硫酸銅とは
硫酸銅とは、1価の銅からなる硫酸銅 (I) と2価の銅からなる硫酸銅 (II) が存在する銅の硫酸塩です。
硫酸銅 (I) の化学式はCu2SO4、硫酸銅(II) はCuSO4で表されます。単に硫酸銅と言うときは、硫酸銅 (II) を指すことが多いです。硫酸銅 (I) は無色か灰色の粉末で、水と容易に反応して分解します。
硫酸銅 (II) には、無水和物と五水和物が存在します。無水和物は白色の結晶で、水を吸収して五水和物になりやすいです。五水和物は青色の結晶で、胆礬 (たんぱん) として天然にも存在します。工業的には、黄銅鉱に空気を通じて熱して、生成した硫酸銅を水で抽出するなどの方法で得られます。
硫酸銅の使用用途
硫酸銅には殺菌作用があるため、農薬であるボルドー液に使用されています。ボルドー液とは、硫酸銅と消石灰 (水酸化カルシウム) を混ぜて作られ、主に果樹や野菜の栽培に利用されるものです。硫酸銅水溶液に含まれるCu2+が殺菌力を持ち、消石灰が葉への付着力を高める効果があります。
また、硫酸銅は乳児用のミルクにも使用されます。銅は乳児にとって欠かすことのできない成分です。特に人工乳に依存している乳児の場合は、ミルクから銅を摂取する必要があるため、国の定めた基準値以内の硫酸銅の使用が認められています。
そのほか、銅メッキや触媒、顔料なども用途の1つです。
硫酸銅の性質
無水物は白色の粉末で、水に溶けやすく、吸湿性があります。水分を吸収すると青色の五水和物になるので、水分の検出に利用されます。650℃で酸化銅 (Ⅱ) とSO3に分解します。
五水和物は青色の結晶で、水によく溶け、水100gに対する溶解度は0℃で19.2g 、20℃で26.3gです。
硫酸銅の構造
硫酸銅五水和物 (CuSO4・5H2O) の結晶には5つの水和水が存在し、そのうち4つはCu2+に対して比較的強く配位しています (これを配位水といいます) 。さらに、少し離れた位置に SO42- があり、Cu2+ に弱く配位結合しています。そして、残りの1つの水和水分子は[Cu(H2O)4]2+ と SO42- とのすきまにあり、水素結合で SO42- と配位水につながっているのが陰イオン水です。
CuSO4・5H2O を加熱すると、結合力の最も弱いインイオン水と配位水1分子が失われて、CuSO4・3H2O となります。このとき、配位水1分子が抜けた場所には SO42- が配位し、結晶の密度が増加します。
さらに加熱を続けると、2つの配位水分子が失われ、CuSO4・H2O となります。このとき、失われた配位水の位置にもSO42- が配位し、結晶の密度が増加します。CuSO4・H2O は、CuSO4・5H2O の構造と比較してH2O と SO42- の配置が入れ替わった構造を持ち、その H2O は Cu2+ と Cu2+ の間をつなぐ役割を果たす架橋配位水となり、加熱により最も離脱しにくいです。
硫酸銅のその他情報
1. 硫酸銅の製造方法
酸化銅 (Ⅱ) や炭酸銅 (Ⅱ) を硫酸に溶かした水溶液を蒸発濃縮させると、五水和物が得られます。工業的には希硫酸に銅の屑を入れ、空気を吹き込みながら加熱して大量に生産されます。
硫酸銅の無水物は、五水和物の加熱脱水で得られます。加熱しすぎると反応がさらに進み酸化銅、二酸化硫黄、酸素に分解してしまうので火加減に十分注意が必要です。
- 脱水
CuSO4・5H2O → CuSO4・3H2O → CuSO4・H2O → CuSO4 - 分解
CuSO4 → CuSO4 + SO4 , O2
2. 硫酸銅の安全性情報
硫酸銅は極めて有毒であり、吸入や摂取によって強い急性毒性が現れます。ラットの場合、経口摂取による半数致死量 (LD50) は300mg/㎏です。
人間では、まず胃腸炎が発生し、吐き気、嘔吐、吐血などの症状が現れます。さらに、硫酸銅の中毒は溶血性貧血、黄疸、そして腎臓や肝臓の損傷を伴うことが多いです。