ケイ酸カリウムとは
ケイ酸カリウムとは、K2SiO3という化学式で表されるカリウムのケイ酸塩です。
常温で白色の固体か、高い粘性を持つ水あめ状の液体である水ガラスに近い形態の物質です。水酸化カリウムとケイ酸を湿式または乾式で反応させることにより合成されます。
水和水を含んだ状態で存在することが多く、K2O、SiO2、H2Oなどの様々な組成のものが知られていますが、これらの多くは200℃以上で得られ、常温ではその存在を確認されていません。
ケイ酸カリウムの使用用途
ケイ酸カリウムは様々な用途で使用されますが、植物用の肥料として使用されることが多いです。カリウムはカルシウムやマグネシウムと並んで植物の成長に必要な物質であるため、これらの鉱物をケイ酸の化合物を配合したものがケイ酸肥料として販売されています。
工業的にはK2Oに対するSiO2の比率 (モル比) が2~3であるものが多く製造されており、溶接棒の被覆材や塗料の硬化剤、洗剤の原料など用途に合わせた組成のものが使用されています。
ケイ酸カリウムの性質
ケイ酸カリウムは水溶液で取り扱われることが多いです。ケイ酸ナトリウムと特徴が似ていて、粘稠性液体で無色無臭で強アルカリ性を示します。皮膚や眼に触れると炎症を引き起こします。水には自由に混合し、エタノールには不溶です。通常条件では安定ですが、酸と接触すると反応し、シリカゲルを生成します。
ケイ酸ナトリウムは、メタケイ酸ナトリウム9水塩、メタケイ酸ナトリウム5水塩、セスキケイ酸ナトリウム5水塩などの含水結晶がよく知られています。一方、ケイ酸カリウムの含水結晶の存在条件は、非常に限定されています。
ケイ酸カリウムの構造
ケイ酸四面体が共有酸素原子を介して結合し、ケイ素と酸素原子の三次元ネットワークを形成しています。カリウム陽イオンがネットワークに組み込まれ、ケイ酸塩四面体の間の空間を満たし、酸素原子の負電荷のバランスをとります。
水溶液中ではオルトケイ酸イオンではなく、鎖状のメタケイ酸イオンとして存在します。カリウムイオン濃度が低下すると、ケイ酸イオンに分岐や架橋が生じて網目構造が生じます。
ケイ酸カリウムのその他情報
1. ケイ酸カリウムの肥料としての利用
ケイ酸カリウムは、植物の成長と発達に不可欠な栄養素であるカリウムとケイ素の両方を植物に提供するため、肥料としてよく使用されます。フライアッシュや水酸化マグネシウムなどと混合し、焼成して肥料として製造されます。
カリウムは植物にとって必須の栄養素の1つであり、光合成、水分調節、タンパク質合成などのさまざまな生理学的プロセスに必要です。
シリコンは植物にとって必須の栄養素とは見なされていませんが、害虫や病気に対する抵抗力の向上、干ばつや熱などの非生物的ストレスに対する耐性の向上など、植物の成長と健康に多くの有益な効果があることが示されています。
2. ケイ酸カリウム肥料の環境安全性
ケイ酸カリウム肥料は環境的に安全であると考えられています。ケイ酸カリウム肥料そのものはpH10程度ですが、生理的中性肥料のため、土壌pHの変化は小さいです。また、雨水などによって流れ出すことがないため、土壌に栄養素を保持し、植物にゆっくりと放出できます。
3. ケイ酸カリウムの表面改質材としての利用
ケイ酸カリウムを用いたコンクリート表面改質材を用いると、施工後にクラックが発生した場合でも、水によりコンクリート内部の水酸化カルシウムと改質剤が反応してセメント水和物と似た組成のゲルを生成します。
防水・劣化防止保護層を形成し、クラックを自己補修することができます。防水・劣化防止効果を長期間発揮できるため、高耐久なコンクリート構造物とライフサイクルコストの低減が実現できます。ケイ酸ナトリウムと混合して使用されることが多いです。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/66/1/66_26/_pdf/-char/ja