ニトロアニリン

ニトロアニリンとは

ニトロアニリンの異性体群

図1. ニトロアニリンの異性体群

ニトロアニリンは、アニリンの芳香環上の水素が1つニトロ基に置換した、芳香族アミンに属する有機化合物です。

化学式はC6H6N2O2、分子量 138.126であり、ニトロ基の位置により3種類の位置異性体が存在します。具体的な化合物名は、2-ニトロアニリン (o-ニトロアニリン) 、4-ニトロアニリン (p-ニトロアニリン)、3-ニトロアニリン(m-ニトロアニリン) です。

一般的には、4-ニトロアニリンが最も広く使用されています。CAS登録番号は、順に88-74-4 (2-ニトロアニリン) 、99-09-2 (3-ニトロアニリン) 、100-01-6 (4-ニトロアニリン) です。

ニトロアニリンの使用用途

ニトロアニリンの主な使用用途は、色素や医薬品合成の中間体、酸化防止剤、ガソリンのガム状化防止剤、家禽の医薬品、腐食防止剤などです。4-ニトロアニリンは赤色のアゾ色素であるパラレッドの合成原料として使用されています。

パラレッドは1880年に開発された世界で初のアゾ染料で、現在も使用されているだけでなく歴史的意義を持ったアゾ染料です。パラレッドは着色しやすく、濃い発色で耐光性や耐熱性に優れているという特徴があります。

3-ニトロアニリンも、特にアゾ色素の合成中間体として用いられる物質です。3-ニトロアニリンからは黄色や青色の色素が合成されます。

ニトロアニリンの性質

1. 2-ニトロアニリンの基本情報

2-ニトロアニリンは、融点71-72℃、沸点284℃であり、常温では橙色結晶です。密度は1.255g/mLであり、エタノール及びジエチルエーテルにやや溶けやすく、水に極めて溶けにくい性質を示します。

2. 3-ニトロアニリンの基本情報

3-ニトロアニリンは、融点114℃、沸点306℃であり、常温では黄色結晶です。密度は0.90g/mLであり、エタノール及びジエチルエーテルにやや溶けやすく、水に極めて溶けにくい性質を示します。

3. 4-ニトロアニリン

4-ニトロアニリンの基本情報

図2. 4-ニトロアニリンの基本情報

4-ニトロアニリンは、3つの異性体の中で最も汎用されている物質です。融点148℃、沸点332℃であり、常温で黄色または黄赤色の粉末または結晶です。

密度は1.437g/mLであり、エタノール及びジエチルエーテルにやや溶けやすく、水に極めて溶けにくい性質を示します。

ニトロアニリンの種類

ニトロアニリンは、研究開発用試薬製品として一般的に販売されています。販売されているものの中では4-ニトロアニリンが最も多く、2-ニトロアニリンや3-ニトロアニリンは少数です。

容量の種類は、25g、500gなど、実験室で取り扱いやすい小容量となっています。通常、室温で取り扱い可能な試薬製品です。

ニトロアニリンのその他情報

1. ニトロアニリンの合成

2-ニトロアニリン・4-ニトロアニリンの合成

図3. 2-ニトロアニリン・4-ニトロアニリンの合成

4-ニトロアニリン及び、2-ニトロアニリンは、アニリンを原料として次の手順で合成が可能です。

  1. アニリンのアミノ基をアセチル基で保護する (アセトアニリドの合成)
  2. 生じたアセトアニリドを混酸によりニトロ化する (芳香族求核置換反応)
  3. 2-ニトロアセトアニリドと4-ニトロアセトアニリドの精製分離
  4. アセチル基を加水分解で脱保護

上記の反応は、オルト・パラ配向性のため、3-ニトロアニリンは、この方法では合成できません。3-ニトロアニリンは、ベンズアミドのニトロ化反応と、続くホフマン転位によって合成が可能です。

2. 4-ニトロアニリンの化学反応

4-ニトロアニリンの化学反応でよく知られているものは、アゾ色素であるパラレッドの合成です。4-ニトロアニリンをジアゾ化した後、β-ナフトールとカップリングさせることでパラレッドが得られます。染める時には繊維にβ-ナフトールのアルカリ水溶液を染み込ませたうえで、繊維上でカップリングを行います。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0171.html

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