亜硝酸ナトリウムとは
亜硝酸ナトリウム (英: Sodium nitrite) とは、無色または淡黄色のイオン結晶粉末です。
ナトリウムの亜硝酸塩で、化学式はNaNO2、分子量は69.01、CAS登録番号は7632-00-0です。亜硝酸ソーダや亜硝酸Naとも呼ばれ、工業薬品JIS K1472-83、試薬JIS K8019-92の食品添加物に分類されます。
亜硝酸ナトリウムの構造
亜硝酸ナトリウムは、ナトリウムカチオンのNa+と亜硝酸アニオンNO2– から構成されており、結晶は斜方晶系となります。分子としての構造を見ると、亜硝酸アニオンNO2–の酸素原子 (O) と窒素 (N) の結合は、折れ曲がり構造を形成しています。
亜硝酸ナトリウムの性質
1. 物理的特性
亜硝酸ナトリウムは、融点が270℃、沸点 (分解温度) が320℃で、密度/相対密度が2.17です。潮解性があり、水に溶けやすく、水溶液は弱アルカリ性を示します。アルコールやエーテルにはわずかに溶け、酸で分解すると三酸化二窒素を生じます。
2. その他の特徴
亜硝酸ナトリウムは、食肉に含まれるアミンと結合し、ニトロソアミン類という発がん性物質に変化する恐れがあります。そのため、摂取し続けると、癌になる可能性が高まるといった点が懸念されています。
亜硝酸ナトリウムの使用用途
1. 食品添加物
亜硝酸ナトリウムは、食肉加工をはじめとする食品分野において、食品添加物として広く利用されています。具体的には、ハム・ソーセージ・ベーコン・タラコ・イクラ等の発色剤として使われています。亜硝酸ナトリウムの添加は、発色以外にも効果をもち、獣肉特有の肉臭さを取り、熟成による風味を作り出すといった効果や、危険な食中毒菌であるボツリヌス菌の増殖を抑制させるといった役割もあります。
2. 医療用品
亜硝酸ナトリウムは、滅菌剤として医療器具に使用することで、ほとんどのウイルスや細菌を不活性にする中水準消毒剤となります。また、血管拡張剤として、シアン中毒患者の治療にも、亜硝酸ナトリウムが利用されています。
3. その他
亜硝酸ナトリウムは、コンクリート中の鉄筋腐食防止用のさび止めとして利用されることもあります。その他にも、有機ジアゾニウム塩、アゾ染料の合成、繊維の漂白、金属の表面処理、ジアゾ化滴定用などの分析試薬などといった用途で広く用いられています。
亜硝酸ナトリウムのその他情報
1. 亜硝酸ナトリウムの製法
亜硝酸ナトリウムは、溶融した硝酸ナトリウムを鉛で還元した生成物から、水で抽出することで生成します。工業的には、一酸化窒素と二酸化窒素の混合ガスを、水酸化ナトリウムに吸収させることによって製造されています。
2. 法規情報
亜硝酸ナトリウムは、毒物及び劇物取締法で、劇物に指定されており、取り扱いには注意が必要です。消防法では、危険物第1類 (酸化性固体) の亜硝酸塩類 (酸化性固体亜硝酸塩類第1種酸化性固体 (50kg)) に、水質汚濁防止法で施行令第2条有害物質に指定されています。亜硝酸ナトリウムが発色剤・防腐剤として使われた加工肉では、タンパク質からニトロソアミンが生成するため、発がん性が明確であるというグループ1に分類されます。
3. 取扱いおよび保管上の注意
取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。
- 容器を密栓し、乾燥した冷暗所に保管する。
- 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
- 可燃物と混合すると容易に発火するため、熱や可燃物から遠ざけて使用、保管する。
- 爆発のおそれがあるので、アンモニア塩類やシアン化合物と混合しない。
- 使用時は保護手袋、保護眼鏡を着用する。
- 取扱い後はよく手を洗浄する。
- 皮膚に付着した場合は、石鹸と水で洗い流す。
- 眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗う。
- 高濃度の溶液を飲んだ場合は、頭痛や吐き気、けいれん、意識障害に至ることもあるため、牛乳や生の鶏卵などを飲ませ速やかに吐き出させる。
参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7632-00-0.html