ケイ酸ナトリウムとは
ケイ酸ナトリウムとは、ケイ酸のナトリウム塩の総称です。
Na4SiO4、Na2Si2O5、Na2Si4O9など様々な組成のものがありますが、一般的にはメタケイ酸ナトリウムと呼ばれるNa2SiO3を指してケイ酸ナトリウムと呼ぶ場合が多いです。
ケイ酸ナトリウムは常温で無色の結晶固体で、水に可溶です。濃水溶液は刺激性の水溶液で、水ガラスと呼ばれています。水ガラスに塩酸を加えるとケイ酸が得られます。ケイ酸とナトリウムの比率によって粘性が異なります。
ケイ酸ナトリウムの使用用途
ケイ酸ナトリウムは接着剤や陶芸など様々な場面で使用されています。ケイ酸ナトリウムは安全性が高く環境への負担も少ないことから、トイレットペーパーの芯や段ボールなどの様々な紙製品の製造過程で接着剤として使用されています。
陶芸においてはカップに取り付ける前のカップハンドルなどをケイ酸ナトリウムでコーティングすることで発泡による破損を防ぐことができます。
ケイ酸ナトリウムは、金属の防錆剤としても利用されます。金属とケイ酸ナトリウムが反応し、金属の表面にケイ酸および金属酸化物の層を生じ、それ以上の侵食を防止します。
その他には、石鹸や洗剤の添加剤、建材、鋳物などに用いられます。また、ケイ酸ナトリウムの誘導体としては、シリカゲル、ゼオライト、無水ケイ酸などが挙げられます。
ケイ酸ナトリウムの性質
ケイ酸ナトリウムの水溶液は弱いアルカリ性を示します。pH10.2以上で溶液は安定となります。酸を添加するとpHが低下し、シロキサン結合生成が進んで粘度が上昇します。
ケイ酸ナトリウムの水溶液は重金属などと反応して、沈殿を生じます。この性質を利用して、汚水処理や水処理などに広く利用されています。ケイ酸ナトリウムにアルコールやフェノール、アルデヒドなどを添加すると、脱水してケイ酸ゲルを遊離します。
ケイ酸ナトリウムの種類
ケイ酸ナトリウムはナトリウムのケイ酸塩であり、一般的にはNa2O、nSiO2、mH2Oで表されます。3成分の比率に応じて、ガラス質・結晶質・水溶液の形で物理的、化学的性質が異なる種々のケイ酸ナトリウムが存在します。工業的には、SiO2/Na2Oが0.5〜4の範囲で製造されています。
結晶性のケイ酸ナトリウムは、オルソケイ酸ナトリウム (2Na2O・SiO2・xH2O) 、セスキケイ酸ナトリウム (3Na2O・2SiO2・xH2O) 、メタケイ酸ナトリウム (Na2O・SiO2・xH2O) などがあります。水溶液 (水ガラス) も1号、2号など、Na2OとSiO2の比率を変えた商品が販売されています。
ケイ酸ナトリウムの構造
ケイ酸ナトリウムの構造はその種類によって異なりますが、一般的にはケイ酸四面体が共有酸素原子を介して結合し、ケイ素と酸素原子の三次元ネットワークを形成しています。ナトリウム陽イオンがネットワークに組み込まれ、ケイ酸塩四面体の間の空間を満たし、酸素原子の負電荷のバランスをとります。
水溶液中ではオルトケイ酸イオンではなく、鎖状のメタケイ酸イオンとして存在します。ナトリウムイオン濃度が低下すると、ケイ酸イオンに分岐や架橋が生じて網目構造が生じます。
ケイ酸ナトリウムのその他情報
1. ケイ酸ナトリウムの製造方法
ケイ酸ナトリウム (水ガラス) の製造方法は、乾式法と湿式法があります。
乾式法では、まず珪砂と水酸化ナトリウムもしくは炭酸ナトリウムを混合し、熔解します。得られたカレットと水をオートクレーブ中で溶解し、フィルタープレスにて濾過し、モル比を調整することでケイ酸ナトリウムが得られます。
湿式法では、水酸化ナトリウムと珪砂をオートクレーブにて、加圧蒸気を吹き込み反応させます。その後、濾過、濃縮をして、ケイ酸ナトリウムが得られます。
2. ケイ酸ナトリウムの歴史
ケイ酸ナトリウムが科学的に認知され、本格的に研究され始めたのは1820年代頃です。ドイツ人のvon Fucksが接着剤やセメントなどに用いることを提案しました。1920年以降はアメリカやヨーロッパで工業生産が始まり、用途展開していきました。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mukimate1953/1991/231/1991_231_131/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/66/1/66_26/_pdf/-char/ja