絶縁材とは
絶縁材とは、電気を通しにくい材料や電気を通さない材料のことです。
代表例はプラスチックやゴムなどです。電気を通しやすい物質を導体と呼び、温度などの条件によって導体が絶縁体に変化する特徴を持った物質を半導体と呼びます。
物性の違いは物質内に自由に移動できる自由電子に由来しており、自由電子が存在する物質に電圧差が生まれると自由電子が移動して電流が流れます。絶縁材は自由電子の移動が少ないか移動がないため電流が流れません。
絶縁材の使用用途
絶縁材は電子部品を集積する基板やケーブルの被覆に使われます。電気を通す電線同士が接触すると故障の原因になるため、電線同士が電気的に接触しないように絶縁材で保護可能です。電源用のケーブル以外にもLANやUSBケーブルなどのほとんどのケーブル製品は絶縁材の被覆が使われています。絶縁材の素材はゴムやビニールなどを利用可能です。
基板の素子などが水で濡れないように素子表面にポッディング (コーティング) 処理を行うときに絶縁材が使用される場合もあります。
絶縁材の原理
絶縁材 (絶縁体) と導体の違いは自由電子の有無に由来し、自由電子の有無は伝導帯と価電子帯の間にあるエネルギーバンドギャップによって決まります。
物質を構成する共有結合で周囲の原子と共有されている価電子はエネルギー準位が低い価電子帯と呼ばれる領域に存在します。この準位にある価電子は電圧差を与えても動きません。その一方で物質には価電子帯よりも高いエネルギー領域である伝導帯と呼ばれる領域が存在し、伝導帯と価電子帯の間のエネルギー差をバンドギャップと呼びます。価電子帯に存在する電子が光、熱、電気的なエネルギーを受け取ってエネルギーバンドギャップを超えて伝導帯に到達すると自由電子として動いて電流が流れます。
導体はエネルギーバンドギャップがほとんどありません。多くの電子が簡単に伝導帯に遷移して自由電子が多くなり、電流が流れます。逆に絶縁材はエネルギーバンドギャップが大きく簡単には伝導帯に遷移しないため、自由電子が少なく電流が流れません。ただし雷のようなエネルギーバンドギャップを上回る大きなエネルギーを受け取ると絶縁体でも伝導帯に遷移して電流が流れる可能性があります。
絶縁材の種類
絶縁材には数多くの材質があり、特徴が異なります。
1. 気体絶縁材
空気、六フッ化硫黄 (SF6) 、炭酸ガスなどで、主に加圧して使用します。SF6は硫黄とフッ素ガスから合成され、絶縁耐力に優れるためガス絶縁遮断器やガス絶縁変圧器に利用されてきましたが、地球温暖化係数が高く、使用が抑制されています。
2. 液体絶縁材
具体例は植物性油、合成絶縁油、鉱油などです。植物性油は絶縁油の原料に用いられ、合成絶縁油や鉱油はケーブル、コンデンサー、変圧器のような油入電気機器の絶縁や冷却に利用されます。
3. 固体絶縁材
雲母、セラミックス、ガラスなどが使用されます。雲母は高い耐熱性や絶縁性を有する天然の結晶で、テープ、シート、板などに加工され、コイルの絶縁に幅広く使われています。鉱物質粉末を成形して高温で焼成されたセラミックスは半導体用パッケージや高周波用絶縁物に用いられます。ガラスは硬くて脆いですが、透明で耐熱性や絶縁性が良く、ブラウン管や電球に使用可能です。
4. 有機繊維質材料
具体例として、絹、綿糸、紙、ポリエステル、ナイロンなどが挙げられます。古くから紙は絶縁油に含浸させて、油入電気機器の絶縁に使われてきました。
5. 塗料系材料
合成樹脂や天然樹脂を溶剤に溶かして作ります。エナメルワニスやコイルワニスのような絶縁塗料は絶縁処理材に使用されます。
6. ゴム系材料
シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、天然ゴムなどが成形品や電線被覆に使われます。
7. 樹脂系材料
天然樹脂のロジンやセラックは絶縁塗料の原料に使用されています。合成樹脂には熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂があり、絶縁塗料、電線被覆材、積層品、成形品などに広く用いられます。