ジエチレングリコールとは
図1. ジエチレングリコールの基本情報
ジエチレングリコール (英: Diethylene glycol) とは、エチレングリコール (英: Ethylene glycol) 2分子が脱水縮合した構造を有するグリコールの1種です。
ジエチルグリコール、2,2’-オキシジエタノール、エチレングリコールダイマーとも呼ばれています。消防法では、「危険物第4類」「第三石油類 (水溶性液体) 」に指定されています。
ジエチレングリコールには、経口摂取により肝臓、中枢神経系、腎臓への毒性があり、中毒により死亡する場合も多いです。甘味があることから、過去にはシロップやワインなどに添加物として混入されて、中毒事件を引き起こしていました。
ジエチレングリコールの使用用途
ジエチレングリコールは、ブレーキ液、不凍液、潤滑剤、あるいはインキ、たばこの保湿剤、衣類の柔軟剤、コルクの可塑剤、接着剤、紙、包装材料、塗料などに幅広く使用されています。
また、ジエチレングリコールは皮膚に吸収されないため、化粧品にも用いられています。以前は、薬事法の規制対象ではありませんでした。しかし、2008年の同法化粧品基準の改正に伴い、歯磨への配合が禁止され、ジエチレングリコール0.1%以下のグリセリンのみ使用可能になりました。
ジエチレングリコールの性質
ジエチレングリコールの融点は-10.45°C、沸点は244.3°Cで、常温では無色のシロップ状の液体です。水のような極性溶媒によく溶解します。
分子式はC4H10O3で、分子量は106.12、20°Cでの密度は1.1160g/cm3です。示性式は (CH2CH2OH)2Oと表されます。
ジエチレングリコールのその他情報
1. ジエチレングリコールの合成法
ジエチレングリコールは、エチレングリコール2分子から水1分子が取れて縮合した化合物です。エチレングリコールを製造する際の反応副生成物として得られます。
2. ジエチレングリコールの関連化合物
図2. ジエチレングリコールの関連化合物
ジエチレングリコールは、エチレンオキシド (英: ethylene oxide) から誘導されるグリコールの1つです。 エチレンオキシドからジエチレングリコール以外にも、示性式がHOCH2CH2(OCH2CH2)nOHのグリコールが多数得られます。
- n=0: エチレングリコール
- n=2: トリエチレングリコール (英: triethylene glycol)
- n=3: テトラエチレングリコール (英: tetraethylene glycol)
- n=4: ペンタエチレングリコール (英: pentaethylene glycol)
- n>4: ポリエチレングリコール (英: polyethylene glycol)
これらのグリコール類は、エーテル結合を有するため、多くのジオールよりも親水性が高いです。
3. グリコール類の合成
図3. グリコール類の合成
エチレンオキシドは水溶液中でも安定しており、化学反応を起こさずに長時間存在できます。ただし、希釈した硫酸などの少量の酸を加えると、室温でもすぐにエチレングリコールが生成します。エチレンオキシドの重合は、リン酸塩のような触媒存在下で、気相で進行可能です。
約60°Cで大過剰の水を使用して、エチレンオキシドを反応させると、ジエチレングリコールやトリエチレングリコールの生成を抑制して、エチレングリコールを合成可能です。その一方で、アルカリ触媒を使用すると、ポリエチレングリコールが生じます。
アルコールを用いても同様の反応が進行し、エチレングリコールエーテルが得られます。エチレンオキシドと低級アルコールの反応は、水よりも活発ではないため、より厳しい条件が必要です。160°Cに加熱して、3MPaに加圧するとともに、酸やアルカリ触媒を加えます。