ヨウ化アンモニウムとは
ヨウ化アンモニウムとは、化学式NH4lで示される無機化合物です。
白色の結晶性化合物で潮解性があり、分解によるヨウ素の遊離によって、結晶は次第に黄色に変色します。分子量は 144.94g/mol で、密度は 2.514g/cm³ です。融点は551℃、沸点は235℃と高いですが、沸騰する前に昇華して分解してしまいます。
水によく溶け、温度の上昇とともに溶解度は増加します。エタノール、メタノール、アセトン、グリセリンにも溶解します。ヨウ化アンモニウムは実験的に、ヨウ化水素酸 (ヨウ化水素の水溶液) をアンモニアまたは炭酸アンモニウで中和すると得られる液体です。
工業的には、水中でヨウ化水素酸 (HI) とアンモニア (NH3) を反応させることにより製造されます。また、医療や写真現像、有機合成といった幅広い用途で用いられています。
ヨウ化アンモニウムの使用用途
ヨウ化アンモニウムは、そのユニークな特性から、医薬品や写真の増感剤、有機合成試薬など、さまざまな分野で利用されています。
1. 医療用途
ヨウ化アンモニウムは、去痰剤という気道からの粘液の排出を促進する用途で医薬品として使用されます。また、甲状腺を小さくする効果があるため、甲状腺疾患の治療にも使用されています。
2. 写真増感剤
写真の現像において、X線フィルムや写真プレートに使用されるハロゲン化銀乳剤の増感剤として使用されています。
3. 有機合成試薬
ヨウ化アンモニウムは、有機合成反応の試薬として広く使用されています。具体的には、有機ハロゲン化合物やヨウ素化合物の合成などです。そのほか、さまざまな反応の溶媒としても使用されており、ヨウ化アンモニウムは安価で入手しやすいため、有機合成化学において広く使用されている試薬の1つです。
ヨウ化アンモニウムの性質
ヨウ化アンモニウムは、化学式NH4Iで表される白色の結晶性化合物です。空気中の水分による分解を受けてヨウ素が遊離し、決勝は次第に黄色くなります。
分子量は 144.94g/mol で、密度は 2.514g/cm³ です。融点は551℃、沸点は235℃と高いですが、沸騰する前に昇華して分解してしまいます。
ヨウ化アンモニウムは水に非常に溶けやすく、温度の上昇とともに溶解度は増加します。エタノールとアセトンにもよく溶解しますが、エーテルには難溶です。ヨウ化アンモニウムは加熱によって分解し、アンモニアガス (NH3) とヨウ化水素ガス (HI) を生成します。
ヨウ化アンモニウムの構造
ヨウ化アンモニウムの化学構造は、アンモニウムカチオン (NH4+) とヨウ化物アニオン (I–) から構成されています。アンモニウムイオンは、中央に窒素原子、四隅に水素原子を持つ四面体の形状をしています。
ヨウ化物アニオンは、非金属原子にハロゲン原子が結合した負の電荷を持つハロゲン化物イオンです。
ヨウ化アンモニウムのその他情報
ヨウ化アンモニウムの製造方法
ヨウ化アンモニウムは、水中でヨウ化水素酸 (HI) とアンモニア (NH3) を反応させることにより製造されます。
NH3(g) + HI(aq) → NH4I(s)
この反応は発熱性で、収率を上げるために通常は還流条件下で行われます。得られた溶液を濃縮することで、ヨウ化アンモニウムの結晶を析出させることができます。
得られたヨウ化アンモニウム固体は、通常冷水で洗浄し、不純物を除去した後、真空下で乾燥させます。また、ヨウ化水素酸を炭酸アンモニウムで中和することによりヨウ化アンモニウムを調製することも可能です。
(NH4)2CO3(aq) + 2HI (aq) → 2NH4I(s) + CO2(g) + H2O(l)
しかし、この方法はアンモニアとヨウ化水素酸を直接反応させる方法と比べると、あまり一般的ではありません。