硝酸マグネシウムとは
硝酸マグネシウムとは、化学式Mg(NO3)2のマグネシウム硝酸塩です。
通常、硝酸マグネシウム6水和物として市販されています。硝酸マグネシウム6水和物は、潮解性のある無色または白色の結晶です。
製造方法は、硝酸と酸化マグネシウムを反応させる中和法があります。この中和反応で得られた水溶液を冷却して硝酸マグネシウム6水和物として析出させます。
硝酸マグネシウム6水和物の融点は88.9℃です。そのため、88.9℃以上に加熱すると、塩基性硝酸マグネシウムに変化するので、88.9℃以下で保存・使用します。
硝酸マグネシウムの使用用途
1. 肥料
硝酸マグネシウムは、植物の肥料として用いられています。マグネシウムは、植物が光合成に必要な葉緑素を作るのに重要な構成成分です。そのため、マグネシウムが不足すると、葉緑素が減少し、葉が黄色になるマグネシウム欠乏症が起こります。マグネシウム欠乏を防ぐために硝酸マグネシウムを元肥、追肥として使用します。
水に溶けやすいため、土壌の水分によく溶けそのまま植物に吸収されやすく、即効性があります。その反面、雨が多いと水に溶けて流れてしまうのがデメリットです。
2. 火薬の原料
硝酸マグネシウムは、火薬の原料としても重要な役割を果たします。硝酸マグネシウムは、硝石 (硝酸カリウム) と同様に酸化剤の働きをします。これは、硝酸マグネシウム自体が燃焼時に酸素を放出し、他の燃料を燃やす際に必要な酸素を供給するためです。この性質が、火薬の爆発力や燃焼速度を高めるのに役立ちます。
3. 花火の製造
硝酸マグネシウムは、花火の製造にも広く使用されています。特に、マグネシウムの炎色反応によって発生する白色光は、花火の見栄えを良くするために重要な役割を果たしています。マグネシウムを燃焼させると、高温の火花が飛び散り、空中で酸化されることで非常に明るい白色の光を放出します。
4. その他
その他の使用用途として、濃硝酸の脱水剤、マグネシウム化学物質の原料が挙げられます。
硝酸マグネシウムの性質
硝酸マグネシウム6水和物は、白色の結晶性固体です。水に溶けやすく (0℃: 233g/100g) 、水溶液はアルカリ性です。エタノールやメタノールなどの有機溶媒にも溶けます。希硝酸には水素と二酸化窒素を発生して溶けますが、アルカリ水溶液には溶けません。
水との親和性が高いため、六水和物を加熱しても脱水しないです。代わりに、酸化マグネシウム、酸素、窒素酸化物に分解します。
4Mg(NO3)2・6H2O + 熱 → 4MgO + 2NO2 + 2N2O + O2 + 6H2O
硝酸マグネシウムのその他情報
1. 硝酸マグネシウムの製造方法
工業的に使用される硝酸マグネシウムは、さまざまな方法で合成されています。硝酸と金属マグネシウムとの反応は一方向であり、MgO との反応は別方向です。水酸化マグネシウムと硝酸アンモニウムも生成物を形成しますが、副生成物としてアンモニアが放出されます。
- 2HNO3 + Mg → Mg(NO3)2 +H2
- 2HNO3 + MgO → Mg(NO3)2 +H2O
- Mg(OH)2 + 2NH4NO3 → Mg(NO3)2 + 2NH3 + 2H2O
2. 硝酸マグネシウムの安全性情報
硝酸マグネシウムは強力な酸化剤のため、可燃性物質や還元性物質との反応によって火災の発生や爆発の危険性があります。硝酸マグネシウムとメチルエステルやエチルエステルの混合物は、硝酸メチルや硫酸エチルの形成により爆発する可能性が高いです。
硝酸マグネシウムを扱う場合は、マスクとコーグル、手袋を必ず着用してください。潮解性があるので、密閉容器に入れたうえで保存します。酸化剤、有機物質と接触すると火災の危険性があるので、可燃物との接触は避けることが大切です。
皮膚についてしまった場合は、流水と石鹸で洗い流します。目に入ってしまった場合は、数分間流水で洗い流してください。吸引してしまった場合や飲み込んでしまった場合は、直ちに医師に連絡する必要があります。