ニトロフェノール

ニトロフェノールとは

ニトロフェノールの構造式

図1. ニトロフェノールの構造式

ニトロフェノールとは、フェノールにニトロ基が結合した構造を持つ有機化合物です。

ニトロ基の位置により2-ニトロフェノール (o-ニトロフェノール) 、3-ニトロフェノール (m-ニトロフェノール) 、4-ニトロフェノール (p-ニトロフェノール) の3種類があります。

これらのニトロフェノールの中で最も一般的に使われているのは4-ニトロフェノールです。4-ニトロフェノールは皮膚や粘膜に対して刺激性を持つため、長時間接触しないよう取り扱いには注意が必要です。

ニトロフェノールの使用用途

1. フェネチジンやアセトフェネチジンの合成

4-ニトロフェノールはフェネチジンやアセトフェネチジンの合成に使われます。フェネチジンは人工甘味料であるズルチンの合成原料として使われていましたが、現在ではアゾ染料や医薬品などの中間体として使用されています。

また、アセトフェネチジンはフェナセチンとも呼ばれ解熱鎮痛剤として知られていますが、長期的に大量服用することで腎臓に障害が現れることが知られたため現在では多くの企業がアセトフェネチジンの使用を停止しています。

2. pH指示薬

ニトロフェノールアニオン

図2. ニトロフェノールアニオン

4-ニトロフェノールは、酸性溶液中では無色で、アルカリ性溶液中では黄色に変色するので、pH指示薬として使用できます。4-ニトロフェノールがアルカリ性溶液中に置かれると、ニトロフェノール上の水酸基から H+が塩基の OHに供与され、ニトロフェノールアニオンとなります。ニトロフェノールアニオンは紫色の光を吸収するかつ、黄色の光を反射するため、溶液は黄色になります。

3. 殺菌剤・殺虫剤

ニトロフェノールはタンパク質を凝固・変性させる力が非常に強いという特性があります。細菌にもよく浸透するので、殺菌剤や殺虫剤に使用されます。木材腐朽菌に対する殺菌効果もあるので木材の防腐剤としても使われています。

ニトロフェノールの性質

1. 酸性度

ニトロフェノールは、フェノールにニトロ基 (-NO2) が結合した有機化合物であり、比較的強い酸性をもちます。フェノール類はアルコール類に比べて酸性度が高くなります。これは水素イオン H+を電離したのち生じる共役塩基の負電荷がベンゼン環に流れ込んで非局在化しているため、安定しているからです。

フェノール類の酸性度は置換基によって大きく影響されます。ニトロフェノールは,フェノール類の中では非常に酸性度が高くなります。ニトロ基は、電子求引性が強く、フェノールのフェノール性水素よりも酸性が高くなります。

2. 溶解性

ニトロフェノールは、フェノールにニトロ基が置換された化合物であり、ニトロ基は強い電子求引性を持つため、分子全体として極性を持ちます。そのため、ニトロフェノールは比較的電離しやすく、水によく溶けます。さらに、アルカリ溶液や様々な有機溶媒にもよく溶け、広い溶解性を持ちます。

3. 結晶多形

4-ニトロフェノールは、結晶状態で 2つの結晶多形を示します。α型は無色柱状晶で、室温では不安定で、太陽光に対して安定です。β型は黄色の柱状晶で、室温では安定で、太陽光が当たると徐々に赤くなります。

ニトロフェノールの構造

ニトロフェノールはフェノールのベンゼン環につながっている水素がニトロ基 (-NO2) に置き換えられた構造を持っています。ニトロ基のヒドロキシ基に対する位置 (オルト位、メタ位、パラ位) によって、2-ニトロフェノール (o-ニトロフェノール) 、3-ニトロフェノール (m-ニトロフェノール) 、4-ニトロフェノール (p-ニトロフェノール) の3つの異性体が存在します。

これらのニトロフェノールは、それぞれ異なる位置にニトロ基を持っているため、融点・沸点や水への可溶性などの性質がことなります。また、それぞれの化合物の反応性や用途も異なっています。

ニトロフェノールのその他情報

1. ニトロフェノールの合成

ニトロフェノール生成

図3. ニトロ化によるニトロフェノールの生成

フェノールを希硝酸でニトロ化すると、2-ニトロフェノールと4-ニトロフェノールの混合物が生成されます。それぞれの沸点が異なるため、蒸留法で両者を分離することができます。また、 2-ニトロフェノールはp-ニトロクロロベンゼンから加水分解と酸性化によって合成されます。

3-ニトロフェノールは,m-ニトロアニリンをジアゾ化し,ついでジアゾニウム基を加水分解することによって合成できます。

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