塩化マンガンの無水物は、潮解性の淡赤色結晶です。融点は654°Cで、沸点は1,225°Cです。

エタノールに溶け、25°Cの水100gに77.2g溶解し、水溶液はpH4ほどの弱酸性を示します。水溶液から淡赤色の四水和物であるMnCl2・4H2Oの結晶が得られます。色が薄い理由は、ハイスピン型であるd5電子配置のためです。4水和物は、ペンキ、印刷インキの乾燥剤、顔料、電池用二酸化マンガンの原料などに使用可能です。

塩化マンガン(II)はさまざまなマンガン化合物の合成に利用可能です。具体的には、炭酸カリウムと反応して、炭酸マンガン(II)が沈殿します。この反応中のMnCl2のマンガンイオンは、水和して[Mn(H2O)6]2+になっています。弱いルイス酸である塩化マンガン(II)は、塩化物イオンとの反応によって、[MnCl6]4−、[MnCl4]2−、[MnCl3]などの錯イオンを生成可能です。

塩化マンガンの構造

塩化マンガンの化学式はMnCl2で表されます。モル質量は125.844g/molで、密度は2.98g/cm3です。結晶構造は六方晶系の塩化カドミウム型を取っています。塩化マンガンは常磁性です。

塩化マンガンには無水物以外にも、2水和物や4水和物が存在します。

塩化マンガンのその他情報

1. 塩化マンガン(II)の合成法

天然にはベスビオ火山などで、スカッチャイト (英: scacchite) として塩化マンガン(II)が産出します。

塩化マンガン(II)の無水物の塩は、塩素と金属の反応によって得られます。金属マンガン、マンガン酸化物、炭酸マンガンに塩化水素を反応させても生成可能です。

濃塩酸と酸化マンガン(IV)を加熱すると、塩化マンガン(II)が生じます。塩酸により4価のマンガン塩が2価に還元されて、マンガンにより塩化物イオンが塩素に酸化される反応です。かつては塩素の製造法に利用されていました。

2. 塩化マンガン(II)の反応

有機化合物の配位子と反応すると、空気酸化によって3価のマンガン錯体が形成されます。例えば、[Mn(EDTA)] (EDTA錯体) 、[Mn(acac)3] (アセチルアセトナト錯体) 、[Mn(CN)6]3− (シアン化物錯体) などが有名です。トリフェニルホスフィンと反応すると、不安定な1:2付加物が生じます。

塩化マンガン(II)の無水物は、禁水条件の反応に使用されます。ナトリウムシクロペンタジエニドとの反応では、マンガノセン (英: Manganocene) を合成可能です。マンガノセンとはビス(シクロペンタジエニル)マンガン(II)とも呼ばれる有機マンガン化合物であり、化学式は[Mn(C5H5)2]nと表されます。

3. 塩化マンガン(III)の特徴

酢酸マンガンに-100°Cで塩化水素を反応させると、塩化マンガン(III)が得られます。化学式はMnCl3で、黒色粉末で熱的に不安定です。

塩化マンガン(II)の濃塩酸溶液と塩素が反応して生じる褐色溶液には、塩化マンガン(III)のクロロ錯体 (MnCl52-など) が含まれています。

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