ヘキサン

ヘキサンとは

ヘキサン (英: hexane) とは、ガソリンのような匂いのある無色透明の液体です。

示性式CH3(CH2)4CH3で表される鎖状構造の化学物質で、分子量は86.18です。CAS登録番号は110-54-3で、脂肪族炭化水素の代表的化合物です。

n-ヘキサンの他にも、イソヘキサン等、5種の構造異性体が存在します。異性体と区別するため、特にノルマルヘキサンと呼ばれることもあり、また、異性体を含めた炭素6個のアルカン群の呼称としてHexanes (複数形) という言葉を使うこともあります。

ヘキサンの性質

1. 物理的特性

ヘキサンの融点は-95℃、沸点は69℃、比重は0.65g/mLです。エタノール及びジエチルエーテル等の有機化合物に対して極めて溶けやすいため、重要な溶剤として広く利用されていますが、水にほとんど溶けません。600〜700℃まで加熱すると熱分解を起こし、水素やメタンエチレンなどを生じます。引火性が高く有害性もあるため、取り扱いには注意が必要です。

2. 人体への影響 

n-ヘキサンは、体内で酵素シトクロムP450によって触媒され、2-ヘキサノール、2,5-ヘキサンジオールに生体内変換されます。2,5-ヘキサンジオールは、神経毒性のある2,5-ヘキサンジオンに酸化される可能性があり、歩行困難などの多発性神経症を引き起こします。このため、溶媒としてのn-ヘキサンの置換が議論されており、n-ヘプタンは代替手段の1つです。

ヘキサンの使用用途

1. 溶剤

ヘキサンは有機物をよく溶かすため、溶剤として広く利用されています。ポリオレフィン重合や医薬品、農薬、精密化学品等の製造、塗料・インク・接着剤用の溶剤等として用いられています。また、高速液体クロマトグラフィーをはじめとする分析用の溶剤としてもよく用いられています。

2. 洗浄剤

ベンジンの主成分でもあるため、工場や実験室等で機械や器具等の油脂汚れを落とす洗浄剤として使用されることが多いです。イソヘキサンはクリーナーとして市販されていますが、プラスチックやゴムを侵す場合があるため注意が必要です。

3. 食品添加物

ヘキサンは食品衛生法に適合しているため、食用油脂の抽出等でも使われています。大豆の脱脂加工法の一つである溶媒抽出法は、大豆を破砕した後にヘキサンを溶剤として使い油脂 (大豆油) を抽出するものです。ヘキサンには毒性があるものの、沸点が低く加工過程で完全除去される加工助剤なので、添加物として表示されることはありません。

ヘキサンのその他情報

1. ヘキサンの製造法

ヘキサンは、主に原油を精製することによって得られます。画分の正確な組成は、原油など石油の供給源および精製の制約に大きく依存します。工業製品 (通常、直鎖異性体の約50重量%) は、65〜70°Cで沸騰する画分です。

2. 法規情報

毒物および劇物取締法において非該当ですが、消防法では「第4類引火性液体、第一石油類非水溶性液体」に該当します。労働安全衛生法では、「名称等を表示・通知すべき危険有害物」、「リスクアセスメントを実施すべき危険有害物」、「危険物・引火性の物」などに指定があり、注意が必要です。化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律 (化審法) で「第2種監視化学物質」に指定されています。

3. 取扱いおよび保管上の注意

取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 容器を密閉し、涼しく乾燥し換気の良い場所に保管する。
  • 極めて燃えやすいため、熱・火花・火炎など着火源から遠ざける。
  • 火災及び爆発の危険があるため、酸化剤との接触を避ける。
  • 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
  • ミストや蒸気、スプレーを吸入しない。
  • 使用時は保護手袋、保護眼鏡を着用する。
  • 使用後は適切に手袋を脱ぎ、本製品の皮膚への付着を避ける。
  • 取扱い後はよく手を洗浄する。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/110-54-3.html

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