キシロース

キシロースとは

キシロースの基本情報

図1. キシロースの基本情報

キシロース (英: Xylose) とは、ペントース (五炭糖) 及びアルドースに分類され、分子式C5H10O5で表される有機化合物です。

木糖とも呼ばれます。天然にはD体のみが存在しており、L体、DL体は有機化学合成によって作られる物質です。CAS登録番号は、D体が58-86-6、L体が609-06-3、DL体が41247-05-6です。

分子量150.13、融点144-145℃であり、常温では結晶性の白色固体です。強い甘味を呈するという特徴があります。水溶性が高く、水への溶解度は568 g/L (25°C) です。また、エタノール及びアセトンにはほとんど溶けません。密度は1.53g/mLです。

ヘミセルロースの構成成分として、植物界に多く存在しています。トウモロコシの芯や藁などの加水分解によって得ることができます。

キシロースの使用用途

キシロースは、甘味料として食品添加物に用いられたり、キシリトールの原料として利用されたりする物質です。

食品添加物としては、メイラード反応による着色性がD-グルコースなどに比べて高いという特徴があります。メイラード反応とは、タンパク質やアミノ酸と糖類が反応して褐色になる反応です。この特徴により、キシロースはかまぼこなどの発色やフレーバーの強化・矯臭などの目的で加工食品に利用されています。

また、消化管機能検査に利用されることもあります。キシロースは、ヒトでは小腸上部で促進拡散によって吸収された後、尿中に排泄されます。そのため、キシロースを経口投与した後に尿中のキシロース濃度を測定することで、小腸の吸収試験を行うことができます。 糖尿病患者の甘味料に利用される物質でもあります。

キシロースの性質

キシロースに関連する物質

図2. キシロースに関連する物質

キシロースは、還元反応によってキシリトールとなるほか、分解によってフルフラールを生じます。また、生体内ではキシロースイソメラーゼの働きによってキシルロースに変化する物質です。

通常の保管条件では安定ですが、高温と直射日光は避けるべきとされます。強酸化剤とは反応するため、混触危険物質となっています。

キシロースの構造

キシロースのエナンチオマー

図3. キシロースのエナンチオマー

ペントースには3つの不斉炭素原子が存在し、そこに結合するヒドロキシ基の向きによって糖の種類が区別されます。アルデヒド基の炭素原子を1番、その隣を2番というように番号をつけると、2番、3番、4番が不斉炭素原子です。2番と4番に結合したヒドロキシ基が同じ向き、3番のヒドロキシ基が逆の向きであるペントースが、キシロースです。 

キシロースの中には、2、4番ともに右向きのものと、左向きのものの2種類があります。糖質のD, L型表記の規則に従い、キシロースもカルボニル基を上方に書いたとき、下から2番目の炭素のヒドロキシ基が右方についたものをD型、左方についたものをL型と区別して定義されます。一般に天然に存在する糖類と同様、天然のキシロースもD型です。

キシロースの種類

キシロースは、食品添加物原料や研究開発用試薬製品として販売されています。食品添加物原料としてのキシロースは、D-キシロースです。

研究開発用試薬製品には、D-(+)-キシロース、L-(-)-キシロース、DL-キシロースなどの種類があります。10mg、25g、500g、1kgなど、様々な容量で提供されています。通常、室温で取り扱い可能な試薬製品です。

キシロースのその他情報

自然界におけるキシロース

自然界においては、キシロースは多糖類であるキシランや、糖タンパク質の構成分子として植物に含まれます。カエデ、サクラなどの木材や、竹、とうもろこしの外皮で特に顕著です。

動物ではプロテオグリカンの構成成分として、コンドロイチン硫酸類、ヘパリンなどの糖鎖の還元末端に結合しており、タンパク質中のセリンやスレオニンと結合しています。

生体内での多糖類への取込みは、まずUDPグルクロン酸の脱炭酸によってUDPキシロースが生成し、このUDPキシロースがキシロシルトランスフェラーゼによって糖鎖や多糖に組み込まれることで起きています。

参考文献
https://www.sigmaaldrich.com/JP/ja/sds/sial/x1500/

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