エリスリトールとは
図1. エリスリトールの基本情報
エリスリトールとは、化学式がC4H10O4で表される、天然の糖アルコールの1種です。
エリスリトール以外の天然の糖アルコールの具体例として、キシリトールやソルビトールなどが挙げられます。エリスリトールは果実やキノコの他、ワイン、醤油、清酒、味噌などの発酵食品に含まれています。
工業的には、トウモロコシや小麦のデンプンを原料として、酵母を用いた発酵により生産可能です。甘味度は砂糖の75~80%ほどです。厚生省のエネルギー評価法では、カロリーがゼロと認められています。
エリスリトールの使用用途
エリスリトールにはカロリーがほとんどなく、砂糖と置き換えると、肥満や血糖値の低減に効果的です。そのため、主に砂糖の代替甘味料として使用されています。
エリスリトールを含む一般的な食品の例に、キャンディ、ガム、清涼飲料水などが挙げられます。特定健康食品として虫歯の発生低減を目的に使用されたり、糖尿病患者等、病者用食品の甘味料として利用可能です。
さらに、放熱効果があるため、化粧品成分として化粧水など、保湿調整にも用いられています。
エリスリトールの性質
エリスリトールの融点は121°C、沸点は329〜331°Cであり、無色の固体です。エリスリトールは溶解によって熱を吸収するため、強力な冷却作用を有します。
エリスリトールはエリトリトールとも呼ばれ、示性式はHO(CH2)(CHOH)2(CH2)OHと表されます。モル質量は122.12g/mol、密度は1.45g/cm3です。
エリスリトールのその他情報
1. エリスリトールの製造
工業的にエリスリトールは、まずトウモロコシからデンプンの加水分解によって、グルコースを得ます。そして、ブドウ糖をカンジダ・マグノリアエ (英: Candida magnoliae) 、オーレオバシディウム (英: Aureobasidium) 、モニリエラ・トメントサ・バール・ポリニス (英: Moniliella tomentosa var. pollinis) などの菌株によって発酵させると、エリスリトールを製造可能です。
ヤロウイア・リポリティカ (英: Yarrowia lipolytica) の遺伝子操作された突然変異体は、発酵によってエリスリトールを生産可能です。グリセロールを炭素源として、高浸透圧によって収量を最大62%に増加できます。
2. エリスリトールの異性体
図2. エリスリトールの異性体
トレイトール (英: Threitol) は、エリスリトールのジアステレオマーです。化学式がC4H10O4の4炭素の糖アルコールです。主に、各種化合物の合成中間体として使用されています。融点は88〜90°C、沸点は331°Cであり、密度は1.0151g/cm3です。
生体内でトレイトールは、食用キノコのナラタケ (英: Armillaria mellea) に含まれています。アラスカカブトムシ (英: Upis ceramboides) にも存在し、凍結保護剤 (凍結防止剤) として利用可能です。
3. エリスリトールの関連化合物
図3. エリスリトールの関連化合物
ペンタエリトリトール (英: pentaerythritol) も、エリスリトールと同じく4価アルコール類の1種であり、糖アルコールに分類されています。工業的に、ロジンエステル、合成潤滑油、アルキド樹脂、爆薬などの原料に利用可能です。
四硝酸エリスリトール (英: Erythritol tetranitrate) は、濃硫酸と硝酸塩を混合するか、硫酸と硝酸の混合物を使用して、エリスリトールのニトロ化によって作られます。高性能爆薬のペンスリット (英: penthrite) に似ており、摩擦や衝撃に敏感な爆発性化合物です。他の爆薬と混ぜて使用され、容易に爆発するため、取り扱いに注意する必要があります。