メタクリル酸

メタクリル酸とは

メタクリル酸とは、不飽和脂肪酸の1種で、刺激臭をもつ無色透明液状の有機化合物です。

別名で、α-メチルアクリル酸、2-メチルプロペン酸があり、MAA、MAとも略されます。メタクリル酸は、消防法で「第4類第3石油類水溶性液体」に分類されています。また、毒劇物取締法では、劇物にも指定されており、取り扱いには注意が必要です。腐食性があり、皮膚などに対しての強い刺激性があります。

メタクリル酸の使用用途

メタクリル酸は、水溶性高分子の合成原料、他のビニル化合物との共重合体の製造、イオン交換樹脂の製造などに用いられています。メタクリル酸のエステル化合物であるメタクリル酸メチルは、アクリル樹脂の原料として非常に重要です。

アクリル樹脂は透明度が高く丈夫であることから、有機ガラスとして利用されています。例えば、航空機や自動車の窓ガラス、照明用具、コンタクトレンズなど暮らしの中で身近なものが多いです。また、この他にも義歯材料や塗料、紙加工剤、繊維処理剤、接着剤、電気絶縁材などもメタクリル酸の用途として挙げられます。

メタクリル酸の性質

メタクリル酸の分子式はCH2 = C(CH3)COOHで分子量は86です。融点15℃、沸点159℃、比重1.015で、常温で無色透明の強い刺激臭のある液体です。しかし、冬場は凝固して、すぐに使えないというトラブルがよくあります。

水には可溶で、エタノール、エーテル等の有機溶媒にはよく溶けます。また、酢酸よりも強い酸性を示すことも特徴です。メタクリル酸は、長時間保管しているだけでも重合するなど、重合を起こしやすい物質です。また、酸を数滴加えた場合は、速やかに重合し、水溶性高分子化合物ポリメタクリル酸になります。

メタクリル酸の保存には、重合防止剤として0.1% のヒドロキノンが加えられます。 カルボキシル基を持つため、アクリル系樹脂の金属面に対する接着性や安定性を向上させる目的や、親水性または水溶性を付与する目的、油・グリース類に対する耐久性を付与させる目的で、構成モノマーの1つとして添加されます。また、樹脂の硬度や、軟化温度を高めるなどの効果もあります。

メタクリル酸のその他情報

メタクリル酸の製造方法

メタクリル酸は、工業的にはACH法とイソブチレン法の2つの方法で製造されています。ACH法は古くからある方法ですが、猛毒であるシアン化水素 (HCN) が原料であることや、大量の硫酸塩の廃棄物が出ることが課題です。

現在、欧米や中国では依然としてACH法が採用されていますが、国内ではモリブデン系触媒を使用して、イソブチレンを直接酸化して合成するイソブチレン法が多く取られています。さらに、近年はエチレンを原料にしてプロピオン酸を経由して合成するプロセスも開発されています。

1. ACH法
アセトンとシアン化水素を反応させて、アセトンシアンヒドリン (ACH) を合成します。アセトンシアンヒドリンを濃硫酸と混合し、反応させてアミド化し、メタクリルアミドを合成します。メタクリルアミドに水とメタノールを加えて反応させることで、メタクリル酸とメタクリル酸メチルが得られます。

CH3COCH3 + HCN → CH3COH(CH3)CN
CH3COH(CH3)CN + H2SO4 → CH2 = C(CH3)CONH2・H2SO4
CH2 = C(CH3)CONH2・H2SO4 + H2O + CH3OH → CH2 = C(CH3)COOH + CH2 = C(CH3)COOCH3 + NH4HSO4

2. イソブチレン法
イソブチレンをモリブデン系触媒 (Mo-Bi) の存在下で酸化し、2段階目の反応を触媒をMo-P系に変えて酸化反応を行うことでメタクリル酸を得られます。

CH2 = C(CH3)CH3 +O2 → CH2 = C(CH3)CH = O + H2O
2CH2 = C(CH3)CH = O +O2 → 2CH2 = C(CH3)COOH 

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0070.html

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