ジエチレングリコールジメチルエーテル

ジエチレングリコールジメチルエーテルとは

ジエチレングリコールジメチルエーテル (英: Diethylene glycol dimethyl ether) とは、エーテル類に分類される有機化合物の1種です。

別名には、1,1′-オキシビス(2-メトキシエタン)、2,5,8-トリオキサノナン、ジグリム、ジグライム、ダイグライム、ジメチルジグリコールなどがあります。特に製品としては、diethyleneglycol dimethyl etherの略称である、ジグリム/ジグライムの名称がしばしば用いられます。

化学式はC6H14O3であり、ジエチレングリコールにおける2つのヒドロキシ基をメチル化した構造です。CAS登録番号は、111-96-6です。有機合成化学において高沸点の親水性電子ドナー溶媒として、用いられます。

ジエチレングリコールジメチルエーテルの使用用途

ジエチレングリコールジメチルエーテルのグリニャール試薬への配位の例

図1. ジエチレングリコールジメチルエーテルのグリニャール試薬への配位の例

ジエチレングリコールジメチルエーテルの主な使用用途は、 希釈剤、洗浄剤、反応系溶剤などです。反応溶剤としては、特にグリニャール試薬や金属ヒドリドなどの金属化合物を反応剤とする反応で用いられます。

これは、ジエチレングリコールジメチルエーテルが金属カチオンにキレート配位して対アニオンを活性化させる働きがあり、反応速度を上げることができるためです。その他の反応では、ジボランを用いたヒドロホウ素化反応などが挙げられます。

ジエチレングリコールジメチルエーテルの性質

ジエチレングリコールジメチルエーテルの基本情報

図2. ジエチレングリコールジメチルエーテルの基本情報

ジエチレングリコールジメチルエーテルは、分子量134.18、融点-68℃、沸点162℃であり、常温では無色透明の液体です。特異臭を有します。水、各種アルコール、ジエチルエーテル、各種炭化水素系の溶媒と容易に混和します。密度は0.937g/mLです。

 法規制に従った保管及び取扱においては安定と考えられます。塩基性に強く、強塩基存在下に加熱しても通常は安定です。

ただし、強力な酸化剤と激しく反応し、 51℃以上では、爆発性過酸化物を生成することがあると推測されます。

ジエチレングリコールジメチルエーテルの種類

ジエチレングリコールジメチルエーテルは、主に、研究開発用試薬製品や工業用薬品として販売されています。研究開発用試薬製品としては、25mL、100mL、500mLなどの容量の種類で提供されています。

通常、室温で取り扱い可能な試薬製品です。安定剤としてBHT (ジブチルヒドロキシトルエン) を含む場合や、不純物として0.5%程度の水を含む場合があります。

工業用薬品としては、16kg石油缶や200kgドラムなどの容量の種類が提供されています。使用用途として、溶剤、グリニヤール反応用溶媒、酸性ガス洗浄剤、吸収剤などを想定して販売されている薬品です。

ジエチレングリコールジメチルエーテルのその他情報

1. ジエチレングリコールジメチルエーテルの合成

ジエチレングリコールジメチルエーテルは、酸触媒存在下でのジメチルエーテルとエチレンオキシドの反応により、合成されるとの報告があります。

2. ジエチレングリコールジメチルエーテルを溶媒とする化学反応

ジエチレングリコールジメチルエーテルを溶媒として用いる反応の例

図3. ジエチレングリコールジメチルエーテルを溶媒として用いる反応の例

前述の通り、ジエチレングリコールジメチルエーテルは金属カチオンにキレート配位して対アニオンを活性化させることができます。このため、ジエチレングリコールジメチルエーテルは、しばしば有機合成化学において溶媒として用いられる物質です。具体的な反応は以下のとおりです。

  • 水素化トリ-テルト-ブトキシアルミニウムリチウムを用いた還元反応
  • オレフィンを一級アミンに還元するヒドロホウ素化-アミノ化反応

3. ジエチレングリコールジメチルエーテルの安全性

ジエチレングリコールジメチルエーテルは、消防法において、「危険物第4類「「第二石油類 (水溶性液体) 」に指定されています。これは、引火点が57℃と低く、引火しやすい性質があるためです。また、労働安全衛生法でも「危険物・引火性の物」に指定されている化合物です。

取り扱いの際は、適切な保護具を用い、法令を遵守して正しく取り扱うことが必要です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/111-96-6.html

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